この記事では「顎で使う」について解説する。

端的に言えば「顎で使う」の意味は「偉そうな態度で指図する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「顎で使う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。大学生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で、慣用句を分かりやすく解説していく。

「顎で使う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顎で使う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「顎で使う」の意味は?

「顎で使う」には、次のような意味があります。

口で言うかわりに顎をしゃくって指図する。高慢な態度で人を使う。頤使(いし)する。

出典:三省堂大辞林第三版「顎で使う」

人間は、自分が優位な立場にいると分かるとついつい相手を見下してしまう生き物ですよね。皆さんも人生の中で一度は、見下す側と見下される側の両方を味わったことがあるのではないでしょうか。

そのように相手に対して偉そうな態度をとっている時、相手を見下すことはあっても自分が俯いたりはしないですよね。俯いていない、見下しているという時の顔の角度は顎を上げた状態になっていることが想像できるのではないでしょうか。

このように、その人の顔の角度だけで相手に対してどのような態度をとっているのかということが想像できてしまう場合があります。今回の慣用句「顎で使う」は、そのような例をつかって人の高慢な態度を表現した言葉です。

「しゃくる」というのは、軽く突き出したり上げている時の表現なので、「口で言うかわりに顎を上げて指図する」ということになりますね。

「顎を使う」の語源は?

次に「顎で使う」の語源を確認しておきましょう。

先ほど、少し顔の角度のお話をしましたね。「顎で使う」の語源は、実は身分社会の頃の日本の慣習によって身についた顔の角度にあります。では、その身分社会における慣習とはどのようなものだったのでしょうか?

身分社会における殿様や大名などの身分の高い人たちは、自分の顔を見せないという慣習がありました。顔が特定されれば襲われてしまう、危険と隣り合わせの時代だったからです。よって家臣などの目下のものは目上の方の顔を見ないように深々と土下座をして指図を待っていたので、目上の方の顔は顎しか見ることが出来ないということが常識でした。

このように顎しか見ることの出来ない状況では、顎の動く向きによって目上の方の指図を察しなければなりませんよね。

目下の人が土下座をして目上の方が顎で示す指図を下から見極める。この構図によって当時の目下の人たちは、常に目上の人たちのイメージと言えば遥か上にある顎の角度だけだったのです。

身分制度が廃止された現代においては顔の角度に対するイメージだけが残り、「顎で使う」という言葉は、殿様のような態度で顎の向きや角度だけで指図する人を表現するものになりました。

\次のページで「「顎で使う」の使い方・例文」を解説!/

「顎で使う」の使い方・例文

「顎で使う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.プライドの高い上司は、部下を顎で使うことでストレスを発散しているのだろう。
2.負けず嫌いで生意気だった後輩が出世して、先輩を顎で使うようになってしまった。
3.自分は人望があって仕事も出来るので、顎で使われている今の職場を退職して独立することを決めた。

このように身分制度が廃止された現代でも会社の上司や先輩など、社会的立場が上の人が自分よりも立場が下の人に対して、謙虚さに欠ける態度を示したときに主に用いられていることが分かりますね。

また出世をした人が自身を尊大だと過信して、追い越した人に対して強気な態度をとっている時なども「顎で使っている」などと言われてしまいます。

このように「顎で使う」という表現は、あまり良い意味で用いられることはありません。高慢な態度をとられた受け手側や第三者から、軽蔑を含んだ意味合いで使われる言葉です。

「顎で使う」の類義語は?違いは?

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「顎で使う」とは、上の立場の人が下の立場の人に対して高慢な態度で指図するような態度を表現しているということが分かりましたね。

では、人のこのような態度を表現するとき他にどのような言葉が用いられるのでしょうか。

ここでは「顎で使う」の類義語とその違いを紹介していきます。

「我が物顔」

「我が物顔」とは、文字通り人のものを我が物のように扱うことを言います。そのように人の物や領域をまるで自分の物のように扱う高慢さから、「我が物顔でふるまう」とは人に命令して自分の物のように扱う「顎で使う」と類義語であるといえることが分かりますね。

しかし「我が物顔」は人の物などの物質に対しても用いることが出来ますが、「顎で使う」の場合「物を顎で使う」とは言いません。物には意思がないので何かを命令することは出来ないですからね。

よって人の物を自分の物のように扱っているなどの物に対する態度を表現する場合には「我が物顔」、人に対して高慢に命令するなどの態度を表現する場合には「顎で使う」を用いるというように使い分けることが好ましいと思います。

\次のページで「「顎で使う」の対義語は?」を解説!/

「顎で使う」の対義語は?

これまで説明してきたように、「顎で使う」とは「高慢な態度で人に指図する」という意味でした。では、その反対の意味となる「人に対して謙虚にふるまう態度」を表現する言葉はどのようなものなのでしょうか?

ここでは、「顎で使う」の対義語を紹介します。

「頭が低い」「腰が低い」

「顎で使う」の語源を説明する際に、目下の者は目上の者に対して土下座をして顔を見ないようにしていたということ紹介しましたね。

「頭が低い」「腰が低い」というのはいずれも「他人に対して謙虚である」という意味があります。土下座は腰も頭も最大限に低くなる姿勢ですよね。よってこの言葉も昔の慣習から、目下の者の目上の者に対する態度を土下座という姿勢に投影していることが分かります。

現代では立場の低い人だけではなく、上の立場の人が下の立場の人に対して謙虚な態度を示すということに対して特に、「頭が低い」「腰が低い」と好意的に表現する場合が多いです。

「顎で使う」を使いこなそう

この記事では「顎で使う」の意味・使い方・類語などを説明しました。「顎で使う」という慣用句の表現をイメージするには、語源を知ることが大切であるということが分かりましたね。

「腰が低い」や「顎を突き出す」という行動を見たり聞いたりするだけでその人の態度を想像できることが当たり前の現代ですが、私たちがそのように連想する背景には昔の慣習があるということを知ると言葉の奥深さを感じることが出来るのではないでしょうか。

言葉の意味を知ったからには、人を顎で使うことなく誰に対しても腰の低い態度を心がけてみましょう。

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【慣用句】「顎で使う」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「顎で使う」について解説する。

端的に言えば「顎で使う」の意味は「偉そうな態度で指図する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「顎で使う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。大学生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で、慣用句を分かりやすく解説していく。

「顎で使う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顎で使う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「顎で使う」の意味は?

「顎で使う」には、次のような意味があります。

口で言うかわりに顎をしゃくって指図する。高慢な態度で人を使う。頤使(いし)する。

出典:三省堂大辞林第三版「顎で使う」

人間は、自分が優位な立場にいると分かるとついつい相手を見下してしまう生き物ですよね。皆さんも人生の中で一度は、見下す側と見下される側の両方を味わったことがあるのではないでしょうか。

そのように相手に対して偉そうな態度をとっている時、相手を見下すことはあっても自分が俯いたりはしないですよね。俯いていない、見下しているという時の顔の角度は顎を上げた状態になっていることが想像できるのではないでしょうか。

このように、その人の顔の角度だけで相手に対してどのような態度をとっているのかということが想像できてしまう場合があります。今回の慣用句「顎で使う」は、そのような例をつかって人の高慢な態度を表現した言葉です。

「しゃくる」というのは、軽く突き出したり上げている時の表現なので、「口で言うかわりに顎を上げて指図する」ということになりますね。

「顎を使う」の語源は?

次に「顎で使う」の語源を確認しておきましょう。

先ほど、少し顔の角度のお話をしましたね。「顎で使う」の語源は、実は身分社会の頃の日本の慣習によって身についた顔の角度にあります。では、その身分社会における慣習とはどのようなものだったのでしょうか?

身分社会における殿様や大名などの身分の高い人たちは、自分の顔を見せないという慣習がありました。顔が特定されれば襲われてしまう、危険と隣り合わせの時代だったからです。よって家臣などの目下のものは目上の方の顔を見ないように深々と土下座をして指図を待っていたので、目上の方の顔は顎しか見ることが出来ないということが常識でした。

このように顎しか見ることの出来ない状況では、顎の動く向きによって目上の方の指図を察しなければなりませんよね。

目下の人が土下座をして目上の方が顎で示す指図を下から見極める。この構図によって当時の目下の人たちは、常に目上の人たちのイメージと言えば遥か上にある顎の角度だけだったのです。

身分制度が廃止された現代においては顔の角度に対するイメージだけが残り、「顎で使う」という言葉は、殿様のような態度で顎の向きや角度だけで指図する人を表現するものになりました。

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