今回は「火花を散らす」という言葉について見ていきます。この言葉は実際に見聞きしたり使ったことがあったりする人が多いんじゃないですかね。ただ、語源や正確な意味について問われたら、ちゃんと答えられるか怪しい人も多そうです。

「火花を散らす」は、ずばり言えば「双方が激しく争う」という意味です。しかし、争うことと火花にはどんな関連があるんでしょうか?

今回はその「火花を散らす」の意味や語源、使い方などを、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「火花を散らす」の意味と語源は?

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「火花を散らす(ひばなをちらす)」という言葉は、日常生活でも比較的よく使われる言葉ですね。小説やドラマといった物語の中でもよく使われる言葉でもあるでしょう。今回はその「火花を散らす」について、正確な意味や語源、使い方に迫っていきます。

まずは辞書の記述を参考に、「火花を散らす」の意味や語源を確認していきましょう。

「火花を散らす」の意味は「双方が激しく争う」

国語辞典には「火花を散らす」は次のような意味が掲載されています。

互いに刀を打ち合わせて激しく戦う。転じて、双方が激しく争う、
「与野党が論戦に―」

明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆火花を散ら・す」

「火花を散らす」は、現在では「双方が激しく争う」という意味で使用される慣用表現です。例文でも見ていきますが、この「火花を散らす」は、実際の武力を行使した戦いだけでなく、スポーツや商売での戦い等といった比喩的な意味での戦いにも使用することができます

「火花を散らす」の語源は侍の戦い?

この「火花を散らす」の語源は、辞書の記述にもある通り侍や武士の戦いが由来です。刀は鉄でできているため、強くぶつかり合うと火花が散ります。「刀と刀が強くぶつかり火花が散るくらいの激しい戦い」という意味で、「火花を散らす」という言葉は現在に至るまで広く使われるようになりました。

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「火花を散らす」の使い方を例文とともに解説!

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では、「火花を散らす」の使い方を確認していきましょう。まずは例文を提示します。どんな場面で「火花を散らす」が使用できるのか、よくチェックしていきましょう。

1.1904年~1905年にかけて、日露戦争で日本はロシア帝国と火花を散らした
2.今日の阪神対巨人の試合は、両エースが火花を散らす投手戦となり、最後の最後に阪神が控え選手のラッキーな安打と好走塁によって逆転勝利した。
3.トヨタとヒュンダイは、B国市場のシェアを巡って火花を散らしている

例文1は、実際の武力を行使した戦いについて「火花を散らす」が使われている例文です。国と国との戦争や、集団同士の抗争、人と人との喧嘩など、実際の戦いにも「火花を散らす」は使用可能ですね。

例文2は、スポーツで「火花を散らす」が使われた場合の例文ですね。野球のようなスポーツの試合や、チーム内のレギュラー争い等にも、「火花を散らす」は使用されます

例文3は、ある国の市場を巡っての会社同士の争いについて「火花を散らす」が使用された場合の例文です。このような会社同士の争いのように、武力を用いるわけではない戦いにも、「火花を散らす」は使用できます

「火花を散らす」の類義語は?

次に、「火花を散らす」の類義語をご紹介します。「火花を散らす」の類義語は「鎬を削る」「鬩ぎあう」です。難しい漢字が並んでいますが、一度は聞いたことのある言葉ですよ。そして、「鎬を削る」については、「火花を散らす」と同様に侍や武士が由来の言葉です。

「鎬を削る」激しく争う

「鎬を削る(しのぎをけずる)」は「激しく争う」という意味の慣用句です。この「鎬(しのぎ)」は刀の刃の部分と背の部分の境界にある、やや高くなっている部分を指します。この部分が削れてしまうほど激しく戦うことから転じて、現在の「激しく争う」という意味で使用されるようになりました。

なお、「鎬を削る」を用いる場合は、「同じくらいの力の者同士が激しく争う」というニュアンスが出てきます。

\次のページで「「鬩ぎ合う」互いに対立し争う」を解説!/

「鬩ぎ合う」互いに対立し争う

「鬩ぎ合う(せめぎあう)」は「互いに対立して争う」という意味の慣用句です。こちらも「鎬を削る」と同様に「同じくらいの力の者同士が争う」というニュアンスが出てきます。「鬩ぎ」を「責めぎ」と書く人がいますが、こちらは誤りなので気をつけましょう。

「火花を散らす」の英語表現は?

続いて、「火花を散らす」の英語表現をご紹介します。実は「火花を散らす」は、英語でも「spark(火花)」という単語を使った表現になるのです。例文も合わせて確認していきましょう。

「throw sparks」

「throw sparks」は直訳では「火花を噴出する」となり、「火花を散らす」という意味を表す英語表現です。「火花を散らす」は侍や武士が刀を激しくぶつけて戦うことから生まれた日本発祥の慣用句ですが、文化が違う英語圏でも同じ「spark(火花)」という単語を使うのは驚きですね。

例文を確認していきましょう。

1.The U.S. and the Soviet Union threw sparks off in a struggle for world hegemony. アメリカとソ連は世界の覇権をめぐって火花を散らした
2.Ms. Kate and Mr. Smith threw sparks off in divorce court. ケイトさんとスミスさんは離婚裁判で火花を散らした

他にもある侍や武士が語源の日本語

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今回ご紹介した「火花を散らす」は侍や武士を語源とした言葉でしたが、実は日本語には他にも侍や武士を語源とした言葉がたくさんあります。ここでは、その一部をご紹介していきましょう。

「土壇場」物事の切羽詰まった場面

「土壇場(どたんば)」は「物事の決断を迫られる最後の場面」「物事が最終局面を迎えた状態」という意味の表現です。この「土壇場」は漢字の通り、土で作った壇のある場所のことをさします。この土で作った壇は、武士が罪人の身体を使って刀の試し斬りを行ったり、罪人の首をはねるために使われていました。そこから、物事が最終局面を迎えた状態を「土壇場」と表現するようになったと考えられています。

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「七つ道具」ある仕事に必要な一式の道具

「七つ道具」は「ある仕事をするのに必要な一式の道具」という意味の慣用句です。この一式の道具は7種類でなくても使用できます。例えば、6種類でも8種類でも問題ありません。「外科医の七つ道具」「野球選手の七つ道具」のように使用しますね。

この「七つ道具」は、元々は武士が戦で身に付けた7つの大切な道具を意味していました。その七つとは具足、鎧、刀、太刀、弓、矢、母衣、兜のことです。いつしか武士が用いる道具以外の意味でも使用するようになり、現在に至ります。

刀が激しくぶつかり散った火花「火花を散らす」

今回は「火花を散らす」についてご紹介しました。「火花を散らす」は「双方が激しく争う」という意味で使用される慣用表現で、「刀と刀が強くぶつかり火花が散るくらいの激しい戦い」という意味が大元でした。侍や武士の戦いを元にした言葉ですが、スポーツや企業間の競争のような、比喩的に「戦う」場合も「火花を散らす」は利用可能です。

実際に武力を行使して「火花を散らす」ことがなくなり、スポーツなどで「火花を散らす」だけの平和な世界になってほしいですね。

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国語言葉の意味

語源は侍の戦い?「火花を散らす」の意味や語源、使い方を院卒日本語教師がわかりやすく解説

今回は「火花を散らす」という言葉について見ていきます。この言葉は実際に見聞きしたり使ったことがあったりする人が多いんじゃないですかね。ただ、語源や正確な意味について問われたら、ちゃんと答えられるか怪しい人も多そうです。

「火花を散らす」は、ずばり言えば「双方が激しく争う」という意味です。しかし、争うことと火花にはどんな関連があるんでしょうか?

今回はその「火花を散らす」の意味や語源、使い方などを、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「火花を散らす」の意味と語源は?

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「火花を散らす(ひばなをちらす)」という言葉は、日常生活でも比較的よく使われる言葉ですね。小説やドラマといった物語の中でもよく使われる言葉でもあるでしょう。今回はその「火花を散らす」について、正確な意味や語源、使い方に迫っていきます。

まずは辞書の記述を参考に、「火花を散らす」の意味や語源を確認していきましょう。

「火花を散らす」の意味は「双方が激しく争う」

国語辞典には「火花を散らす」は次のような意味が掲載されています。

互いに刀を打ち合わせて激しく戦う。転じて、双方が激しく争う、
「与野党が論戦に―」

明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆火花を散ら・す」

「火花を散らす」は、現在では「双方が激しく争う」という意味で使用される慣用表現です。例文でも見ていきますが、この「火花を散らす」は、実際の武力を行使した戦いだけでなく、スポーツや商売での戦い等といった比喩的な意味での戦いにも使用することができます

「火花を散らす」の語源は侍の戦い?

この「火花を散らす」の語源は、辞書の記述にもある通り侍や武士の戦いが由来です。刀は鉄でできているため、強くぶつかり合うと火花が散ります。「刀と刀が強くぶつかり火花が散るくらいの激しい戦い」という意味で、「火花を散らす」という言葉は現在に至るまで広く使われるようになりました。

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