この記事では「気が多い」について解説する。

端的に言えば気が多いの意味は「興味や関心がさまざまに変わること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「気が多い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「気が多い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「気が多い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「気が多い」の意味は?

「気が多い」には、次のような意味があります。

心が定まらず、関心や興味がいろいろに変わる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気が多い」

ここで言う「気」とは「気持ち」、とくに「何か物事に対して向ける気持ちや心の動き」のことだと考えてください。何かに向ける気持ちがたくさんある、つまり興味や関心がさまざまに存在している状態のことを表す言葉です。

ここで注意しておきたいのは、「気が多い」とは興味や関心の対象がさまざまあるのであって、何か一つの物事に対してさまざまな気持ちが存在するわけではないということ。つまりどちらかというとネガティブな印象を受ける言葉だということですね。

シンプルな慣用句である分使い方を間違えてしまっている可能性もあるので、ここで改めてチェックしておきましょう。

「気が多い」の語源は?

次に「気が多い」の語源を確認しておきましょう。

「気が多い」の「気」は前述した通り「気持ち」ととらえて問題ないのですが、日本語にはこのほかにも「気」が付く言葉が多く存在しています。「気が沈む」「気を遣う」「気になる」など……いろいろありますね。皆さんも考えてみてください。ぱっと思いついただけでも、かなりたくさんの「気」が付く言葉が出てきたのではないでしょうか。

この「気」ですが、現代日本語の場合だと生命力や心の動き、心理や意思、場の雰囲気をあらわすなど、精神的なものをあらわすことが多いのです。「気が多い」ももちろんその一例。「心の動きが多くある」ということですね。

元々、「気」は中国の言葉でした。そこでは思想や宗教と関連した感覚的な意味を持つ単語でしたが、それが日本に入ってきて少しずつ意味内容を変化させていったのです。日本でも元々は「気」を「キ」ではなく「ケ」と呼び、自然界の大きな秩序というような意味で使用していました。「ケ」は人間の肉体や精神にも入りこんでくるものだとされていたため、そこから人間の精神というような用法に繋がり、結果として現代の「気」の意味が完成していったのですね。

\次のページで「「気が多い」の使い方・例文」を解説!/

「気が多い」の使い方・例文

「気が多い」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。細かなニュアンスの違いに注目して読んでみてください。

1.気が多い性格が災いして、企画のテーマを決めるのにてこずった。
2.彼女は気が多い人だから、浮気をされないか心配だ。
3.自分の気の多さこそが争いの引き金になったのだ。

「気が多い」という慣用句は、前述した通り基本的にはあまり良くない意味で用いられます。たくさんの物事に興味関心があるというのは良いことでもありますが、ポジティブな意味で使いたい場面では「気が多い」という表現は避けるべきでしょう。

1の例文のように、何か一つを突き詰める場面では「気が多い」のはウィークポイントになりがちです。興味関心がいろいろに変わり、さらには一つ一つを突き詰められない、「広く浅く」といったような印象も受ける慣用句だということがわかりますね。

2の例文は恋人の浮気を心配する文章ですが、このように「気が多い」という慣用句は恋愛関係の話題でよく耳にする言葉でもあります。対象を具体的に述べず「あの人は気が多い」とだけ言っても恋愛的な要素を含む意味で使われていることが多いため、意識しておきましょう。

3の例文に出てくる「気の多さ」のように、名詞句化して使っても意味が通じる慣用句です。ネガティブな意味を持ってはいますが、シンプルな分それだけ使い勝手の良い言葉でもありますね。

「気が多い」の類義語は?違いは?

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「気が多い」には類義語が多数存在しますが、ここではその中から二つ紹介していきます。

「浮気性」

「浮気性」と聞くと「気が多い」よりも恋愛らしい雰囲気が強まっているような印象を受けますね。印象の通り、この言葉も基本的には次から次へと恋愛対象が変わってしまう人の性格を指すことが多いです。

もちろん物事に対しても使うことが出来る言葉ですが、物事に対して気が多い人を指すときに「浮気性」を使うと、少し皮肉っぽいふざけた感じが出てきます。状況に応じて使い分けることで、ウィットに富んだ会話にも繋がりそうですね。

\次のページで「「好奇心旺盛」」を解説!/

「好奇心旺盛」

こちらは「気が多い」とは異なりポジティブな言葉ですが、たくさんのことに興味関心があるという点で言えば似た意味を表す言葉です。「気が多い」と言えば軽薄で情が浅い印象を受けるのに対し、「好奇心旺盛」と言えば積極的で探究心がある印象を受けますね。広く浅くのイメージというよりも広くもあり深くもあるイメージすらあるところもポイントです。

まったく同じ意味を表すわけではないので使用には注意が必要ですが、「気が多い」をポジティブに言い換えたいときなどには役立つかもしれません。

「気が多い」の対義語は?

「気が多い」の類義語を確認したところで、次は対義語を見ていきましょう。

「ひたむき」

「ひたむきな努力」などという文章でよく使われるこの言葉。漢字にすると「直向き」と書き、一直線に矢印が伸びているような印象を受ける言葉ですね。意味は「一つの物事に心を向けて、熱中、専心するさま」となっています。「気が多い」の「気」が一つの場所に注ぎ込まれている様子を想像すればわかりやすいのではないでしょうか。

多くのものに手を出さず対象を一つに絞って取り組むことで、より深くまで掘り進めることが出来ますよね。そうするとやはり「努力」という言葉には「ひたむき」というまっすぐな言葉がぴったり合致するように思います。

「一本気」

こちらは「いっぽんぎ」と読み、「純粋で物事を一途に思い込む性質であること」を意味する言葉です。「一本の気」と書くこの言葉と「気が多い」という慣用句、わかりやすく正反対の言葉ですね。

一本気には「純粋」という意味が含まれていますが、確かに何かたった一つに打ち込むさまは混じりけのない清らかさを想像させます。反対に気が多いとさまざまな物事や人物と混ざり合い、ある種の不純さを感じてしまうかもしれません。

「気が多い」の英訳は?

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では最後に、「気が多い」の英語表現を見ていきましょう。意味は「興味や関心がさまざまに変わること」でしたね。

「fickle」

これは「変わりやすい、移り気の」という意味の形容詞です。興味の対象がころころと変わる、まさに「気が多い」と同じ意味の英単語ですね。

この「fickle」も日本語の「気が多い」と同様に、恋愛関係の話題で用いられることも仕事や勉強などの物事に対して用いられることもある言葉です。状況に合わせて意味を適切に理解し、読み解いていきましょう。

\次のページで「「気が多い」を使いこなそう」を解説!/

「気が多い」を使いこなそう

この記事では「気が多い」の意味・使い方・類語などを説明しました。

あまり良い意味では用いられない慣用句だということは押さえておかなければいけませんが、さまざまな物事に興味や関心を持つということ自体はとても素敵なことです。視野を広く持ちさまざまなことに取り組みながらも、一つひとつをしっかり大切に扱っていけるようにしたいですね。

耳馴染みのある慣用句もこの機会にしっかり確認し直して、言葉と上手に付き合っていきましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「気が多い」の意味や使い方は?例文や類語を日本語オタクがわかりやすく解説!

この記事では「気が多い」について解説する。

端的に言えば気が多いの意味は「興味や関心がさまざまに変わること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「気が多い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「気が多い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「気が多い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「気が多い」の意味は?

「気が多い」には、次のような意味があります。

心が定まらず、関心や興味がいろいろに変わる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気が多い」

ここで言う「気」とは「気持ち」、とくに「何か物事に対して向ける気持ちや心の動き」のことだと考えてください。何かに向ける気持ちがたくさんある、つまり興味や関心がさまざまに存在している状態のことを表す言葉です。

ここで注意しておきたいのは、「気が多い」とは興味や関心の対象がさまざまあるのであって、何か一つの物事に対してさまざまな気持ちが存在するわけではないということ。つまりどちらかというとネガティブな印象を受ける言葉だということですね。

シンプルな慣用句である分使い方を間違えてしまっている可能性もあるので、ここで改めてチェックしておきましょう。

「気が多い」の語源は?

次に「気が多い」の語源を確認しておきましょう。

「気が多い」の「気」は前述した通り「気持ち」ととらえて問題ないのですが、日本語にはこのほかにも「気」が付く言葉が多く存在しています。「気が沈む」「気を遣う」「気になる」など……いろいろありますね。皆さんも考えてみてください。ぱっと思いついただけでも、かなりたくさんの「気」が付く言葉が出てきたのではないでしょうか。

この「気」ですが、現代日本語の場合だと生命力や心の動き、心理や意思、場の雰囲気をあらわすなど、精神的なものをあらわすことが多いのです。「気が多い」ももちろんその一例。「心の動きが多くある」ということですね。

元々、「気」は中国の言葉でした。そこでは思想や宗教と関連した感覚的な意味を持つ単語でしたが、それが日本に入ってきて少しずつ意味内容を変化させていったのです。日本でも元々は「気」を「キ」ではなく「ケ」と呼び、自然界の大きな秩序というような意味で使用していました。「ケ」は人間の肉体や精神にも入りこんでくるものだとされていたため、そこから人間の精神というような用法に繋がり、結果として現代の「気」の意味が完成していったのですね。

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