この記事では「寄進」について解説する。

端的に言えば寄進の意味は「寺社に寄付をすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大学で国語学を学んでいたライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたから雑学にも詳しい。一緒に「寄進」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。高校時代の得意科目は現代文と日本史だった。趣味は道の駅来訪と神社仏閣巡り。

「寄進」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「寄進」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。 今回は少し歴史の勉強もしますが、なるべくわかりやすく説明しますので遅れずについてきてくださいね!

「寄進」の意味は?

「寄進」には、次のような意味があります。日本史や世界史の教科書でも見かける言葉ですが、改めて確認しましょう。

神社・寺院などに、金銭・物品を寄付すること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「寄進」

寺社は宗教活動を行う団体です。中には学校などを経営する宗教法人がありますが、基本的には自らお金を稼ぐことをしません。そこで、氏子や檀家といった個人や地元の会社などの団体が金品を寄付して寺社の運営を支えていくのです。

お寺や神社に金品を渡す行為であれば、すべて「寄進」となります。お経を上げてもらったお坊さんに渡すお布施や、初詣に行ったときに願い事をして投げるお賽銭も、「寄進」の一種です。

「寄進」の語源は?

次に「寄進」の語源を確認しておきましょう。

寄進とは、寺社に「寄せまいらせる」という言葉がもとになっています。「寺社に寄付する」という言葉の古い言い回しです。

日本史においては、10世紀ごろから「寄進地系荘園」(きしんちけいしょうえん)が出現します。荘園とは有力な貴族や寺社の土地のことですが、覚えていますでしょうか。

荘園を開発した領主は、諸国の政務を担当する国司(こくし)から侵奪される危険がありました。それを逃れるために、領主が権力を持つ貴族や寺社に荘園を寄進したのです。それにより領主の権利は守られ、荘園は租税や役人の立ち入りが免除されました。

\次のページで「「寄進」の使い方・例文」を解説!/

「寄進」の使い方・例文

「寄進」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.社務所の改築のために、氏子の寄進を募る計画がある。
2.古くなった寺院の本堂を建築会社が解体すると、江戸時代の寄進帳が発見された。
3.「ここに奉納されている仏様は昔のお殿様が寄進したものだ」と、おじいちゃんが教えてくれた。

「寄進」という言葉の性質上、神社やお寺、また西洋であれば教会や修道院などと関係するシチュエーションで使用されます。

2の「寄進帳」(きしんちょう)とは、寺社に寄進を行った人の名前や寄付した品物などを記しておいた帳面のことです。「奉加帳」(ほうがちょう)とも呼びます。

ちなみに奉加帳は、現在では寺社に限らず、単に寄付を集めるときに作成する名簿のことを示すようになりました。また、「奉加帳方式」とは資金難の銀行などを救済するために、他の金融機関が資金を出し合うことです。奉加帳のごとく、横並びでお金を出させられたことが語源とされています。

「寄進」の類義語は?違いは?

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ここでは「寄進」の類義語である「勧進」(かんじん)について説明します。

「勧進」

歌舞伎の「勧進帳」(かんじんちょう)という演目はご存知でしょうか。追っ手から逃れる源義経一行は関所で足止めされますが、義経の手下である弁慶がたまたま持っていた巻物を勧進帳であるかのように読み上げてその場を切り抜ける、といった内容です。

この「勧進帳」というものには、先に説明した「寄進帳」と同じく寺社に寄付をする金品の内容などを記します。弁慶は、とっさに書いてもいない内容をすらすらと読み上げてみせたのですから大した度胸ですよね。しかもその後で主君である義経を突き飛ばして、関所の役人の目を欺いてみせました。

ただし、「寄進」と「勧進」では微妙な違いがあります。寄進は自らすすんで寄付をするのに対し、勧進は他人に寄付をすすめて金品を募るという意味合いがあるのです。

寺社に金品を贈る意味として使われる言葉は、他にも「奉納(ほうのう)」「浄財(じょうざい)」「喜捨(きしゃ)」「出捐(しゅつえん)」「寄贈(きそう)」などたくさんあります。かつての日本は、寺社と民衆との間で密接な関係を築いてきました。言葉の種類の豊富さにそのことが現れており、現代でも災害復興への義援金などにその精神が脈々と受け継がれているといえます。

\次のページで「「寄進」の対義語は?」を解説!/

「寄進」の対義語は?

「寄進」の対義語として「受贈」が挙げられます。では見ていきましょう。

「受贈」

「寄進」とは、金品などの寄付をすることだと説明しましたね。では、その反対の立場はどう言えばいいでしょうか。寄付を受けることですよね。

これを表す言葉に「受贈」(じゅそう)があります。贈り物を受けるという意味となりますが、寄付を受けるという意味にも使用できる言葉です。

法律用語でも「受贈」が登場するので、ちょっとだけ見ていきましょう。当事者の一方が無償で財産を与える契約行為を「贈与」と言いますが、贈与を受ける相手方のことを「受贈者」(じゅそうしゃ)と呼びます。要するにタダであげることですが、贈与も法律の世界では立派な契約の一つですので参考にしてくださいね。

「寄進」の英訳は?

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もちろん海外でも寄進は行われますので英語表現があります。こちらも見ていきましょう。

「contribution」

寄進を英訳すると、「contribution」(コントリビューション)という単語となります。広い意味で使われる単語で、寄付や寄贈、また寄付金や寄贈物も「contribution」です。さらには出資や貢献、寄与や投稿も「contribution」ですので、日本語とは対照的ですよね。

ちなみに似た意味の言葉で「donation」(ドネーション)というのは聞いたことがあるでしょうか。事故や病気が原因で毛髪を失った人のために、髪の毛を寄付してウィッグを作る活動があります。これを「hair donation」(ヘアドネーション)といい、有名人の参加が増えたのをきっかけに近年認知度が上がってきました。

「寄進」を使いこなそう

この記事では「寄進」の意味・使い方・類語などを説明しました。

近頃は御朱印集めなどで寺社を拝観する人が多いですよね。その道すがらで「あの灯籠は戦国武将の誰々が寄進したものだよ」なんて通ぶって言ってみると、ちょっと賢く聞こえるかもしれません。ぜひお試しを。

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国語言葉の意味

【慣用句】「寄進」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「寄進」について解説する。

端的に言えば寄進の意味は「寺社に寄付をすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大学で国語学を学んでいたライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたから雑学にも詳しい。一緒に「寄進」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。高校時代の得意科目は現代文と日本史だった。趣味は道の駅来訪と神社仏閣巡り。

「寄進」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「寄進」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。 今回は少し歴史の勉強もしますが、なるべくわかりやすく説明しますので遅れずについてきてくださいね!

「寄進」の意味は?

「寄進」には、次のような意味があります。日本史や世界史の教科書でも見かける言葉ですが、改めて確認しましょう。

神社・寺院などに、金銭・物品を寄付すること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「寄進」

寺社は宗教活動を行う団体です。中には学校などを経営する宗教法人がありますが、基本的には自らお金を稼ぐことをしません。そこで、氏子や檀家といった個人や地元の会社などの団体が金品を寄付して寺社の運営を支えていくのです。

お寺や神社に金品を渡す行為であれば、すべて「寄進」となります。お経を上げてもらったお坊さんに渡すお布施や、初詣に行ったときに願い事をして投げるお賽銭も、「寄進」の一種です。

「寄進」の語源は?

次に「寄進」の語源を確認しておきましょう。

寄進とは、寺社に「寄せまいらせる」という言葉がもとになっています。「寺社に寄付する」という言葉の古い言い回しです。

日本史においては、10世紀ごろから「寄進地系荘園」(きしんちけいしょうえん)が出現します。荘園とは有力な貴族や寺社の土地のことですが、覚えていますでしょうか。

荘園を開発した領主は、諸国の政務を担当する国司(こくし)から侵奪される危険がありました。それを逃れるために、領主が権力を持つ貴族や寺社に荘園を寄進したのです。それにより領主の権利は守られ、荘園は租税や役人の立ち入りが免除されました。

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