転がり抵抗と摩擦力の相違点
転がり抵抗と摩擦力で異なるのは、摩擦力は単に熱となって失われるのに対し、転がり抵抗は「転がるための推進力」としても機能しています。止まっているタイヤがあったとして、それを転がそうとしても「転がり抵抗」がなければタイヤは転がり始めることが出来ません。
2点目は「接触面積の影響」です。摩擦力は接触面積が変化しても、垂直抗力が同じであれば変わりません。
image by Study-Z編集部
イラストのように、箱を坂に置くとしましょう。斜面と箱との底面に働く摩擦力は箱をどの向きに置いても変わりません。なぜでしょうか。
例えば、底面積1のA面を下に置いた場合と底面積が2のB面を下に置いた場合の摩擦を考えましょう。摩擦が起きている界面では微小な凹凸同士が噛み合っている状態。A面を下にした方が、底面積2のB面を下にするより「面圧」が大きく働きますね。つまりA面を下にした方が界面での噛み合いが強い状態で、こちらの方が摩擦力が大きくなりそうな気もしますね。しかし、A面はB面の半分しか面積がありません。噛み合いが強くても、接触面が狭いためトータルの摩擦力は変わりません。同様にB面を下にすると噛み合いは小さくなりますが、面積が広いためA面下の時と同じ摩擦力が働きます。
摩擦力は結局のところ、面圧と面積の掛け算つまりは「垂直抗力」に比例するのです。
一方の「転がり抵抗」は、接触面積が大きいほど大きくなり、接触面積の影響を受けます。なぜでしょうか。接触面積が大きいほど転がる物体が大きく変形し、エネルギーロスが大きくなるからです。詳細は後述。
4.タイヤの転がり抵抗
タイヤの材質はゴム。ゴムは変形する時と元に戻る時で挙動が異なる性質(粘弾性)があり、これがエネルギー損失(転がり抵抗)の原因です。
変形の大きさと力の関係
フックの法則によれば、力Fで物体を変形させたときの変形の大きさをxとした時、F=kxが成り立つとされています。これは力を加えた時も戻した時も変わりません。よって、物体を変形させるのに仕事を加えても、元に戻すときは全く同じ分だけ仕事をもらうことになりエネルギーのロスはありません。
しかし、ゴムを変形させてもこのような挙動は見られません。変形させたときと元に戻すときで挙動が異なります。粘弾性と呼ばれる性質です。
image by Study-Z編集部
変形させるときは、序盤は「いきなり引っ張られた」ような状態になり少しの変形でも大きな力が生じます。よってグラフ上では変形vs力の傾きが大きくなっていますね。しばらく引っ張ていると「馴染んでくる」ような状態になり、あまり力を大きくせずとも伸び続けてくれます。
一方、元に戻すとき、序盤は「いきなり力を取り除かれた」ような状態になり力が急激に小さくなりますが、変形は残ったまま。力が弱まってから変位が元にもどるといった挙動になります。
何が言いたいか?このような挙動だと、変形させるときのエネルギーの方が元に戻る時よりエネルギーより大きいということ。変形させるときは「大きな力」で引っ張ている区間が長いのに対し、元に戻る時は「大きい力」の区間は短く、あとは「小さい」力でしか引っ張ってくれません。仕事が小さくる所以です。
また、接触面積が大きいと変形量が大きい。変形量が大きいほど、変形させるときと元に戻る時のエネルギー差が大きい、つまりロスが大きくなるわけです。
\次のページで「5.季節別燃費の比較」を解説!/