
3分で簡単金属の酸化!反応の仕組みを理系学生ライターがわかりやすく解説!
金属の酸化反応の例として、さびによる腐食、酸化被膜生成、電池の反応などが挙げられる。これらは、一見まったく関連のない反応のように思われるが、本質的には同じような反応です。この記事では、酸化反応の定義を復習した上で、金属の酸化反応を詳しく考察いきます。ぜひこの機会に、金属の酸化について理解を深めてくれ。
化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長
現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。
酸化反応の定義

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金属の酸化反応について詳しく学ぶ前に、酸化反応の定義について確認しておきましょう。生じた化学反応が酸化反応であるかどうかを判断するためには、どの原子や粒子が物質間移動したかを考える必要があります。この点に注目して、以下の記事を読み進めてみてください。
酸化反応の定義を理解することができれば、金属の酸化反応についての学習もスムーズに進めることができます。ちなみに、酸化反応は金属元素について学ぶ場合だけでなく、有機化学などについての理解を深める際にも重要な概念になってきますよ。この機会に、学んでおいて損をすることは決してありません。
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酸素を結合する反応

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名前の通り、酸化反応には、原子や分子に酸素原子が結合して酸化物が生成される反応が含まれます。このような反応は、大気中から酸素分子が供給されることで、進行しますよ。ものが燃える燃焼反応も、この反応に分類されるのです。
例えば、アルコールランプの燃料として使われるメタノールの燃焼は、2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという化学反応式で表現できます。この反応では、メタノール(CH3OH)と酸素(O2)が反応し、炭素の酸化物である(CO2)が生じていますよね。これは、原子や分子に酸素原子が結合して酸化物が生成されるという条件を満たしています。
ここで、紹介したのは酸素原子の物質間移動に注目した酸化反応の定義です。ですが、酸素原子以外の原子や粒子に注目して、酸化反応を定義することもできます。ここから先は、酸素以外の原子や粒子に注目した酸化反応の定義方法について学んでいきますよ。
水素を放出する反応

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ここでは、水素原子の移動に注目して、酸化反応を定義する方法を考えましょう。例として、H2S+I2→S+2HIという反応を考えます。硫化水素(H2S)とヨウ素(I2)から、硫黄(S)とヨウ化水素(HI)が生じるという反応ですね。この反応では、硫化水素(H2S)が水素原子(H)を2つ放出し、硫黄(S)に変化しています。実は、この反応が酸化反応なのです。分子が水素を放出する反応も、酸化反応として定義することができるのですね。
ですが、多くの方がこの説明だけでは納得できないかと思われます。H2S+I2→S+2HIという反応には、酸素は全く関与していません。先ほど説明した酸素の移動に注目する定義からのつながりを見いだすことができませんよね。このような疑問は、次の節で種明かしされます。
電子を放出する反応

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ここまで説明してきた酸化反応の定義は「酸素を結合する反応」と「水素を放出する反応」の2種類です。これらは全く関係がないように思われますが、実は共通点があります。それは、反応の際に、電子を放出するということです。この表現だけでは理解しづらいと思うので、先ほど例に挙げた2つの反応を用いて解説します。
2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという反応では、メタノール(CH3OH)に含まれる炭素原子(C)のまわりに存在する電子の数よりも、二酸化炭素(CO2)に含まれる炭素原子(C)のまわりに存在する電子の数のほうが少ないことが知られていますよ。また、H2S+I2→S+2HIという反応では、硫化水素(H2S)に含まれる硫黄(S)のまわりに存在する電子の数よりも、単体の硫黄(S)に含まれる電子の数のほうが少ないことが知られています。どちらの反応にも、電子を放出する原子が存在するのですね。
このように、電子という粒子の移動に注目することで、酸化反応の定義は拡張されます。また、酸化反応を「電子を放出する反応」と捉えることで、「酸素を結合する反応」と「水素を放出する反応」を実質的に同じ反応だと考えることもできるようになるのです。もちろん、酸素と水素のどちらも関与しない反応であっても、電子を放出する反応という酸化反応の定義を適応することができますよ。
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