
3分で簡単にわかる飽和蒸気圧!気体になる量と液体になる量が等しくなる?元研究員がわかりやすく解説
今回は物質の状態変化から、飽和蒸気圧という用語と状態図の見方について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.物質は状態変化する

image by iStockphoto
飽和蒸気圧について学ぶ前に、物質の状態変化について頭の中でイメージできるように解説していきましょう。
物質の状態には固体・液体・気体があり、温度や圧力が変わると液体になったり気体になったり固体になったりするのです。水は温度によって氷になったり水蒸気になったりしますよね。このように状態が変化する事を、そのままですが状態変化と呼びます。
こちらの記事もおすすめ

3分で簡単「水溶液の性質」水溶液の見分け方をチェック!元塾講師がわかりやすく解説
1-1.状態変化と熱運動
物質は粒子によって構成されていて、この粒子はお互いに熱運動によってバラバラになろうとしています。しかし、同時に引き付け合う力によって集まろうともしているのです。
物質の状態は粒子が「バラバラになろうとする力」が強いか「集まろうとする力」が強いかによって決まります。
気体は熱運動が激しく粒子は引き付け合う力を振り切ってバラバラに自由に飛び回っている状態です。対して固体は熱運動がごく少なく粒子が引き付け合いほとんど動けません。液体はその中間で、粒子同士が引き付け合って集まっていますが、熱運動により動き回る力も働いています。
こちらの記事もおすすめ

「熱運動」と温度の関係を元塾講師がわかりやすく解説
1-2.状態変化と温度
わたしたちの身近な水を例にとり、状態変化と温度の関係を考えてみましょう。
大気圧下で、水は 0 ℃より低い温度では氷つまり「固体」の状態です。氷を加熱すると 0 ℃で一部が水になり固体から液体に状態変化し始めます。この固体から液体に状態変化する温度を融点と呼ぶので覚えておきましょう。
氷の一部が水になった状態からさらに加熱し続けると、氷がすべて水になり、さらに加熱を続けると 100 ℃ で沸騰して水蒸気になり始めます。この液体から気体に状態変化する温度を沸点と呼ぶのです。一部が液体で一部が気体の状態から、さらに加熱を続けると水はすべて水蒸気になります。
固体から液体へ状態変化している最中、つまり一部が固体で一部が液体の状態の時は、加熱し続けてもその熱量は固体を溶かすのに使われるため温度は融点のままです。全てが液体になってから再び温度が上がり始めます。液体から気体になる時も同様で一部が液体一部が気体の状態の時に加熱し続けても温度は沸点のままで、全て気体になってから再び温度が上がり始めるのです。
こちらの記事もおすすめ

3分で簡単!沸点・融点・凝固点の違いとは?物質の状態変化を元家庭教師がわかりやすく解説
1-3.液体が気体になる気化には2種類ある
これまで水が沸騰して水蒸気になる気化についてお話してきましたが、水は 100 ℃に満たない温度でも気体になります。この現象を「蒸発」といい、洗濯物が乾くのもコップに入れた水を長時間放置すると減ってしまうのも、蒸発が起こっているからです。
蒸発とは液体の表面から気化した分子が空気中に移動するという現象で、沸点より低い温度でも起こります。対して沸騰は沸点近くまで液体の温度が上がることにより、液体の内部で気化が起こり、気泡となって絶え間なく沸き上がる現象です。
こちらの記事もおすすめ

「蒸発・沸騰・気化」この違いって何?気になるワードを元塾講師がわかりやすく解説
2.気液平衡と飽和蒸気圧
物質は温度や圧力によって状態変化するという事がわかったところで、今回のテーマである飽和蒸気圧にだんだん迫っていきたいと思います。
まず1-1.で、液体は粒子同士が引き付け合って集まっているが、熱運動による動き回りもしている状態だという事をお話しました。そして1-3.から、液体の表面からは沸点に達しない温度でも、その一部が蒸発によって気体になっているということがわかりましたね。このことを踏まえて、液体の状態についてもう少し詳しく解説していきましょう。
2-1.液体の表面で起こっていること
液体となっている粒子は熱運動によって動き回っていますが、その激しさは粒子によって違います。熱運動が激しくて、他の粒子と互いに引き付け合う力を上回った粒子は気体になり蒸発するのです。そして熱運動は温度が高いほど活発になるため、温度が高いほうが液体から気体になる粒子が多い事が予想できます。
一方で気体になった粒子も、熱運動により動き回り液体の表面にぶつかることもあるのです。気体となっている粒子は液体の表面にぶつかると跳ね返るものもあれば、液体となっている粒子の引き付け合う力に負けてそのまま液体になってしまう粒子もいます。
つまり液体の表面では目には見えませんが、液体から気体となっている粒子と気体から液体となっている粒子が存在しているのです。
2-2.気液平衡とは何か
ここで体積一定の容器に半分ほど水を入れて密閉した時に、どんな反応が起こるかイメージしてみましょう。
まず、液体の表面から熱運動が激しい粒子が飛び出して気体になります。そして気体中に水の粒子が増えてくると、液体の表面にぶつかり気体から液体になる粒子も増え始めるのです。
一定温度に保ったまま十分な時間放置すると、液体から気体になる粒子と気体から液体になる粒子の数が等しくなり気体から液体への変化も液体から気体への変化もしていないように見える状態になります。この状態を気液平衡と呼ぶのです。
気液平衡の状態になると、それ以上気体になっている状態の粒子の数を増やすことはできません。この上限いっぱいまで満ちている状態のことを飽和状態と呼び、飽和蒸気圧以外でも使われる言葉なので覚えておきましょう。
こちらの記事もおすすめ

3分で簡単気液平衡!現象の仕組みを理系学生ライターがわかりやすく解説!
2-3.飽和蒸気圧とは何か
ある物質について、同じ温度・同じ体積で気液平衡の状態にある時に、気体の状態でいられる粒子の数は決まっています。
ここで理想気体の状態方程式 P V = n R T( P : 圧力 V : 体積 n : モル R : 気体定数 T : 温度 )について思い出しましょう。温度と体積が一定の時、気体の状態でいられるモル数が決まっているという事はその圧力も決まっているという事になります。
この気液平衡の状態の時の気体の圧力を飽和蒸気圧と呼ぶのです。何が飽和しているかというと気体になれる上限まで気体になっているので飽和という言葉がついているのですが、蒸気圧という言葉の中に飽和している状態の圧力という意味が含まれているため、蒸気圧と省略されることも多い事を覚えておきましょう。
\次のページで「3.状態図は何を表している?」を解説!/