この記事では「煮え湯を飲まされる」について解説する。

端的に言えば「煮え湯を飲まされる」の意味は「裏切られて痛い目にあうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「煮え湯を飲まされる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「煮え湯を飲まされる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「煮え湯を飲まされる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「煮え湯を飲まされる」の意味は?

「煮え湯を飲まされる」には、次のような意味があります。

信用していた者に裏切られてひどい目にあう。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「煮え湯を飲まされる」

この言葉は、「自分が信じていた相手に裏切られて、ひどい目にあう」という慣用表現です。「煮え湯」とは熱湯のこと。そんなものを飲まされたら、火傷では済みませんね。受身形でなければ、「煮え湯を飲ませる」という表現で「相手を裏切る」と言うことも出来ます。

ここで注意したいのは「裏切られて」という点。熱湯を飲まされるイメージで、ただ単に「ひどい目にあう」とするのは誤りです。詳しくは使い方の項も確認してみてください。

この誤用については、文化庁のホームページにも掲載されるなど一般的な話題になっています。このように取り上げられるているものは、試験問題として出題されやすいことにも留意が必要です。誤った意味を引っ掛けで選ばせる問題などが予想されます。しっかりと押さえておきましょう。

「煮え湯を飲まされる」の語源は?

次に「煮え湯を飲まされる」の語源を確認しておきましょう。これは明確な由来はなく、言葉のイメージから作られた表現のようです。

「煮え湯」ですから、グラグラと沸き立っているイメージでしょうか。よほど熱い、と表現したかったのでしょう。さらに「飲まされる」と受身形なところにも、被害を受けた感じや、熱さに驚いていることが読み取れます。

このように、あまりに熱く、更に自分ではそうと思っていなかったのに飲まされた=裏切られたというニュアンスになったのでしょう。

日本ではお茶の文化が広く浸透していましたから、「お湯」は熱々のお茶の可能性もあります。もしかすると、殿様や将軍が信じていた相手や部下に裏切られて、ということをたとえた表現だったのかもしれません。

そんな想像をしてみると、「裏切られて」という意味も覚えやすくなるでしょう。

\次のページで「「煮え湯を飲まされる」の使い方・例文」を解説!/

「煮え湯を飲まされる」の使い方・例文

「煮え湯を飲まされる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・大震災が起こったあと、近くに住む祖母に日々の生活用品を勝手に持って行かれて、まさか身内に煮え湯を飲まされるとは思ってもみなかった。

・普段からあれだけ親切にしていた友人に、好きだった女の子を取られてしまい、煮え湯を飲まされるとともに大きく失望した。

・多くの世話をして雇った部下だったのに、提出していた履歴書はほとんど嘘でキャリアも実力も皆無だったことが後からわかり、煮え湯を飲まされた気分だ。

裏切られて、ひどい目に合った」というニュアンスが伝わりますでしょうか。意味の解説の項でも記載しましたが、ただ「ひどい目にあう」という意味で使うのは誤りです。

たとえば「あいつには昔から何度も煮え湯を飲まされてきたんだ」という言い方はいかにも出来そうですが、「裏切られて」という意味がない場合は間違いということになります。

「熱湯を飲まされるようなひどいこと」ではなく、「それほど悔しい。予想してすらいなくてショックだった」というニュアンスで覚えましょう。

出来事そのものよりも、人と人との関係を大切に考えるのは古くからの日本的、もしくは中国的思想の表れと考えることも出来ますね。身内や主従関係での裏切りがどれほど罪が重かったのか想像してみると「煮え湯を飲まされる」辛さがイメージできるかもしれません。

「煮え湯を飲まされる」の類義語は?違いは?

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「煮え湯を飲まされる」の類義語は「飼い犬に手を噛まれる」がいいでしょう。

「飼い犬に手を噛まれる」

「飼い犬に手を噛まれる」は「面倒を見てやった相手から、思いもかけず害を受ける」こと。

「飼い犬に」と言っているため、こちらのほうがより「裏切られた」というニュアンスが強く感じられますね。相手を下に見ているような、上下関係も読み取れるでしょう。

「煮え湯を飲まされる」では、裏切った相手との関係については言及されません。細かい点での違いですが、使い分けまで意識できるといいでしょう。

\次のページで「「煮え湯を飲まされる」の対義語は?」を解説!/

うちのマンションの管理人は、近所に引っ越していく人たちがいることを飼い犬に手を噛まれたと言っているが、あまり気分のいいものではない。

「煮え湯を飲まされる」の対義語は?

「煮え湯を飲まされる」の対義語は「仇を恩で報いる」が考えられます。

「仇を恩で報いる」

「仇を恩で報いる」は「恨むべき相手に、むしろ情けをかけたり感謝したりすること」。

恨んでいる相手のため、裏切ったり攻撃したりするのが当然、と思いきや、情けをかけるということで逆の意味になります。受身形で使う場合は「報われる」と変化させるといいでしょう。

人材サービスの採用担当者としてあんなにきつい対応をしていたのに、おかげで気合が入りましたと感謝され、仇を恩で報われた気持ちになって、謙虚に仕事をしようと決意した。

「煮え湯を飲まされる」の英訳は?

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「煮え湯を飲まされる」の英語訳は「be betrayed cruelly」などが考えられます。

「be betrayed cruelly」

これは直訳すれば「ひどく裏切られた」という意味のフレーズです。

当たり前ですが、「熱々のお湯を飲ませる」をそのまま英語にしても通じません。そのため、もともとの慣用句が持っている「裏切る」という部分を英訳することになります。

裏切るは「mock」という単語もありますが、「betray」のほうが「信頼・約束」を裏切るという意味で適切です。また、「cruelly(ひどく、無慈悲に)」は他にも「extremely」など、強調の語句と入れ替えても構いません。

\次のページで「「煮え湯を飲まされる」を使いこなそう」を解説!/

My friend tricked me into promotion and I was betrayed cruelly.
友達が私をだまして昇進し、煮え湯を飲まされた。

「煮え湯を飲まされる」を使いこなそう

この記事では「煮え湯を飲まされる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「熱湯を」ではなく「煮え湯を」と言っていることからも、グツグツ沸騰しているイメージがあって恐ろしい言葉ですね。

その恐ろしさに注目してしまいがちですが、本当に沸騰しているのはお湯ではなく、裏切られた方の怒りや悲しみの感情なのかもしれません。

「信じていた相手に裏切られる」という意味が大切な言葉のため、そんな感情に注目してみるとしっかり覚えることができるでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「煮え湯を飲まされる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「煮え湯を飲まされる」について解説する。

端的に言えば「煮え湯を飲まされる」の意味は「裏切られて痛い目にあうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「煮え湯を飲まされる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「煮え湯を飲まされる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「煮え湯を飲まされる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「煮え湯を飲まされる」の意味は?

「煮え湯を飲まされる」には、次のような意味があります。

信用していた者に裏切られてひどい目にあう。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「煮え湯を飲まされる」

この言葉は、「自分が信じていた相手に裏切られて、ひどい目にあう」という慣用表現です。「煮え湯」とは熱湯のこと。そんなものを飲まされたら、火傷では済みませんね。受身形でなければ、「煮え湯を飲ませる」という表現で「相手を裏切る」と言うことも出来ます。

ここで注意したいのは「裏切られて」という点。熱湯を飲まされるイメージで、ただ単に「ひどい目にあう」とするのは誤りです。詳しくは使い方の項も確認してみてください。

この誤用については、文化庁のホームページにも掲載されるなど一般的な話題になっています。このように取り上げられるているものは、試験問題として出題されやすいことにも留意が必要です。誤った意味を引っ掛けで選ばせる問題などが予想されます。しっかりと押さえておきましょう。

「煮え湯を飲まされる」の語源は?

次に「煮え湯を飲まされる」の語源を確認しておきましょう。これは明確な由来はなく、言葉のイメージから作られた表現のようです。

「煮え湯」ですから、グラグラと沸き立っているイメージでしょうか。よほど熱い、と表現したかったのでしょう。さらに「飲まされる」と受身形なところにも、被害を受けた感じや、熱さに驚いていることが読み取れます。

このように、あまりに熱く、更に自分ではそうと思っていなかったのに飲まされた=裏切られたというニュアンスになったのでしょう。

日本ではお茶の文化が広く浸透していましたから、「お湯」は熱々のお茶の可能性もあります。もしかすると、殿様や将軍が信じていた相手や部下に裏切られて、ということをたとえた表現だったのかもしれません。

そんな想像をしてみると、「裏切られて」という意味も覚えやすくなるでしょう。

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