知っての通り日本には四季が存在し、季節によって様々な自然の姿を見ることができる。春に花見で見る桜、秋に山奥で見る紅葉などがわかりやすい例です。しかし、このような光景はどの国でも見られるものではない。これにはバイオームという概念が関連している。
今回の記事は「日本のバイオーム」の詳細について国立大学院で修士号(農学)を取得しているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

バイオームとは?

バイオームとは?

image by Study-Z編集部

そもそもバイオームとはどういう意味の言葉なのでしょうか?

バイオームは日本語表記で『生物群系』とも呼ばれ、その土地に生息する植物の構成や樹林の種類、生息密度などによって決定される概念です。これだけ聞くと難しく感じるかもしれません。ですが、実際は至ってシンプル!今回の記事を読み終わる頃には完璧に理解できる状態になっているはずなので、一緒に学んでいきましょう。

バイオームを決定する要因

バイオームを理解するためには Google マップを活用すると理解が早まります。 最初に、「マレーシア」と検索し衛星写真を眺めてみてください。

そうすると、非常に豊かな熱帯雨林を観察することができると思います。次に、「アフガニスタン」と検索し衛星写真を眺めてみてください。緑はほとんどない砂漠地帯が映ると思います。このように、場所によって植生というのは大きく変わってくるのです。この植生を決定する要因は以下の2つがあります。

\次のページで「1.年平均気温」を解説!/

1.年平均気温

2.年間降水量

それぞれについて解説していきましょう。

1.年平均気温

バイオームを決定づける要因の一つは年平均気温です。

一般的に、平均気温が高い地域ほど広葉樹が多く存在し、植物の種類が多い傾向にあります。 熱帯雨林などがその代表例ですね。一方で、平均気温が低くなればなるほど針葉樹林の割合が増加し、最終的にはタイガと呼ばれる針葉樹林のみで形成される純林となります。ツンドラよりも平均気温が低い地域は”ツンドラ”と呼ばれ、地衣類や一部の草本類しか存在できません。

2.年間降水量

二つ目の要因としては年間の降水量が挙げられます。こちらの方が皆さんにとって想像しやすいかもしれませんね。一般的な植物は成長に水が不可欠であり、極端に水の少ない地域では沢山の水分を必要とする木が生えなくなります。代表的なのがステップと砂漠です。

ステップとはイネ科の植物が植生の大多数を占めるような地域であり、まばらに低木が存在しています。テレビなどでよく見るサバンナはまさにステップにそれです。さらに年間降水量が少なくなると、ほとんど植物が存在できなくなります。いわゆる砂漠のことですね!1年間でほとんど雨が降らないため、大地の表面が削れてできた岩や砂が露出しています。 

日本のバイオーム

バイオームの概念について簡単に紹介しましたが、日本のバイオームはどのように分類されるのでしょうか? 日本の場合、・国土が南北に長い・標高の差が著しく大きいことから垂直方向と水平方向にバイオームを分類することができます!

\次のページで「水平分布」を解説!/

水平分布

水平分布とは、緯度の違いによって気温が変化することに伴うバイオームの分布を指します。簡単に言うと、年平均気温が北海道の方が低く沖縄の方が高いよね、っていうことです。 日本には四つのバイオームに分類することができ、低緯度地域から順番に

・亜熱帯多雨林

・照葉樹林

・夏緑樹林

・針葉樹林

と変化していきます。では、ここからそれぞれ説明していきますね。

垂直分布

垂直分布とは、経度の違いによって温度が変化することに伴うバイオームの分布を指します。夏の暑い時期でも、富士山の頂上付近には雪が残っていますよね。このことからも分かる通り、標高が高くなるほど気温が下がるのです。一般的に、標高が100 m高くなるごとに気温は0.5度ほど下がります。

つまり、夏の暑い時期でも標高3000 mの地点では15度にまで下がっているのです!このことから、標高によって平均気温が異なり植生が変化します。具体的には、標高が低いところから高い所にかけて

・照葉樹林

・夏緑樹林

・針葉樹林

・高山草原

というバイオームの垂直分布が観察できます。

バイオームを代表する植物

これまでの解説から、バイオームは平均気温と降水量によって決定されることや日本のバイオームは垂直分布と水平分布に分類されることが理解できたかと思われます。次に、具体的な植物種や分布地域、特徴について見ていきましょう。

・亜熱帯多雨林

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熱帯多雨林は沖縄や鹿児島の一部地域と言った日本の南端に生息する植物種のことです。このバイオームの特徴として、冬でも落葉しない常緑広葉樹がほとんどである点があげられます。また、川の河口付近にマングローブと呼ばれる特有の木々が生えるのも特徴です。代表的な植物種としてはアコウやガジュマル、 マングローブ等が挙げられます。

・照葉樹林

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照葉樹林は九州から関東地方の平地にかけて分布しており、比較的温暖な地域によく見られます。『照葉』という単語にもある通り、テカテカと硬く光沢のある葉を持つことが特徴です。これはクチクラ層と呼ばれる層が発達しているためであり、成分的には髪の毛の成分(キューティクル)と一緒といわれています。代表的な植物としてクスノキやタブノキ、アラカシやスジダイなどがその例です。

・夏緑樹林

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夏緑樹林は中部地方の中緯度から東北地方にかけて分布しており、冬になると落葉する落葉広葉樹の割合が高いことが特徴です。秋になって紅葉のシーズンになると決まって東北地方がテレビでピックアップされますよね。紅葉狩りって実は寒い地域に行かないと見られないものなんです。代表的な植物種としてはミズナラ、カエデ、ブナなどが挙げられます。

 

・針葉樹林

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針葉樹林は北海道の北部にかけて分布しており、常緑針葉樹が優占しています。寒い地域で針葉樹が繁栄する理由としては乾燥に対する強さがあるからです。針葉樹はその名前の通り葉っぱが細いため、水分を蒸発する量は広葉樹と比べて少なく、保水力があります。そのため、 土壌中の水分が凍って水を多く吸収できない冬季でも成長できる針葉樹が有利なのです。代表的な植物にはエゾマツトドマツが挙げられます。

地球の様々な姿を知ろう!

今回の記事では日本のバイオームについて解説しました。四季が存在する日本において、木々たちは様々な姿を見せてくれます。春の風物詩である花見も、秋の一大イベントである紅葉狩りもバイオームと深く関係しているのです。 実際にグーグルマップで上空から木々を眺めてみるだけでも案外面白いですよ。こういった些細な違いを発見し、楽しむことができればあなたも立派な学者です!こういった感動を忘れずに生き物と向き合ってみてくださいね。

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理科生態系生物

5分で分かる「日本のバイオーム」バイオームって何?理系院卒ライターがわかりやすく解説!

知っての通り日本には四季が存在し、季節によって様々な自然の姿を見ることができる。春に花見で見る桜、秋に山奥で見る紅葉などがわかりやすい例です。しかし、このような光景はどの国でも見られるものではない。これにはバイオームという概念が関連している。
今回の記事は「日本のバイオーム」の詳細について国立大学院で修士号(農学)を取得しているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

バイオームとは?

バイオームとは?

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そもそもバイオームとはどういう意味の言葉なのでしょうか?

バイオームは日本語表記で『生物群系』とも呼ばれ、その土地に生息する植物の構成や樹林の種類、生息密度などによって決定される概念です。これだけ聞くと難しく感じるかもしれません。ですが、実際は至ってシンプル!今回の記事を読み終わる頃には完璧に理解できる状態になっているはずなので、一緒に学んでいきましょう。

バイオームを決定する要因

バイオームを理解するためには Google マップを活用すると理解が早まります。 最初に、「マレーシア」と検索し衛星写真を眺めてみてください。

そうすると、非常に豊かな熱帯雨林を観察することができると思います。次に、「アフガニスタン」と検索し衛星写真を眺めてみてください。緑はほとんどない砂漠地帯が映ると思います。このように、場所によって植生というのは大きく変わってくるのです。この植生を決定する要因は以下の2つがあります。

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