この記事では「血も涙もない」について解説する。

端的に言えば「血も涙もない」の意味は「思いやりのかけらもないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「血も涙もない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。大学生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で、慣用句を分かりやすく解説していく。

「血も涙もない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「血も涙もない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「血も涙もない」の意味は?

「血も涙もない」には、次のような意味があります。

全く人情味がない。冷酷そのものである。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「血も涙もない」

「血も涙もない」という言葉をそのまま解釈するならば「血」と「涙」が無いということになります。この場合、「血」と「涙」はそれぞれ何を表しているのかということが意味を解釈する上での重要なポイントです。人間が怒ったり、情熱的になるときには血が体中を駆け巡って体温が高くなりますね。そのようなイメージをここでは「血」に置き換えてみてください。

反対に、悲しいときや感動した時に人間は涙を流しますね。その瞬間の感極まるイメージをここではそのまま「涙」に置き換えます。以上のことから、「血」と「涙」はそれぞれ喜怒哀楽の感情が高まっている時のイメージを表していると考えることが出来ますね。

「血も涙もない」はその「血」も「涙」も無いということですから、喜ぶこと・怒ること・哀しむこと・楽しむことがない、無の状態を表現する慣用句だと言うことが出来ます。

しかしここで注意しなくてはならないのは無の状態を表現するとは言えど、何も考えていない「虚無」の状態とは違うということです。人間が「虚無」の状態になるときとは、何も考えたくないときや行動したくないときに身も心も空虚になるときであり、基本的に一人で陥る状況を表します。しかし今回の「血も涙もない」が表す無の状態とは、自分が接する相手に対してひどい行動だと分かっていながらも感情を出さずに命令したり危害を加えることです。つまりこの場合の無の状態とは、相手がいて初めて成り立つ状況のことだということが出来るでしょう。

「血も涙もない」の使い方・例文

「血も涙もない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「血も涙もない」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.犬や猫に暴力をふるう血も涙もない事件が相次いで起こった。
2.この時間から過重労働を強いるなんて、血も涙もない経営者だ。
3.血も涙もない同級生たちは、いじめを見て見ぬふりをした。

このように、「血も涙もない」とは主に強い立場にいる人が弱い立場の人や動物に対して行う思いやりのない行動を表すときに使います。

犬や猫は話すことが出来ないので抵抗手段が少なく人間よりも弱い立場になりますし、経営者に対する部下社員も社会的立場では弱い存在ですね。このような弱い立場の人や動物に対して強い立場の人が思いやりのない行動をすると、冷酷さが際立ちます。弱い立場の人や動物に対しては、感情を高めることをしなくても抵抗される可能性が低いため、感情が無の状態で思いやりのない行動をすることが出来るからだと考えることが出来るでしょう。

また、例文の3のように同じ立場の人間に対する行動にも見られることがあります。同級生という同じ立場の間でも、自分も同じ立場になりたくないと相手を見下すことで「血も涙もない」行動を起こしてしまうものです。この場合は、感情を高めて助けることよりも無感情でいられる安全の道を選んだ同級生たちの行動を指します。

「血も涙もない」の類義語は?違いは?

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これまでは、「血も涙もない」の意味や具体的な使い方を解説してきました。

ここで、「血も涙もない」の類語と、その使い分けをご紹介しましょう。

「残酷極まりない」

皆さんの中では「残酷極まりない」という方が、インパクトが強くイメージしやすいかもしれません。「残酷」はその他にも「極悪」や「非道」などに言い換えられますが、どれもマイナスのイメージを連想する言葉ばかりですね。

基本的に「血も涙もない」と「残酷極まりない」は同じ意味として用いられますが、表す行動の程度によって使い分けることが好ましいです。思いやりのない行動に対して優劣をつけるということは難しいことですが、例えば無数の刺し傷がある遺体が見つかった殺人現場を想像してみてください。必要以上に刺し傷を与えて殺人を犯した犯人に対して使う言葉は「残酷極まりない」ですが、その遺体を興味本位で撮影してSNSに投稿する人を評する言葉は「血も涙もない」です。

このことから、「血も涙もない」と「残酷極まりない」は同じ思いやりの欠けた行動を指す類語ですが、状況に応じて使い分けることが必要だと分かりますね。

「血も涙もない」の対義語は?

「血も涙もない」とは、喜怒哀楽の感情を無くして思いやりのない行動をすることでしたね。それではその反対の意味を表す対義語を見ていきましょう。

\次のページで「「血も涙もある」「情に厚い」「人情味のある」」を解説!/

「血も涙もある」「情に厚い」「人情味のある」

「血も涙もない」とは、すでに解説したように「血」と「涙」がない喜怒哀楽の感情が無の状態の事でしたね。なので、「血も涙もない」の対義語はそのまま「血」と「涙」がある状態、つまり「血も涙もある」ということになります。

「血も涙もある」とは血の通った人間味のある行動や、思いやりのある事を指しますが、「血も涙もない」よりは日常的に使うことが少ないでしょう。なので「血も涙もある」よりは、「情に厚い」「人情味のある」などを使う方が無難です。

「情に厚い」や「人情味のある」という言葉にはどちらにも「情」という単語が用いられていますね。「情け」は相手をいたわる気持ちを表現する言葉なので、「情に厚い」や「人情味のある」という言葉は無感情の「血も涙もない」という言葉とは対照的であることが分かります。

「温厚篤実」

「温厚篤実」は、(おんこうとくじつ)と読みます。

前述の「情に厚い」や「人情味のある」という対義語は形容詞ですが、「血も涙もない」の対義語をことわざで表すと、「温厚篤実」です。

「温厚篤実」は、見た目の通り「温厚」と「篤実」という二つの単語が合わさって出来た言葉だと皆さんも予想することが出来ると思います。では、由来となった二つの単語の意味を見ていきましょう。

「温厚」は言うまでもなく、穏やかで広い心の性質を指す言葉。一方であまり馴染みのない「篤実」は誠実で情け深いことを表す言葉です。このことから、「温厚篤実」はこの二つの単語の意味を合わせた、穏やかな心を持った誠実で優しい人の性質を表現する言葉だということが分かりますね。

「血も涙もない」を使いこなそう

この記事では「血も涙もない」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「血も涙もない」とは、「血」や「涙」などの人間の感情に関与することを表現する言葉でした。人間は、どんなに努力をしても一人で生きていくことは出来ません。現代では人工知能の開発が進み様々な仕事がAIに代替可能とされていますが、支え合うということは人間の生きる意義であり、特権です。このような人間本来の能力である思いやりや優しさは喜怒哀楽の感情に直結します。思いやりからくる怒りもあれば、優しさからくる悲しみもあるものです。人工知能に教養で勝つことは難しいかもしれませんが、無生物である人工知能に生命を持つ人間が感情という部分で劣るはずがありません。

「血も涙もない」という慣用句の言葉の意味を深く理解して知識に入れることによって、自分の行動を見つめ直す機会にもなりますね。

皆さんも、「血も涙もない」を使いこなすと同時に自分の行動を見つめ直してみましょう。一人一人が喜怒哀楽の感情表現豊かな行動を心がけることで、この世の中の見方が変容しますよ。

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【慣用句】「血も涙もない」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「血も涙もない」について解説する。

端的に言えば「血も涙もない」の意味は「思いやりのかけらもないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「血も涙もない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。大学生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で、慣用句を分かりやすく解説していく。

「血も涙もない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「血も涙もない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「血も涙もない」の意味は?

「血も涙もない」には、次のような意味があります。

全く人情味がない。冷酷そのものである。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「血も涙もない」

「血も涙もない」という言葉をそのまま解釈するならば「血」と「涙」が無いということになります。この場合、「血」と「涙」はそれぞれ何を表しているのかということが意味を解釈する上での重要なポイントです。人間が怒ったり、情熱的になるときには血が体中を駆け巡って体温が高くなりますね。そのようなイメージをここでは「血」に置き換えてみてください。

反対に、悲しいときや感動した時に人間は涙を流しますね。その瞬間の感極まるイメージをここではそのまま「涙」に置き換えます。以上のことから、「血」と「涙」はそれぞれ喜怒哀楽の感情が高まっている時のイメージを表していると考えることが出来ますね。

「血も涙もない」はその「血」も「涙」も無いということですから、喜ぶこと・怒ること・哀しむこと・楽しむことがない、無の状態を表現する慣用句だと言うことが出来ます。

しかしここで注意しなくてはならないのは無の状態を表現するとは言えど、何も考えていない「虚無」の状態とは違うということです。人間が「虚無」の状態になるときとは、何も考えたくないときや行動したくないときに身も心も空虚になるときであり、基本的に一人で陥る状況を表します。しかし今回の「血も涙もない」が表す無の状態とは、自分が接する相手に対してひどい行動だと分かっていながらも感情を出さずに命令したり危害を加えることです。つまりこの場合の無の状態とは、相手がいて初めて成り立つ状況のことだということが出来るでしょう。

「血も涙もない」の使い方・例文

「血も涙もない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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