この記事では「鬼に衣」について解説する。

鬼に衣という慣用句には、まったく違ったふたつの意味がある。意味やニュアンスをしっかり理解して、使いこなせるシーンを増やしていこう。

小説や記事の執筆など、言葉に多く携わってきた中低青黄を呼んです。一緒に「鬼に衣」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/中低青黄

大学生ライター。大学生活を送る傍ら、PR会社にて記事の添削・校正などを担当。また、高校生の頃から小説をはじめとした書籍を多数通読。小説の執筆や記事の作成なども行っている。

「鬼に衣」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼に衣」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼に衣」の意味は?

「鬼に衣」には、次のような意味があります。

1.表面は慈悲深そうなようすをしていても、内心は鬼のように恐ろしいこと。狼 (おおかみ) に衣 (ころも) 。

2.《鬼は本来裸で衣服を必要としないところから》不必要なこと。また、ふつりあいなこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼に衣」

「鬼に衣」という慣用句、ご存知でしょうか。読み方は「おににころも」です。恐らく耳にしたことすらないという方がほとんどではないでしょうか。

こちらの慣用句は異なったふたつの意味を持つ珍しい言葉です。1の意味は、人を欺くことのたとえ。恐ろしい鬼が僧衣、つまり僧侶の身に付ける衣服をを身につけて巧みに人を欺いたことからこのような意味が生まれました。人を(この場合鬼ですが)見た目で判断してはいけないな、という含蓄があるのです。

そして2の意味。こちらは、鬼は基本服を着ていないことから不必要なことを表現しています。確かに絵本などに描かれる鬼は上半身裸なことが多いですよね。

「鬼」はどこからきたのか

「鬼に衣」において中心となる「鬼」。桃太郎や一寸法師などの昔話にも出てきるため、日本人には馴染みのある存在ではないでしょうか。それ以外にも節分の豆まきでも「鬼は外、福は内」という掛け声をしますよね。

そのような鬼ですが、実は元々は実体のないものとして描かれていました。日本の鬼は古来、人間の心に潜む邪悪な心を表したものだったのです。

そもそも目に見えない「隠形(おんぎょう)」の「おん」の音が変化して鬼になったという説もあります。そんな鬼に実態を与えたのは、仏教でした。仏教における鬼は、地獄の囚人を管理する獄卒です。そのためにあんな恐ろしい見た目をしているんですね。

\次のページで「「鬼に衣」の使い方・例文」を解説!/

「鬼に衣」の使い方・例文

鬼の出自を確認したところで、次は「鬼に衣」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.僕が昔使っていた懐中時計を君にあげようと思ったけれど、君はまったく時計を見る習慣が内容だし、鬼に衣だったね。
2.あの先生は一見優しく見えるが、怒ると生徒に手を上げるため、鬼に衣だなと感じた。
3.一切料理をした試しのない友人の引っ越し祝いに中華鍋をあげるのは鬼に衣だ。

どうでしょう。異なるふたつの意味を理解いただけましたでしょうか。意味の区別としては1と3、2で二分することができます。1と3が不必要であること、2が印象と内面が違うことを表しているのです。

時計を見る習慣がない相手に懐中時計をあげても使ってくれないですし、料理をしない相手にただのフライパンならまだしも中華鍋をプレゼントするのはミステイクでしかないですよね。そして、2に関しては優しく見える先生が怒ると手を上げるという外形と内面での解離が表現されています。

あまり日常的に使う表現ではありませんが、使い方をしっかり覚えていざという時に使えるようにしておきましょう。

「鬼に衣」の類義語は?違いは?

鬼に衣にふたつの異なる意味があることはここまでもことあるごとに書かせていただきました。では、類義語はどうでしょう。ふたつの意味ごとに整理して説明していきたいと思います。

\次のページで「「狼に衣」」を解説!/

「狼に衣」

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こちらは、一見した印象と内面が違うという意味の「鬼に衣」の類義語です。鬼が狼に入れ替わっただけなので、意味は把握しやすいですね。

覚え方としては、童話「赤ずきん」になぞらえて覚えてみてもいいかもしれません。鬼は赤ずきんが来るまでにお婆さんを食べ、お婆さんの衣服=衣をまとうことでその凶暴さを隠そうとしましたから。

 

「無用の長物」

不要なものという意味を持つ言葉として、「無用の長物」を紹介したいと思います。読み方は「むようのちょうぶつ」。持っていても役に立たず、それどころか邪魔になるという意味です。

「長物」というのは長すぎるもののたとえ。「帯に短し襷(たすき)に長し」という言葉もあるように、昔の人は物の長さを使って必要不必要を表していたのですね。

「外見と内面」に関することわざ

「鬼に衣」の他にも内面と外面の違いを指摘するような言葉はいくつもあります。それほどまでに古来より、そのような先入観の恐ろしさは指摘されていたのですね。

今回はその中でもふたつそのような言葉を紹介します。

「貌をもって人をとる」

こちらは「かおをもってひとをとる」と読みます。そもそも「貌」という漢字に馴染みがない人が多いかもしれません。しかし、美貌(びぼう)や全貌(ぜんぼう)などの単語は聞いたこと自体はあるのではないでしょうか。

このふたつの単語からわかるように「貌」は顔や姿形を表す漢字です。その顔や姿、つまり外形からその人を知ったつもりになってはいけないという孔子の教えが、この言葉に込められています。

「内柔外剛」

こちらの言葉は、少し鬼に衣と似た言葉かもしれません。読み方は「ないじゅうがいごう」。内面は弱々しいが、外面は強そうに見えること、または外面は怖そうに見えるが優しい心を持っていることを表します。

 

 

「鬼」を含んだ慣用句

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「鬼」を使った慣用句もこれまた多く存在するのです。その中でも今回は耳にする機会が少ないであろう慣用句をふたつ紹介させていただきます。

\次のページで「「鬼の霍乱」」を解説!/

「鬼の霍乱」

こちらの慣用句の読み方は「おにのかくらん」。普段丈夫な人が珍しく病に犯されたことをたとえて言う言葉です。「霍乱」とは、漢方医学用語で日射病や食中毒のことを指します。普段とても丈夫な人のことを鬼にたとえ、鬼が霍乱で患うことからこのような慣用句が生まれたのです。

ただ、この言葉は目上の方に使ってしまうと失礼に当たりますので気をつけましょう。

「銭あるときは鬼をも使う」

こちらのことわざは、「ぜにあるときはおにをもつかう」と読みます。

これまでの鬼を使った慣用句では鬼を「恐ろしい存在」「怖い存在」として扱っていました。そのような鬼ですら、お金がある人には使われてしまう、ということから金の持つ強い力を表現した慣用句になっているのです。

「鬼に衣」を使いこなそう

この記事では「鬼に衣」の意味から始まり、外見と内面の差から生まれた慣用句、果ては鬼を使った慣用句まで幅広く紹介してきました。同じ言葉が入っている慣用句は、共通した文脈でその単語が使用されていることが多いので、関連づけて考えると、より覚えやすくなると思うので、意識してみてくださいね。

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【慣用句】「鬼に衣」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「鬼に衣」について解説する。

鬼に衣という慣用句には、まったく違ったふたつの意味がある。意味やニュアンスをしっかり理解して、使いこなせるシーンを増やしていこう。

小説や記事の執筆など、言葉に多く携わってきた中低青黄を呼んです。一緒に「鬼に衣」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/中低青黄

大学生ライター。大学生活を送る傍ら、PR会社にて記事の添削・校正などを担当。また、高校生の頃から小説をはじめとした書籍を多数通読。小説の執筆や記事の作成なども行っている。

「鬼に衣」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼に衣」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼に衣」の意味は?

「鬼に衣」には、次のような意味があります。

1.表面は慈悲深そうなようすをしていても、内心は鬼のように恐ろしいこと。狼 (おおかみ) に衣 (ころも) 。

2.《鬼は本来裸で衣服を必要としないところから》不必要なこと。また、ふつりあいなこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼に衣」

「鬼に衣」という慣用句、ご存知でしょうか。読み方は「おににころも」です。恐らく耳にしたことすらないという方がほとんどではないでしょうか。

こちらの慣用句は異なったふたつの意味を持つ珍しい言葉です。1の意味は、人を欺くことのたとえ。恐ろしい鬼が僧衣、つまり僧侶の身に付ける衣服をを身につけて巧みに人を欺いたことからこのような意味が生まれました。人を(この場合鬼ですが)見た目で判断してはいけないな、という含蓄があるのです。

そして2の意味。こちらは、鬼は基本服を着ていないことから不必要なことを表現しています。確かに絵本などに描かれる鬼は上半身裸なことが多いですよね。

「鬼」はどこからきたのか

「鬼に衣」において中心となる「鬼」。桃太郎や一寸法師などの昔話にも出てきるため、日本人には馴染みのある存在ではないでしょうか。それ以外にも節分の豆まきでも「鬼は外、福は内」という掛け声をしますよね。

そのような鬼ですが、実は元々は実体のないものとして描かれていました。日本の鬼は古来、人間の心に潜む邪悪な心を表したものだったのです。

そもそも目に見えない「隠形(おんぎょう)」の「おん」の音が変化して鬼になったという説もあります。そんな鬼に実態を与えたのは、仏教でした。仏教における鬼は、地獄の囚人を管理する獄卒です。そのためにあんな恐ろしい見た目をしているんですね。

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