化学理科

ヤモリはなぜ壁にくっつくことができるのか?医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。君はなぜヤモリに関する内容が化学のカテゴリにあるのか不思議に思ったんじゃないだろうか。
ここで少し考えてみよう。両生類のイモリと違って、爬虫類であるヤモリの足の裏には吸盤がないのに、なぜ乾燥している壁にくっついていられるのか不思議に思ったことはあるだろうか?自分の手のひらや足の裏を壁につけた時、俺達は壁にくっつくことができないのはわかるよな。実はある化学の法則のおかげでヤモリは垂直な壁を自由自在に動き回ることができるんだ。

今回のテーマについては化学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/オリビン

理系の大学院を卒業し、現在は医学部のバイオ系研究室で実験助手をしている。正しい実験結果を出さなければいけないため科学の知識は人一倍もっている。

生物学的に見たヤモリ

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ヤモリ科に属する生き物は世界で数百種類存在しますが、この中には壁を登れるヤモリと登れないヤモリがいるため、最も身近にいて壁を登れるヤモリであるニホンヤモリを例に解説していきます。

ニホンヤモリはヤモリ属ヤモリ科に分類される爬虫類です。日本でヤモリといえばこのニホンヤモリを指します。日本のみならす中国や朝鮮半島など広い地域に分布しているヤモリです。名前にニホンと付きますが、実際はユーラシア大陸からの外来種と考えられており、日本固有種ではありません。体調は10~14cmでほっそりしており、他のヤモリ属と比べて小型です。色は茶褐色~灰色ですが、環境によって体色を変えることができます。夜になるとしばしば窓ガラスや網戸に貼り付いて虫を食べているので、見たことのある人も多いでしょう。

ヤモリの足の裏はどうなっている?

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ヤモリの足の裏をまじまじと見たことのある人はあまりいないと思います。あまりにもヤモリが自由に壁を登っているので、足の裏は吸盤のようになっているのではと思うかもしれませんが、実は吸盤にはなっていません。ヤモリの足の裏をよく観察すると、細かい毛がたくさん生えています。この細かい毛は繊毛です。この繊毛をさらに顕微鏡で拡大して観察すると、繊毛の先がさらに細かく分かれています。この細かく分かれた繊毛の先はわずか1マイクロメートル(0.001mm)しかありません。

そう、実はこの非常に細かく分かれた足の裏の繊毛に秘密があるのです。

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まさかヤモリの足の裏に繊毛が生えてるなんて驚いたな。ちなみにマイクロメートルは100万分の1メートルのことだが、それより小さい単位で1ナノメートル(1億分の1メートル)という単位があるので一緒に覚えておこう。

ヤモリの足の裏に働く力ファンデルワールス力(分子間力)

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ヤモリの足の裏に働いている化学の力とは「ファンデルワールス力」です。イオン結合・共有結合・金属結合について知っているでしょうか?これらは原子と原子の間に作用し、結合させる力なんですよ。これに対し、ファンデルワールス力とは別名分子間力と呼ばれるように分子と分子の間に働きます。これらの結合を強い順に書くと、共有結合>イオン結合>水素結合>>>ファンデルワールス力となるイメージです。そう、ファンデルワールス力は非常に弱い結合なんですよ。

ヤモリの足の裏に働いている力は100年間にわたり謎のままでした。一時期は「吸盤のようになっているのではないか?」「インターロッキング(かみ合わせ)ではないか?」といろいろな仮説があったといいます。しかし、2000年にケラー・オータム博士がファンデルワールス力によるものだと解明したのです。

ファンデルワールス力について

ファンデルワールス力について

image by Study-Z編集部

普段の生活では感じることができませんが、地球上にある全ての物体はお互いに引っ張り合う力が作用しています。地球自身が地球上のものを引っ張る力もその一つであり、これが重力です。ファンデルワールス力は分子同士が引き合う力ですが、静電気的な引力など分子間に働く力はすべてファンデルワールス力と言います。ファンデルワールス力は物体の質量が大きければ大きいほど大きくなり、無極性分子(静電気的な偏りのないもの。例:水素分子、二酸化炭素)よりも極性分子(静電気的な偏りのあるもの。例:水分子、塩化水素、アンモニア)のほうが大きいです。

ファンデルワールス力は細長い分子ほどより接近することができるため、同じ分子量でも形状が細長ければ細長いほどファンデルワールス力は強く働きます。また、分子量が大きいほど大きなファンデルワールス力が働くのです。このため、分子量が大きいほど沸騰する温度(沸点)や融ける温度(融点)が高くなります。

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