この記事では「血で血を洗う」について解説する。

端的に言えば「血で血を洗う」の意味は「争いに争いで応えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「血で血を洗う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「血で血を洗う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「血で血を洗う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「血で血を洗う」の意味は?

「血で血を洗う」には、次のような意味があります。

《「旧唐書」源休伝から》
1 殺傷に対して、殺傷で応じる。「―・う抗争」
2 血のつながっている者どうしが争う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「血で血を洗う」

この言葉は「暴力には暴力、悪いことには悪いことで応える」という意味の慣用表現です。「血を、更に血で」と、繰り返す・やり返すという意味合いが含まれています。

血が繋がっている者たちで争う」意味で使うこともでき、その場合、色々な思惑が入り乱れた、ドロドロした戦いが繰り広げられていることまで想像できるでしょう。

「復讐は何も生まない」などと言ったりもしますが、やり返すことによってまたやり返しを呼ぶ、終わりのない苦しい戦いを連想させる表現です。戦いと言っても正々堂々ではなく、ネガティブな意味合いが強い言葉と覚えておきましょう。

「血で血を洗う」の語源は?

次に「血で血を洗う」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の歴史書『旧唐書(くとうじょ)』に見ることができます。

「吾(われ)また汝を殺さば、猶(なお)血を以て血を洗うがごとく」という記述があり、叔父を殺された王様が、自分が相手を殺せば「血で血を洗う(ようなひどい)」ことになってしまう、と述べているのです。

由来の時点で、殺害に対して殺害をする「報復」という意味で使われていたことがわかりますね。「血族間での争い」という意味はありませんでしたが、「血」という言葉のイメージから「血族・血統」というニュアンスで、意味が拡大されたのかもしれません。

\次のページで「「血で血を洗う」の使い方・例文」を解説!/

「血で血を洗う」の使い方・例文

「血で血を洗う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・地元のやくざ同士の対立で、悪事に対して悪事で対抗することが過剰になっていき、どんどん血で血を洗う争いが激化していった。

・国会議員になるために、政治家が他の候補者の悪いうわさを流し合い、血で血を争うような選挙合戦がエスカレートして大問題となった。

・遺産相続について資産家の叔父が遺言を残さなかったため、兄弟や血縁者の間での血で血を洗う対立が勃発してしまった。

争いに争いで応えて、ひどいことになる」というイメージがつきますでしょうか。例文三番目は「親族間での争い」という意味で使っていますが、おそらく、その争いもどんどんひどくなっていくということが想像できます。

クリーンな戦いではなくドロドロとした、まさに血にまみれた戦いです。この言葉が使われた場合、その闘争が「醜いもの」だと、批判や呆れのようなニュアンスが含まれていることもあるかもしれません。

ネガティブなイメージを多く含む言葉のため、文章中に登場した場合は前後を注意して読み込みましょう。書き手の心情が強く表れている可能性が高く、問題にも問われやすいはずです。

「血で血を洗う」の類義語は?違いは?

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「血で血を洗う」の類義語は「目には目を、歯には歯を」「骨肉(こつにく)の争い」がいいでしょう。それぞれ違いがありますので、合わせて確認してください。

「目には目を、歯には歯を」

「目には目を、歯には歯を」は、「受けたことと同じようにやり返しなさい」という意味で使われる慣用句です。「同じ方法でやり返す」という意味で「血で血を洗う」を使った場合に同義語となるでしょう。

ただ、この言葉はもともとの意味は「受けた以上のことを行ってはならない」という、過剰な報復を禁じる意味だったとも言われています。辞書には前者の意味だけ掲載しているものもあったため、どちらも間違いとは言えません。合わせて覚えておきましょう。

\次のページで「「骨肉の争い」」を解説!/

・ひどい仕打ちを受けた者ほど「目には目を、歯には歯を」と考えるらしい。でも、それでも平和を願った聖人も世の中にいることを忘れてはいけない。

「骨肉の争い」

「骨肉の争い」は、「血が繋がっている者同士での争い」のこと。「骨肉」が「血」と同じように「血縁者」を意味しています。

こちらは「やり返す」という意味は持っていませんが、それでも「骨や肉」を斬り合うような争いだとしたら、とても激しく痛みを伴うものだと想像できますね。

・彼女の家系ではいつも資産を巡って骨肉の争いが繰り広げられたと聞いて、自分とは考え方が違い過ぎて、僕はあまりに驚いた。

「血で血を洗う」の対義語は?

「血で血を洗う」の対義語は「仇(あだ)を恩で報いる」が考えられます。

「仇を恩で報いる」

「仇を恩で報いる」は、「恨むべき相手に逆に情けをかけてあげること」。

ひどいことをしてきた相手に優しくすることができたら、「血で血を洗う」ような争いには発展しないはず。現実的にはとても難しく思えても、そうできたらと考えることは大切かもしれませんね。

・最近新しい仕事に就いたのだが、雇ってくれたのは過去クビにしたスタッフで、仇を恩で報われる結果となり、感謝が絶えない。

\次のページで「「血で血を洗う」の英訳は?」を解説!/

「血で血を洗う」の英訳は?

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「血で血を洗う」の英語訳は「bloody feud」「family discord」で表すことができます。それぞれ意味が異なりますので、確認してください。

「bloody feud」「family discord」

直訳すると、「bloody feud」は「血で染まるような激しい争い、確執」。「feud」はやや難しい単語ですが、特に長期にわたる争いを意味します。「やり返す」というニュアンスは弱めですが、ドロドロと「長引いている」ことが伝えられるでしょう。

「family discord」は「肉親間の争い」。「血で血を洗う」のもう一つの意味を表現したい場合にはこちらを使いましょう。

・I have a pain in bloody feud on the battlefield.
私は戦地での血で血を洗う争いに胸を痛めている。

・He will be involved in a family discord one day.
彼もいつか家族間の血で血を洗う争いに巻き込まれるだろう。

「血で血を洗う」を使いこなそう

この記事では「血で血を洗う」の意味・使い方・類語などを説明しました。

字面からもわかるとおり、ドロドロとした辛い言葉でした。解説通り二つの意味がありますが、他人の間か親族の間かの違いしかなく、「ひどい争い」という意味に焦点が強く当たっているようです。

由来にはなかった「親族間の争い」という意味が生まれたのは、肉親だからこそ、そのような辛い争いが発生しやすいからなのかもしれません。意味が生まれた背景を想像すると、人の歴史は争いの歴史だったのかも、などと思わされてしまいます。

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【慣用句】「血で血を洗う」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「血で血を洗う」について解説する。

端的に言えば「血で血を洗う」の意味は「争いに争いで応えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「血で血を洗う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「血で血を洗う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「血で血を洗う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「血で血を洗う」の意味は?

「血で血を洗う」には、次のような意味があります。

《「旧唐書」源休伝から》
1 殺傷に対して、殺傷で応じる。「―・う抗争」
2 血のつながっている者どうしが争う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「血で血を洗う」

この言葉は「暴力には暴力、悪いことには悪いことで応える」という意味の慣用表現です。「血を、更に血で」と、繰り返す・やり返すという意味合いが含まれています。

血が繋がっている者たちで争う」意味で使うこともでき、その場合、色々な思惑が入り乱れた、ドロドロした戦いが繰り広げられていることまで想像できるでしょう。

「復讐は何も生まない」などと言ったりもしますが、やり返すことによってまたやり返しを呼ぶ、終わりのない苦しい戦いを連想させる表現です。戦いと言っても正々堂々ではなく、ネガティブな意味合いが強い言葉と覚えておきましょう。

「血で血を洗う」の語源は?

次に「血で血を洗う」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の歴史書『旧唐書(くとうじょ)』に見ることができます。

「吾(われ)また汝を殺さば、猶(なお)血を以て血を洗うがごとく」という記述があり、叔父を殺された王様が、自分が相手を殺せば「血で血を洗う(ようなひどい)」ことになってしまう、と述べているのです。

由来の時点で、殺害に対して殺害をする「報復」という意味で使われていたことがわかりますね。「血族間での争い」という意味はありませんでしたが、「血」という言葉のイメージから「血族・血統」というニュアンスで、意味が拡大されたのかもしれません。

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