化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単化学変化と熱!物質が変化する時に必ず伴う熱の出入りについて元研究員がわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。物質が化学反応する時に、熱の出入りを伴う事を知っているか?

化学反応式を書くときには省略されてしまうが、実は化学結合を切り離すときにはエネルギーが必要になるため周りから熱を奪い、逆に化学結合する時にはエネルギーを放出するため発熱するんだ。

今回は化学反応に伴う熱の出入りについて、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.化学反応と熱

image by iStockphoto

皆さんは冬場に使い捨てかいろを使ったことがありますか?使い捨てかいろの中には鉄の粉が入っています。その鉄が空気中の酸素と結びついて酸化鉄に変化する時に発生する熱を利用しているのです。

外に置いてある自転車などの金属部分が酸化してさびができる反応と同じなのですが、酸化物であるさびを触って熱いと感じたことはないでしょう。これは酸化がとてもゆっくりと進行するため、熱を放出していることが分かりにくいためなのです。

実は中学校の理科の授業で学んでいるのですが、このように化学反応には熱の出入りが伴い熱を放出する(熱くなる)反応を発熱反応外部から熱を吸収する(冷たくなる)反応を吸熱反応と呼びます。

1-1.熱量の単位

熱量の単位は kJ(キロジュール)です。消費エネルギーの単位としてよくつかわれる cal(カロリー)の方がなじみがあるかもしれません。

ジュールとカロリーは同じエネルギーの単位なので、1 J は 0.239 cal と変換することができます。

1-2.熱化学方程式とエンタルピー変化

高校化学では 2020 年から化学エネルギーの差について、熱化学方程式ではなくエンタルピー変化で教えることになったそうです。エンタルピーというのは圧力一定の時のエネルギーのことで、熱化学方程式と反対エンタルピーがマイナスならその反応は発熱反応で、エンタルピーがプラスならその反応は吸熱反応になります。

エネルギーが高い所から低い所へ下がる反応は発熱反応で、エネルギーが低い所から高い所へ上がる反応が吸熱反応なのですが、熱化学方程式では「反応前物質 = 反応後生成物 + 反応熱」と表すため、発熱反応はプラスのエネルギーとしていました。しかし、実際はエネルギーが高い所から低い所へ下がるので、マイナスのエネルギーとしたほうが自然なのです。

同じように吸熱反応は熱化学方程式では「反応前物質 = 反応後生成物 - 反応熱」とマイナスのエネルギーとして表していました。しかしもうお分かりのように、実際はエネルギーが低い所から高い所へ上がるためプラスのエネルギーと考えたほうが自然です。

熱化学方程式は日本の高校化学ならではの教え方で、大学や海外ではエンタルピー変化で学びます。このため今回はどちらで学んだ方もお分かりいただけるように、エネルギー図を用いて化学変化と熱について解説していきましょう。

1-3.様々な反応熱

エネルギーの出入りは、化学反応に限らず気化や融解などの物理変化でも伴い、その全般を反応熱と言います。ここでは反応熱の種類について解説していきましょう。

A. 燃焼熱 完全燃焼するときに要するエネルギー

B. 生成熱 成分元素の単体から生成するときに要するエネルギー

C. 気化熱 液体が気化するときに要するエネルギー

D. 融解熱 固体が融解するときに要するエネルギー

E. 中和熱 酸と塩基が中和するときに要するエネルギー

F. 昇華熱 固体が液体を経ず気体に変化するとき気体が液体を経ず固体に変化するとき)に要するエネルギー

このように状態変化によってもエネルギーの差が生じるという事は、化学反応とエネルギーについて考える時は、物質の状態固体なのか液体なのか気体なのかということも、明確にしておかなければならないという事になります。

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物質が化学反応や物理変化をする時には熱の出入りを伴うんだな。化学実験の時にアルコールランプやバーナーで加熱したり、流水で冷却したり細かく温度を調節するのは、化学反応や物理変化を進めるために行っていたんだな。

2.ヘスの法則とエネルギー図

エネルギー図というのは、それぞれの物質が持つエネルギーの大きさの関係を図にしたものです。この図を書くと化学変化に伴う熱の出入りについて知る事ができます。

エネルギー図を書く前に、反応熱について研究していた化学者ヘスが発表した、熱化学の法則について解説しましょう。

2-1.ヘスの法則

ヘスの法則とは化学反応におけるエンタルピー変化は、反応経路によらず一定であるということを示した熱化学の法則です。

詳しく言うと、いくつかのステップからなる反応がある時、その総熱量は各ステップのエンタルピー変化の総和に等しく、どのような経路を取ったかは無関係であるという事になります。

つまり物質 A が B に変化する反応熱は、物質 A の生成熱と物質 B の生成熱から決定できるということです。

2-2.エネルギー図の書き方

2-2.エネルギー図の書き方

image by Study-Z編集部

エネルギー図は、エネルギーが大きい物質を上に、エネルギーが小さい物質を下に書きます。でも、持っているエネルギーが大きいか小さいかどうやって判断したらいいのかわかりませんよね。

物質はエネルギーが低いほうが安定していると覚えましょう。では状態変化で考えたとき固体・液体・気体のどれがエネルギーが大きいでしょう?

気体は粒子が空間を熱エネルギーによってビュンビュン飛び回っているのでエネルギーが大きいです。反対に、固体は粒子が引き合う力によってほとんど動けない状態なのでエネルギーが小さいといえます。そしてイオン・原子・単体・化合物・完全燃焼した物質・水和物の順でエネルギーが小さくなるのです。

2-3.反応熱とエネルギー図

では反応熱の問題について、エネルギー図を書いて考えてみましょう。

\次のページで「化学変化と物理変化には熱の出入りが必ず伴う」を解説!/

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