今回は「金属の酸化」について解説していきます。

金属の酸化反応の例として、さびによる腐食、酸化被膜生成、電池の反応などが挙げられる。これらは、一見まったく関連のない反応のように思われるが、本質的には同じような反応です。この記事では、酸化反応の定義を復習した上で、金属の酸化反応を詳しく考察いきます。ぜひこの機会に、金属の酸化について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

酸化反応の定義

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金属の酸化反応について詳しく学ぶ前に、酸化反応の定義について確認しておきましょう。生じた化学反応が酸化反応であるかどうかを判断するためには、どの原子や粒子が物質間移動したかを考える必要があります。この点に注目して、以下の記事を読み進めてみてください。

酸化反応の定義を理解することができれば、金属の酸化反応についての学習もスムーズに進めることができます。ちなみに、酸化反応は金属元素について学ぶ場合だけでなく、有機化学などについての理解を深める際にも重要な概念になってきますよ。この機会に、学んでおいて損をすることは決してありません。

酸素を結合する反応

酸素を結合する反応

image by Study-Z編集部

名前の通り、酸化反応には、原子や分子に酸素原子が結合して酸化物が生成される反応が含まれます。このような反応は、大気中から酸素分子が供給されることで、進行しますよ。ものが燃える燃焼反応も、この反応に分類されるのです。

例えば、アルコールランプの燃料として使われるメタノールの燃焼は、2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという化学反応式で表現できます。この反応では、メタノール(CH3OH)と酸素(O2)が反応し、炭素の酸化物である(CO2)が生じていますよね。これは、原子や分子に酸素原子が結合して酸化物が生成されるという条件を満たしています。

ここで、紹介したのは酸素原子の物質間移動に注目した酸化反応の定義です。ですが、酸素原子以外の原子や粒子に注目して、酸化反応を定義することもできます。ここから先は、酸素以外の原子や粒子に注目した酸化反応の定義方法について学んでいきますよ。

水素を放出する反応

水素を放出する反応

image by Study-Z編集部

ここでは、水素原子の移動に注目して、酸化反応を定義する方法を考えましょう。例として、H2S+I2→S+2HIという反応を考えます。硫化水素(H2S)とヨウ素(I2)から、硫黄(S)とヨウ化水素(HI)が生じるという反応ですね。この反応では、硫化水素(H2S)が水素原子(H)を2つ放出し、硫黄(S)に変化しています。実は、この反応が酸化反応なのです。分子が水素を放出する反応も、酸化反応として定義することができるのですね

ですが、多くの方がこの説明だけでは納得できないかと思われます。H2S+I2→S+2HIという反応には、酸素は全く関与していません。先ほど説明した酸素の移動に注目する定義からのつながりを見いだすことができませんよね。このような疑問は、次の節で種明かしされます。

電子を放出する反応

電子を放出する反応

image by Study-Z編集部

ここまで説明してきた酸化反応の定義は「酸素を結合する反応」と「水素を放出する反応」の2種類です。これらは全く関係がないように思われますが、実は共通点があります。それは、反応の際に、電子を放出するということです。この表現だけでは理解しづらいと思うので、先ほど例に挙げた2つの反応を用いて解説します。

2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという反応では、メタノール(CH3OH)に含まれる炭素原子(C)のまわりに存在する電子の数よりも、二酸化炭素(CO2)に含まれる炭素原子(C)のまわりに存在する電子の数のほうが少ないことが知られていますよ。また、H2S+I2→S+2HIという反応では、硫化水素(H2S)に含まれる硫黄(S)のまわりに存在する電子の数よりも、単体の硫黄(S)に含まれる電子の数のほうが少ないことが知られています。どちらの反応にも、電子を放出する原子が存在するのですね

このように、電子という粒子の移動に注目することで、酸化反応の定義は拡張されます。また、酸化反応を「電子を放出する反応」と捉えることで、「酸素を結合する反応」と「水素を放出する反応」を実質的に同じ反応だと考えることもできるようになるのです。もちろん、酸素と水素のどちらも関与しない反応であっても、電子を放出する反応という酸化反応の定義を適応することができますよ

\次のページで「金属の酸化反応」を解説!/

金属の酸化反応

酸化反応についての理解が深まったので、金属の酸化反応について詳しく学んでいきましょう。今回は、数多くある金属の酸化反応の中から、さびが生じる反応酸化被膜の生成反応電池の反応の3つをピックアップしてご紹介します。

先ほど、酸化反応について考えるとき、酸素・水素・電子などの原子および粒子の移動に注目することが重要だと述べました。以下の説明でも、これらの原子や粒子の動きに注目して、記事を読み進めてみてくださいね。

さびが生じる反応

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さびが生じる反応は、代表的な金属の酸化反応です大気中に存在する酸素や水蒸気、金属の表面に付着した水分などと金属原子が化学反応を起こし、ゆっくりとさびが生じますよ。さびが生じることを、腐食と表現することもあります。

例えば、鉄がさびると酸化鉄・水酸化鉄・塩化鉄などになりますよ。鉄がさびると、茶褐色に変化しますよね。この茶褐色の物質が酸化鉄・水酸化鉄・塩化鉄などに該当します。いずれも、反応の過程で、鉄原子が電子を放出する酸化反応です

金属がさびると、材料としての強度は低下します。これは、金属を使用した建造物などの寿命を縮めることになりますよね。そのため、多くの金属材料には防腐処理がなされています

酸化被膜の生成反応

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続いて、酸化被膜の生成反応について紹介していきます。この現象は、アルミニウムなどでみられるものです。アルミニウムは空気に触れると、非常に短い時間で表面にうすい酸化アルミニウムの膜を形成します。これが、酸化被膜の生成反応です。

酸化アルミニウムは非常に安定した物質で、これが存在することで、内部に存在するアルミニウムは守られた状態になります。そのため、アルミニウムは腐食が生じにくいとされていますよ。例えば、日光や結露の影響で高温多湿の条件に置かれる窓ガラスのサッシには、アルミニウムが利用されています

アルミニウムの酸化被膜は自然発生するので、特殊加工などを行う必要もないのです。このような理由から、アルミニウムは安価で腐食対策が不要な材料として、重宝されているのですね

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電池の反応

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最後に、電池の反応について解説しますね。電池には2つの極が存在しますプラス極(カソード)マイナス極(アノード)です。電池に回路を接続すると、プラス極からマイナス極へと電流が流れます。電流の正体は電子であり、電子はマイナス極からプラス極に向かうことが知られていますよね。

つまり、電池に回路が接続されているとき、マイナス極からは絶えず電子が放出されているのです電子が放出されていることから、電池のマイナス極では、酸化反応が次々と生じていることがわかります。多くの電池の電極は金属製ですから、電池の内部でも、金属の酸化反応が生じていると言えますよね。

金属の酸化について理解を深めよう!

この記事では、酸化反応の定義を復習した後、具体例を通して、金属の酸化反応について詳しく学びました。酸化反応と聞くと、酸素が結びつく反応を真っ先に思い浮かべますが、実はそれだけではありませんよね。

また、金属の酸化反応といえば、さびを連想する方が多いかもしれません。ですが、さびが生じる反応以外にも、金属の酸化反応はあります。今回は、このような固定概念を取り去らうような例をいくつか紹介しました。ぜひこの機会に、金属の酸化反応について詳しく学んでみてください。

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化学無機物質物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単金属の酸化!反応の仕組みを理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「金属の酸化」について解説していきます。

金属の酸化反応の例として、さびによる腐食、酸化被膜生成、電池の反応などが挙げられる。これらは、一見まったく関連のない反応のように思われるが、本質的には同じような反応です。この記事では、酸化反応の定義を復習した上で、金属の酸化反応を詳しく考察いきます。ぜひこの機会に、金属の酸化について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

酸化反応の定義

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金属の酸化反応について詳しく学ぶ前に、酸化反応の定義について確認しておきましょう。生じた化学反応が酸化反応であるかどうかを判断するためには、どの原子や粒子が物質間移動したかを考える必要があります。この点に注目して、以下の記事を読み進めてみてください。

酸化反応の定義を理解することができれば、金属の酸化反応についての学習もスムーズに進めることができます。ちなみに、酸化反応は金属元素について学ぶ場合だけでなく、有機化学などについての理解を深める際にも重要な概念になってきますよ。この機会に、学んでおいて損をすることは決してありません。

酸素を結合する反応

酸素を結合する反応

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名前の通り、酸化反応には、原子や分子に酸素原子が結合して酸化物が生成される反応が含まれます。このような反応は、大気中から酸素分子が供給されることで、進行しますよ。ものが燃える燃焼反応も、この反応に分類されるのです。

例えば、アルコールランプの燃料として使われるメタノールの燃焼は、2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという化学反応式で表現できます。この反応では、メタノール(CH3OH)と酸素(O2)が反応し、炭素の酸化物である(CO2)が生じていますよね。これは、原子や分子に酸素原子が結合して酸化物が生成されるという条件を満たしています。

ここで、紹介したのは酸素原子の物質間移動に注目した酸化反応の定義です。ですが、酸素原子以外の原子や粒子に注目して、酸化反応を定義することもできます。ここから先は、酸素以外の原子や粒子に注目した酸化反応の定義方法について学んでいきますよ。

水素を放出する反応

水素を放出する反応

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ここでは、水素原子の移動に注目して、酸化反応を定義する方法を考えましょう。例として、H2S+I2→S+2HIという反応を考えます。硫化水素(H2S)とヨウ素(I2)から、硫黄(S)とヨウ化水素(HI)が生じるという反応ですね。この反応では、硫化水素(H2S)が水素原子(H)を2つ放出し、硫黄(S)に変化しています。実は、この反応が酸化反応なのです。分子が水素を放出する反応も、酸化反応として定義することができるのですね

ですが、多くの方がこの説明だけでは納得できないかと思われます。H2S+I2→S+2HIという反応には、酸素は全く関与していません。先ほど説明した酸素の移動に注目する定義からのつながりを見いだすことができませんよね。このような疑問は、次の節で種明かしされます。

電子を放出する反応

電子を放出する反応

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ここまで説明してきた酸化反応の定義は「酸素を結合する反応」と「水素を放出する反応」の2種類です。これらは全く関係がないように思われますが、実は共通点があります。それは、反応の際に、電子を放出するということです。この表現だけでは理解しづらいと思うので、先ほど例に挙げた2つの反応を用いて解説します。

2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという反応では、メタノール(CH3OH)に含まれる炭素原子(C)のまわりに存在する電子の数よりも、二酸化炭素(CO2)に含まれる炭素原子(C)のまわりに存在する電子の数のほうが少ないことが知られていますよ。また、H2S+I2→S+2HIという反応では、硫化水素(H2S)に含まれる硫黄(S)のまわりに存在する電子の数よりも、単体の硫黄(S)に含まれる電子の数のほうが少ないことが知られています。どちらの反応にも、電子を放出する原子が存在するのですね

このように、電子という粒子の移動に注目することで、酸化反応の定義は拡張されます。また、酸化反応を「電子を放出する反応」と捉えることで、「酸素を結合する反応」と「水素を放出する反応」を実質的に同じ反応だと考えることもできるようになるのです。もちろん、酸素と水素のどちらも関与しない反応であっても、電子を放出する反応という酸化反応の定義を適応することができますよ

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