この記事では「商いは牛の涎」について解説する。

端的に言えば「商いは牛の涎」の意味は「商売は辛抱強く続けるのが良い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「商いは牛の涎」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「商いは牛の涎」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「商いは牛の涎」の意味・使い方を見ていきましょう。

「商いは牛の涎」の意味は?

「商いは牛の涎」には、次のような意味があります。

商売は、牛のよだれが切れ目なく長く垂れるように、気長く努力せよということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「商いは牛の涎」

「商(あきな)い」とは「商売」のこと。「牛の涎(よだれ)」は、牛のよだれが長く垂れる様子から転じて、「細く長く続くこと」の例えとして使われるようになりました。利益を一時的に得ることは誰でも可能かもしれませんが、商売は長く続けていくことが大変です。時代の流れと共に求められるニーズは変化し、臨機応変に対応しながら資金を上手くやり繰りしていかなくてはいけません。商売は大変だからこそ、気長に辛抱強く努力する必要があるという意味が「商いは牛の涎」に込められています。

由来は諸説ありますが、「商い」は「飽きない」と掛けているという説があり、商売を「牛の涎」に例えたのも商売人の遊び心といえるでしょう。利益が出そうだからと、安易に新事業に飛びつくのではなく、まずは一つの事業が軌道に乗るまで地道に続けること。「商いは牛の涎」は、昔の商人からのメッセージといえますね。

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「商いは牛の涎」の使い方・例文

「商いは牛の涎」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.商いは牛の涎というように、欲ばかりを優先してはいけないよ。

2.お店を長く続けたいなら、商いは牛の涎と心得ておくべきだろう。

3.商いは牛の涎を肝に銘じていたおかげで、長年事業を続けることができた。

「商いは牛の涎」は教訓として、商売を始める人へアドバイスとして使うことができます。ほかにも、自身の心構えとして使ってもいいですね。「牛の涎」というと汚いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、商人たるもの遊び心も大事だということでしょう。まずは無理せず、できる範囲で細く長く地道に続けていくことを目標にしてみてはいかがでしょうか。そして、本当のチャンスが巡ってきた時に奮起すればよいはずです。

せっかく始めた商売なわけですから、すぐに諦めず辛抱強くやっていくことで新たな気づきもあるかもしえません。「商いは牛の涎」は商売を続けるコツとして、忘れてはいけない心構えといえるでしょう。

「商いは牛の涎」の類義語は?違いは?

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では、「商いは牛の涎」の類義語や違いをみていきましょう。

「商い三年」

「石の上にも三年」ということわざがあるように、商売にも「商い三年」という言葉があります。意味は、商売で利益を上げるには三年かかるということ。つまり「商売は最低でも三年は辛抱しなさい」ということになりますね。商売によっては開業してすぐに儲けが発生するかもしれません。しかし、大変なのは利益を継続させること。軌道にのるためにも、三年続けなければ商売はものにできないということでしょう。「商いは牛の涎」と同様に、商売は辛抱が大事だといえます。

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「粒粒辛苦」

私達が当たり前のように食べているお米。実際に田んぼを見学したことがあるならば想像できるかもしれませんが、お米を育てるのは大変な作業ですよね。穀物の1粒1粒は、農家の苦労によって作られているといってよいでしょう。そのような様子から転じて、物事を成し遂げるために、コツコツと努力を積み重ねることを「粒粒辛苦(りゅうりゅうしんく)」という四字熟語で表現するようになりました。

当然のことではありますが、ドラマのように一夜にして成功者になるなど現実ではあり得ません。成功者の過去を見ると、大抵はコツコツと積み重ねた努力によって成功を掴んだといえます。「粒粒辛苦」したからこそ夢を叶えた人もいるでしょう。ショートカットせずに、地道に努力することこそが成功への大きな一歩なのかもしれませんね。

「商いは牛の涎」の対義語は?

「商いは牛の涎」は「商売は辛抱強く努力せよ」という意味でした。継続することが大切という意味でもあるので、反対となると「短期間で利益を得る」となるはずです。そこで今回は、「簡単に金儲けをする」や「一度に利益を得る」といった意味合いで「商いは牛の涎」の対義語をみていきましょう。

「濡れ手で粟」

「粟(あわ)」は、イネ科で栄養豊富であることから、昔はお米の代わりとして食べられていたようですね。粟は小さな粒が特徴であるため、濡れた手で触ればたくさんの粟が手についてしまうことでしょう。そのような様子から転じて、苦労もせずに、楽々と大儲けすることを「濡れ手で粟」と表現するようになりました。

使い方としては、投資が偶然上手くいった時を「濡れ手で粟」と表現することもありますし、人を騙してお金を搾取した場合に使われることもあります。犯罪以外で苦労せずに大儲けすること自体は悪いことではありませんが、状況によっては皮肉と捉えられてしまうかもしれません。「濡れ手で粟」を使う場合は注意しましょう。

「一攫千金」

誰しも一度は「一攫千金」を夢みたことがあるのではないでしょうか。大金を一つかみで取る様子から転じて、一度の仕事で苦労せずに巨大な利益を得ることを「一攫千金」と表現するようになりました。もしくは「一獲千金」と書いても問題ありません。「一攫千金」の代表格といえば、株などの投資、宝くじなどのギャンブルですよね。ほかにも、マグロの一本釣りなど、一夜にしてお金持ちになろうと夢見ることもあるでしょう。

ただし、経験者ならば痛いほど理解できるかと思いますが、「一攫千金」はハイリスク・ハイリターンです。儲けに目がくらんで大金をつぎ込むと、あとで大変な思いをすることが多いといえるでしょう。「一攫千金」を狙うこと自体は何ら問題ありませんが、無理のない範囲で挑んでみてくださいね。

「商いは牛の涎」の英訳は?

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では、「商いは牛の涎」を英語訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

「Slow and steady wins the race」

「a cow's drool(牛のよだれ)」という単語を使ったとしても、「商いは牛の涎」の意味を伝えるのは難しいはずです。そこで、英語のことわざ「Slow and steady wins the race」を代わりに使ってみてはいかがでしょうか。直訳すると「ゆっくり着実にやれば競争に勝つ」という意味になります。日本のことわざに当てはめると「急がば回れ」に近い意味だといえるでしょう。ただし、「商いは牛の涎」も地道に続けることが商売のコツだといっているわけです。拡大解釈をすれば「手堅くやっていく」ということになるのではないでしょうか。

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「Keep your shop and your shop will keep you」

こちらも英語のことわざになります。「Keep your shop and your shop will keep you」は直訳すると「あなたがお店を大切にすれば、お店もあなたを大切にしてくれる」という意味。すなわち、「お店で地道に働いていれば貧乏になることはない」と解釈することができますね。「商いは牛の涎」と意味が離れてしまうような印象ですが、商売を続けていく限り、仕事を失うことはないわけです。目先の利益に捉われず、地道に商売をしていくことを考えれば、近い表現だといえるでしょう。

「商いは牛の涎」を使いこなそう

この記事では「商いは牛の涎」の意味・使い方・類語などを説明しました。「商いは牛の涎」は、先人が残してくれた商売の教訓といえます。ただし、業種によっては、細く長く続けていく考えが現実的ではなく、むしろ実践すべき教訓ではないかもしれません。だからこそ、商売をするにあたって大事なのは、何を目標とするかではないでしょうか。「商いは牛の涎」が正しいと証明するかのように、現代でも愛される飲食店や企業は数多く存在します。一つの技術を極めたいのなら、ぜひ「商いは牛の涎」を心構えとして使ってみてください。

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【慣用句】「商いは牛の涎」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「商いは牛の涎」について解説する。

端的に言えば「商いは牛の涎」の意味は「商売は辛抱強く続けるのが良い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「商いは牛の涎」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「商いは牛の涎」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「商いは牛の涎」の意味・使い方を見ていきましょう。

「商いは牛の涎」の意味は?

「商いは牛の涎」には、次のような意味があります。

商売は、牛のよだれが切れ目なく長く垂れるように、気長く努力せよということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「商いは牛の涎」

「商(あきな)い」とは「商売」のこと。「牛の涎(よだれ)」は、牛のよだれが長く垂れる様子から転じて、「細く長く続くこと」の例えとして使われるようになりました。利益を一時的に得ることは誰でも可能かもしれませんが、商売は長く続けていくことが大変です。時代の流れと共に求められるニーズは変化し、臨機応変に対応しながら資金を上手くやり繰りしていかなくてはいけません。商売は大変だからこそ、気長に辛抱強く努力する必要があるという意味が「商いは牛の涎」に込められています。

由来は諸説ありますが、「商い」は「飽きない」と掛けているという説があり、商売を「牛の涎」に例えたのも商売人の遊び心といえるでしょう。利益が出そうだからと、安易に新事業に飛びつくのではなく、まずは一つの事業が軌道に乗るまで地道に続けること。「商いは牛の涎」は、昔の商人からのメッセージといえますね。

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