この記事では生物の体内で重要なはたらきをしている物質、ヌクレオチドについて学んでいこう。

ヌクレオチドとはいったいどんな物質か、君は端的に説明することができるでしょうか?基本的なヌクレオチドの構造や、どんなところにヌクレオチドが使われているかが把握できるようになっておきたいな。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ヌクレオチドとは?

ヌクレオチド(nucleotide)とは、糖にリン酸と塩基が結合した化合物(分子)のことをさします。

生物が自身の遺伝情報を伝えるために利用しているDNARNA(核酸)の構成単位としてよく知られた存在です。また、代謝を行う際に深く関係するADPATPといった物質も、構造を確認するとヌクレオチドの一種だということに気づきます。

image by Study-Z編集部

DNAやRNA、ATPやADPについては後ほどご紹介します。

まずは、ヌクレオチドを構成する3つの要素=『糖』『リン酸』『塩基』についてもう少し詳しく見てみましょう。

ヌクレオチドの構成要素

基本的に、ヌクレオチドに使われている糖は、デオキシリボースまたはリボースです。

デオキシリボースとリボースは、どちらも5つの炭素でできた環がベースとなっている五炭糖(ペントース)。両者のちがいは分子中の酸素の数にあります。デオキシリボースの方がリボースよりも一つ酸素が少ないのです。

ヌクレオチドの構成成分としてデオキシリボースがつかわれているものをデオキシヌクレオチド、リボースがつかわれているものをリボヌクレオチドとよんだりもします。

\次のページで「リン酸」を解説!/

リン酸

リン酸はリン、水素、酸素からなる化合物。有機化合物のパーツとしてリン酸が使われる場合…つまり官能基としてのリン酸は「リン酸基」とよばれることが多いですが、生化学の世界では単にリン酸ということが少なくありません。

DNAやRNAのヌクレオチドには1つついていますが、ADPにはリン酸が2つATPにはリン酸が3つ結合しています。

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塩基

塩基は名前の通り、塩基性をしめす化合物です。生体内では何種類かの塩基がヌクレオチドに使われていますが、それらは大きく2つのグループに分類することができます。プリン塩基ピリミジン塩基です。

プリン塩基はプリン(purine)という有機化合物がベースになっている塩基の総称。プリンは五角形と六角形がくっついたような特徴的な環状構造(プリン環)をもつ化合物で、プリン塩基に分類されるものは、どれもこの環状構造をもちます。

プリン塩基に分類されるのは、アデニングアニンなどの塩基です。

もう一つのグループであるピリミジン塩基も、ピリミジンという有機化合物がベースになっている塩基の総称です。ピリミジンおよび、それがベースとなるピリミジン延期は六角形の環をもちます。

ピリミジン塩基に含まれるのは、チミンシトシンウラシルなどです。

ヌクレオシドとは?

生化学の本を読んでいると、ヌクレオシド(nucleoside)という言葉に出会うことがあります。ヌクレオチドとよく似ていますが、別の単語です。

ヌクレオシドとは、ヌクレオチドからリン酸をのぞいたもの…つまり、糖と塩基が結合している化合物のことをいいます。

ヌクレオシドも、糖の種類によってリボヌクレオシド(糖がリボース)、デオキシヌクレオシド(糖がデオキシリボース)とよび分けられたりするのです。

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生体内のヌクレオチド

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糖、リン酸、塩基からなるヌクレオチドが、生体内のどんなところに使われているか、具体的に見ていきましょう。

DNA

ヌクレオチドからなる物質の代表といえば、あらゆる生物の遺伝情報の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)です。DNAのヌクレオチドは以下の要素で構成されています。

【DNAのヌクレオチドの構成】

糖…デオキシリボース
リン酸…1つ
塩基…アデニン、チミン、シトシン、グアニンのいずれか

つまり、4種類の塩基のいずれかをもつ、4種類のヌクレオチドが使われているのです。DNAは4種類のヌクレオチドが数多くつながり、長い鎖のようになっている高分子化合物といえます。

この4種類の塩基をもったヌクレオチドの並び方が、遺伝情報に大きくかかわってきますが、このお話はまた別の記事で学習しましょう。

RNA

DNAの情報はタンパク質合成の際、RNA(リボ核酸)に写し取られます。また、小さく短いRNAをアミノ酸を運ぶ道具のように使ったり(トランスファーRNA)することもあるなど、RNAも生体内で欠かすことのできない物質です。

RNAのヌクレオチドは以下の要素で構成されています。

【RNAのヌクレオチドの構成】

糖…リボース
リン酸…1つ
塩基…アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンのいずれか

image by Study-Z編集部

DNAとは糖の種類が違うこと、塩基のうちの一つが違うことに注意してください。

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ADP、ATP

エネルギーのやりとりを伴う生体内の化学反応を代謝といいます。代謝を行う際に、エネルギーを蓄えたり、エネルギーを放出する際に利用されるのがADP(アデノシン二リン酸)ATP(アデノシン三リン酸)です。

これらの物質も、基本的な構成はヌクレオチドそのものとなっています。

【ADPの構成】

糖…リボース
リン酸…2つ
塩基…アデニン

【ATPの構成】

糖…リボース
リン酸…3つ
塩基…アデニン

リボースとアデニンからなるヌクレオシドをアデノシンといいます。ADPとATPでは、アデノシンに結合しているリン酸の数が異なる、というところがポイントです。

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リン酸同士をつなぐ、強いエネルギーをもった結合を高エネルギーリン酸結合といいます。この結合をつくったり、反対に切ったりすることで、エネルギーの出し入れをしているのです。

生体内ではたらく物質の”共通性”

DNAやRNA、ADPにATP…どの物質も生物の学習で必ず目にする名前ですが、ヌクレオチドという構造に注目してみると、それぞれが非常によく似ていることに気づけたと思います。複雑な体をもち、多様な化学反応が体内で起きている生物でも、分子レベルで見れば同じようなパーツを使いまわしているんですね。限られた材料からなる物質によって、複雑な生命が作り出され、維持されているというのは何ともすごいことではないでしょうか?

今回ご紹介した以外にも、ヌクレオチドのような構造の化合物が生体内で利用されているものがあります。教科書に出てくる物質一つ一つに注目してみてください。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

生体内の超重要物質ヌクレオチドを総おさらい!現役講師がわかりやすく解説!

この記事では生物の体内で重要なはたらきをしている物質、ヌクレオチドについて学んでいこう。

ヌクレオチドとはいったいどんな物質か、君は端的に説明することができるでしょうか?基本的なヌクレオチドの構造や、どんなところにヌクレオチドが使われているかが把握できるようになっておきたいな。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ヌクレオチドとは?

ヌクレオチド(nucleotide)とは、糖にリン酸と塩基が結合した化合物(分子)のことをさします。

生物が自身の遺伝情報を伝えるために利用しているDNARNA(核酸)の構成単位としてよく知られた存在です。また、代謝を行う際に深く関係するADPATPといった物質も、構造を確認するとヌクレオチドの一種だということに気づきます。

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DNAやRNA、ATPやADPについては後ほどご紹介します。

まずは、ヌクレオチドを構成する3つの要素=『糖』『リン酸』『塩基』についてもう少し詳しく見てみましょう。

ヌクレオチドの構成要素

基本的に、ヌクレオチドに使われている糖は、デオキシリボースまたはリボースです。

デオキシリボースとリボースは、どちらも5つの炭素でできた環がベースとなっている五炭糖(ペントース)。両者のちがいは分子中の酸素の数にあります。デオキシリボースの方がリボースよりも一つ酸素が少ないのです。

ヌクレオチドの構成成分としてデオキシリボースがつかわれているものをデオキシヌクレオチド、リボースがつかわれているものをリボヌクレオチドとよんだりもします。

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