5.季節別燃費の比較
夏の燃費
image by Study-Z編集部
こと転がり抵抗だけに注目すると、夏の方が断然燃費が良くなります。なぜでしょうか。
先ほどのゴムの変形量と力の関係を表したグラフを見てみましょう。硬いゴムの方が変形量vs力の傾きが大きくなりますね。すると、力を加えた時と元に戻る時のギャップが大きくエネルギーロスが大きくなってしまいます。傾きが小さい、柔らかいごゴムではギャップが小さい=エネルギーロスが小さいです。
一般的に、ゴムは加熱されると柔らかくなるためエネルギーロスが小さくなり、転がり抵抗の低減に寄与します。
走行抵抗自体は小さくなりますが、夏場は空調にたくさんエネルギーが必要です。暖房であればエンジンの熱を利用することも出来ますが、冷房は高温のエンジンを積んだ金属の塊を一から冷やす必要がり多くのエネルギーが必要となるため、一概に「夏が燃費がいい」とは言いきれません。
冬の燃費
冬に燃費が悪いと感じる人は多いようです。ある調査によると、温暖な地域(都心部や九州四国)を除いては「冬場燃費が悪いと感じる」人の割合が過半数とのこと。豪雪地帯にあたる地域では8割以上の人が「冬に燃費が悪くなる」と感じているようです。なぜそうなるのか?
仮に夏場と同じ材質、同じグレード、同じ性能のタイヤをはいていても気温の低い冬場は上述の理屈から転がり抵抗が大きくなります。それだけではありません。冬場はそもそもグリップの効きやすい冬用タイヤに交換し、さらにタイヤの空気圧を下げることで路面との接地面積を増やしさらにグリップが効きやすいようにするもの。これらの処置で転がり抵抗はさらに高くなります。また、冬場は暖機運転を行う必要があったり、エンジンの熱を利用できるとは言え暖房にもエネルギーを使うため燃費が嵩むのです。
燃費がいいのはいつ?
日常的に冷暖房をあまり使わない、春秋は全国どこの地域でも燃費が良いようです。夏と冬は燃費が落ちます。 温暖な地域では夏と冬の落ち込みは同じくらいで、寒冷地では冬の燃費の落ち込みの方が激しいようです。
転がり抵抗と燃費
転がり抵抗とは物体が転がる時に進行方向逆向きに働く力で、その大きさは垂直抗力に比例。転がり抵抗の発生原因は、ゴムのような粘弾性体に力を加えた時と力を取り除いた時の挙動の差から生まれるエネルギーロス。ゴムが硬いときほどこのロスが大きくなるため、冬場はタイヤの転がり抵抗が大きくなり燃費が悪くなります。夏場も冷房にエネルギーを使うため燃費は悪くなり、結果的に春と秋が最も燃費が良い傾向にあるようです。