今日のテーマは「減数分裂」なのですが、この言葉を聞いたことのある人はどれくらいいるでしょうか?雄と雌がある生き物が繁殖するには、精子や卵などの配偶子と呼ばれる生殖細胞が必要になるよな。この配偶子をつくるために行われている分裂が減数分裂です。なぜ減数分裂を行うのか、そしてどのようなメリットがあるのか?

今回は減数分裂について、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系の大学院を卒業後、医学部の研究室で実験助手をしている。毎日のように遺伝子解析をしているため、分子生物学に関する知識が豊富。

はじめに

image by iStockphoto

地球上に初めて生命が誕生したのはおよそ35億年前。当時の地球にはラン藻という植物があちこちに生えていました。時が流れ、次に出現した生き物は単細胞生物です。単細胞生物は分裂といって、雌雄がそろわなくても繁殖できるため(無性生殖)、分裂を繰り返しどんどん増えていきました。

しかし、地球の環境は複雑に変化しているため単細胞生物も絶滅と繁栄を繰り返していたんです。次に登場したのが多細胞生物。多細胞生物は雌雄が揃わないと繁殖できませんが、雄と雌の特徴を半分ずつ引き継げるため、一気にいろいろな種類の生き物が誕生しました。彼らはより環境変化に耐えるために複雑に交配し、種を残してきたのです。このように雄と雌を必要とする生殖を有性生殖と言います。

今回はこの有性生殖をするために行われている減数分裂にスポットを当てて解説していきますね。

減数分裂とは

細胞分裂という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。細胞分裂とは、書いて字のごとく1つの細胞が2つに分かれることです。2つに分かれるときに細胞の中身まで半分になるわけではなく、もとの細胞と全く同じものができるように調整されながら分裂します。

しかし、減数分裂は少し違うのです。有性生殖では父親からの精子と母親の卵が受精し1つの受精卵になります。このとき2つの細胞が合体して1つの細胞に成るため、普通に細胞が合体してしまうと細胞内の器官も数が2倍になってしまいますよね。特に染色体のような遺伝子が含まれている組織が2倍になってしまうと、生き物は生きていけないんです。

\次のページで「減数分裂と体細胞分裂の違い」を解説!/

減数分裂と体細胞分裂の違い

image by iStockphoto

体細胞分裂とは体細胞が行っている分裂のことです。体細胞とは生殖細胞以外で、私達の体を作っている細胞になります。一方、減数分裂は生殖細胞を作るために行う分裂です。体細胞分裂との最も大きな違いは、分裂後の細胞にある染色体の数でしょう。では、体細胞分裂と減数分裂の分裂過程と一緒に解説します。

体細胞分裂の進み方

体細胞分裂が行われる時、アルファベットのIの形をしていた染色体は複製され、複製された染色体がくっついた状態で細胞の赤道面に整列します。染色体には動原体と言って元の染色体と複製された染色体がくっつける部分があるのですが、動原体はしばしば染色体の真ん中にあるため、染色体はXの形になるそうです。その後、染色体は紡錘糸により細胞の両側へ引っ張られるように切り離され、染色体が無事に移動した後に細胞質にくびれができて分裂が完了します。結果的に元のIの形の染色体をもつ細胞が2つできることになるのです。複製されたDNAは2つの細胞に引き継がれ、もとの細胞と全く同じ細胞が出来上がります。もちろん、染色体の数も分裂前と同じです。

出来上がった2つの細胞は姉妹細胞と呼ばれます。また、分裂前の細胞と分裂後の細胞は母細胞と娘細胞と呼ぶんですよ。

減数分裂の進み方

image by iStockphoto

減数分裂では2回の分裂が行われます。最初の分裂では体細胞分裂のときと同じように染色体が複製されるのですが、複製されてXの形になった染色体は相同染色体同士で結合するのです。この染色体を二価染色体と呼び、このときに乗り換えが起こるため、母由来の染色体と父由来の染色体は部分的に組み換えられます。続いて、それぞれの相同染色体は分離して別々の細胞へ入り、最初の分裂が終わるのです。

次に2回めの分裂が行われます。体細胞分裂は分裂する前に染色体が複製されていましたが、第2減数分裂では染色体は複製されません。先程の相同染色体はI字の染色体として引き離され、別々の細胞へ入ります。

元々の細胞では形と大きさが同じ染色体が2本あったのですが(相同染色体)、減数分裂によって最終的に出来上がった細胞には相同染色体の片割れしかありません。

多様性のための減数分裂

image by iStockphoto

減数分裂は生物多様性のためにとても重要な分裂です。先程減数分裂は2回の分裂によって行われると説明しましたよね。この最初の分裂のときに組み換えという現象が起きます。組み換えとは相同染色体同士間で起こりますが、相同染色体同士であればどこでもいいとは限りません。組み換えが起こるのは相同な場所のみです。組み換えによって染色体の一部が交換されると、母親由来の染色体と父親由来の染色体が継ぎ接ぎのようになり、組み換えのが行われた場所によって様々な種類のゲノムが完成します。

このようにして真核生物はその生物種を多様性に満ちたものにし、環境が変化してもより生存できるように増殖してきたのです。

\次のページで「減数分裂中のDNAの量」を解説!/

減数分裂中のDNAの量

減数分裂中のDNAの量

image by Study-Z編集部

体細胞分裂と減数分裂の大きな違いとしては、その分裂過程におけるDNAの量があります。細胞分裂を起こす前に染色体が複製されるため、細胞分裂を起こす前(間期)から第一分裂期までDNAの量は通常の2倍になりますよね。そして第2分裂からはDNA量が元通りになります。しかし、第2分裂では染色体が複製されないため、第2分裂が終わるとDNA量はもとの細胞の半分になってしまうのです。

これは受精したときにDNAの量についてつじつまを合わせるためですね。DNA量については第1分裂まで体細胞分裂と同じであることを忘れないようにしましょう。

減数分裂により手に入れた生物多様性をもっと感じてみよう

減数分裂は体細胞分裂と違い、全部で2回行われていること、染色体の数が半分に成ること、組み換えが起こることなどの違いがありました。しかしその結果、母親由来の染色体と父親由来の染色体は複雑に入れ替わることができるため、より多様性に満ちた子孫を残すことができるんですね。

きっとあなたがお父さんやお母さんのみならず、おじいちゃんやおばあちゃん又は他の親戚にもなんとなく似ている部分があるのは減数分裂によりDNAに組み換えが起こったおかげです。改めて家族の中で誰のどういう部分が受け継がれたのか考えてみるのも面白いかもしれません。

" /> 減数分裂とはどのような分裂なのか?その過程と特徴について医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物細胞・生殖・遺伝

減数分裂とはどのような分裂なのか?その過程と特徴について医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説


今日のテーマは「減数分裂」なのですが、この言葉を聞いたことのある人はどれくらいいるでしょうか?雄と雌がある生き物が繁殖するには、精子や卵などの配偶子と呼ばれる生殖細胞が必要になるよな。この配偶子をつくるために行われている分裂が減数分裂です。なぜ減数分裂を行うのか、そしてどのようなメリットがあるのか?

今回は減数分裂について、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系の大学院を卒業後、医学部の研究室で実験助手をしている。毎日のように遺伝子解析をしているため、分子生物学に関する知識が豊富。

はじめに

image by iStockphoto

地球上に初めて生命が誕生したのはおよそ35億年前。当時の地球にはラン藻という植物があちこちに生えていました。時が流れ、次に出現した生き物は単細胞生物です。単細胞生物は分裂といって、雌雄がそろわなくても繁殖できるため(無性生殖)、分裂を繰り返しどんどん増えていきました。

しかし、地球の環境は複雑に変化しているため単細胞生物も絶滅と繁栄を繰り返していたんです。次に登場したのが多細胞生物。多細胞生物は雌雄が揃わないと繁殖できませんが、雄と雌の特徴を半分ずつ引き継げるため、一気にいろいろな種類の生き物が誕生しました。彼らはより環境変化に耐えるために複雑に交配し、種を残してきたのです。このように雄と雌を必要とする生殖を有性生殖と言います。

今回はこの有性生殖をするために行われている減数分裂にスポットを当てて解説していきますね。

減数分裂とは

細胞分裂という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。細胞分裂とは、書いて字のごとく1つの細胞が2つに分かれることです。2つに分かれるときに細胞の中身まで半分になるわけではなく、もとの細胞と全く同じものができるように調整されながら分裂します。

しかし、減数分裂は少し違うのです。有性生殖では父親からの精子と母親の卵が受精し1つの受精卵になります。このとき2つの細胞が合体して1つの細胞に成るため、普通に細胞が合体してしまうと細胞内の器官も数が2倍になってしまいますよね。特に染色体のような遺伝子が含まれている組織が2倍になってしまうと、生き物は生きていけないんです。

\次のページで「減数分裂と体細胞分裂の違い」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: