共有結合した原子どうしは共有している電子対を引っ張り合っているって知っているか?

引っ張り合った結果、偏りがなかったり偏りをすべて打ち消し合ったのが無極性分子になり、分子全体に偏りがあるものが極性分子となるんです。

今回は化学結合の基礎と無極性分子について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に丁寧に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.4 種類の化学結合

image by iStockphoto

物質を構成する複数の原子同士が、互いの価電子(電子殻のいちばん外側を回っている電子)を用いて結合する事を化学結合と呼びます。

無極性分子について理解するために、まず分子内の原子同士を結び付けている 4 種類の化学結合について説明していきましょう。

1-1.金属原子同士の結合である金属結合

金属原子同士の結合金属結合です。金属結合の価電子は電子殻を伝わって金属全体を自由に動き回ることができ、これを自由電子と呼ぶびます。

この自由電子があるため、金属結合による金属結晶は電気や熱を通しやすく、展性(細長く伸ばすことができる性質)や延性(薄く広げることができる性質)に富むのです。

1-2.金属原子と非金属原子の結合であるイオン結合

金属原子と非金属原子の結合イオン結合です。金属原子の価電子は電気陰性度の大きい非金属原子に引っ張られ陽イオンに、非金属原子は陰イオンになります。

そして陽イオンと陰イオンの間で静電気的な引力(クーロン力)が働き結合するのです。

1-3.金属原子でない者同士の結合である共有結合

非金属原子同士の結合共有結合です。お互いに足りない部分の価電子を共有(シェア)することで、分子として希ガスと同じ安定した電子配置になろうとします。同じ原子同士(例えば酸素原子同士)が結合して共有結合を作ることも、異なる原子同士(例えば炭素と酸素)が共有結合をすることもあるのです。

共有結合には共有電子対(原子 2 つで共有している電子 2 個) 2 組で結びついた二重結合や、共有電子対 3 組で結びついた三重結合もあるので覚えておきましょう。

1-4.共有結合の特殊な形である配位結合

金属イオンや水素イオンのように価電子をもたないイオンが、非共有電子対にくっつき電子対を共有する結合配位結合です。

お互いに共有しようとして電子を出し合った共有結合と違って、余っている電子対を見つけて「余っているなら共有させてよ」と勝手にくっついたのが配位結合になります。くっついたら電子対を共有していることに変わりなく共有結合と区別がつかなくなるため、共有結合の特殊な形とされているのです。

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2.無極性分子とは何か

共有結合した原子同士は、お互いに共有している電子対を引っ張り合いながらくっついています。

原子が自分の方に電子対を引っ張る強さを表した数値電気陰性度というのです。電気陰性度は周期表において左下の元素ほど小さく、希ガスを除いて右上の元素ほど大きくなります。

2-1.電気陰性度と極性

2-1.電気陰性度と極性

image by Study-Z編集部

水素分子のように同じ種類の原子が共有結合すると、電気陰性度が同じなので、共有している電子対は同じ力で引っ張られるため偏りは生じません。

ところが、塩化水素のように電気陰性度が異なる原子同士が共有結合する場合、共有している電子対は電気陰性度が大きい原子の方に強く引っ張られるため、電気陰性度が大きい原子の方に少しだけ寄ります。すると電気陰性度が大きい原子が電子によって少しだけマイナスに帯電し、他方の原子が少しだけプラスの電荷を帯びるのです。

このように共有している電子対が片方の原子に寄った状態のことを極性があるといいます。

2-2.無極性分子とは何か

先ほども触れましたが、電気陰性度が同じ原子による水素分子は結合に極性がありません。さらに分子としても電荷の偏りがなく極性がありません。このように分子として極性がないもの無極性分子と言います。同じ原子からなる分子以外にも、電気陰性度が異なる原子いくつかで構成されていて、結合の極性を全体で打ち消し合った結果無極性分子になるものもあるのです。

二酸化炭素を例にとりましょう。二酸化炭素は電気陰性度が 2.5 の C(炭素原子)1 つを電気陰性度が 3.5 の O(酸素原子)2 つが両側から挟むようにして直線形に結合しています。炭素原子と酸素原子で電気陰性度を比べると酸素原子の方が大きいので共有電子対は酸素の方に引っ張られるのです。

真ん中に位置する炭素原子より両サイドの酸素原子側に同じ力で引っ張られているため、共有電子対は酸素原子の方に寄っていて極性があります。しかし分子全体としては、わかりやすくすると右側と左側に同じ力で引っ張られているため打ち消し合い極性がない無極性分子です。

2-3.極性分子と分子の形

2-3.極性分子と分子の形

image by Study-Z編集部

一方、電気陰性度の異なる原子 2 つで構成された分子は結合に極性があり、分子全体としても極性があります。このような分子を極性分子というのです。さらに、水分子のように分子の形が直線形ではなく折れ線形の分子は、二酸化炭素のように引っ張る力が打ち消し合わないので極性分子になります。

分子の形を知りたい時、少し難しいですが電子対がいくつあるかを調べましょう。電子対同士は反発して立体的に一番遠い位置にいようとするので、電子対が 4 つある時には正四面体の頂点にいようとするのです。水分子は水素原子 1 つと酸素原子 2 つで共有している電子対が 2 組と非共有電子対が 2 組あり、それらを正四面体の頂点に配置することで分子の形が折れ線形だとわかります。

次にアンモニア分子は窒素原子 1 つと水素原子 3 つからなりますが、共有している電子対が 3 組と非共有電子対が 1 組あるので、それらを正四面体の頂点に配置すると分子の形が三角錐形とわかるのです。となるとアンモニアは極性分子と無極性分子のどちらだと思いますか?アンモニアは窒素側に偏る極性分子になります。

無極性分子は「結合に極性がない分子」と「結合の極性を打ち消し合った分子」の 2 種類がある

共有結合非金属原子同士の結合で、互いに足りない部分の価電子を共有することで安定しています。

共有結合した原子同士は共有している電子対を引っ張り合いながら結合していて、その電子対電気陰性度が大きいほうが強く引っ張り片方の原子に寄った(極性がある)状態になるのです。

電気陰性度が同じ原子同士による共有結合には極性がありません。さらに分子としても電荷の偏りがなく極性がありません。このように分子として極性がないもの無極性分子といいます。同じ原子からなる分子以外にも、電気陰性度が異なる原子いくつかで構成されていて、結合の極性を全体で打ち消し合った結果、無極性分子になるものもあるのです。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単無極性分子!共有している電子対が片方の原子に寄るってどういうこと?元研究員がわかりやすく解説

共有結合した原子どうしは共有している電子対を引っ張り合っているって知っているか?

引っ張り合った結果、偏りがなかったり偏りをすべて打ち消し合ったのが無極性分子になり、分子全体に偏りがあるものが極性分子となるんです。

今回は化学結合の基礎と無極性分子について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に丁寧に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.4 種類の化学結合

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物質を構成する複数の原子同士が、互いの価電子(電子殻のいちばん外側を回っている電子)を用いて結合する事を化学結合と呼びます。

無極性分子について理解するために、まず分子内の原子同士を結び付けている 4 種類の化学結合について説明していきましょう。

1-1.金属原子同士の結合である金属結合

金属原子同士の結合金属結合です。金属結合の価電子は電子殻を伝わって金属全体を自由に動き回ることができ、これを自由電子と呼ぶびます。

この自由電子があるため、金属結合による金属結晶は電気や熱を通しやすく、展性(細長く伸ばすことができる性質)や延性(薄く広げることができる性質)に富むのです。

1-2.金属原子と非金属原子の結合であるイオン結合

金属原子と非金属原子の結合イオン結合です。金属原子の価電子は電気陰性度の大きい非金属原子に引っ張られ陽イオンに、非金属原子は陰イオンになります。

そして陽イオンと陰イオンの間で静電気的な引力(クーロン力)が働き結合するのです。

1-3.金属原子でない者同士の結合である共有結合

非金属原子同士の結合共有結合です。お互いに足りない部分の価電子を共有(シェア)することで、分子として希ガスと同じ安定した電子配置になろうとします。同じ原子同士(例えば酸素原子同士)が結合して共有結合を作ることも、異なる原子同士(例えば炭素と酸素)が共有結合をすることもあるのです。

共有結合には共有電子対(原子 2 つで共有している電子 2 個) 2 組で結びついた二重結合や、共有電子対 3 組で結びついた三重結合もあるので覚えておきましょう。

1-4.共有結合の特殊な形である配位結合

金属イオンや水素イオンのように価電子をもたないイオンが、非共有電子対にくっつき電子対を共有する結合配位結合です。

お互いに共有しようとして電子を出し合った共有結合と違って、余っている電子対を見つけて「余っているなら共有させてよ」と勝手にくっついたのが配位結合になります。くっついたら電子対を共有していることに変わりなく共有結合と区別がつかなくなるため、共有結合の特殊な形とされているのです。

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