この記事では「すねをかじる」について解説する。

端的に言えばすねをかじるの意味は「成長しても親に頼り養ってもらう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「すねをかじる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「すねをかじる」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「すねをかじる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「すねをかじる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「すねをかじる」の意味は?

まずは、「すねをかじる」の辞書の意味から見ていきましょう。

1. 自分で独立して生活することができないで、親または他人に養ってもらう。

出典:日本国語大辞典(精選版)「脛を齧る」(すねをかじる)

「すねをかじる」の「すね」とは漢字では「脛」と書かれ、身体の膝(ひざ)から足首までの間のことを言います。体のどの部分が悪くても不都合が生じますが、「すね」があるからこそ、人は移動することができ、必要な場所へ到達できてコミュニケーションをとることができるのです。「すね」がなければ仕事へ行くこともできないので収入を得るのに大切な部分ですよね。昔から「すね」は「労働する」の意味で使われてきた言葉でもありました。「すねをかじる」は大切な糧(かて)となる部分をかじられてしまうことですから、否定的な意味合いで使われることばと言ってもいいでしょう。

「すねをかじる」の語源は?

次に「すねをかじる」の語源を確認しておきましょう。

昔、「すね」に関わる用語に「腕一本、脛一本」(うでいっぽん、すねいっぽん)という慣用句がありました。「腕」は技能の象徴であり努力によって能力を伸ばすことができます。一方、「すね」は、人が移動するための大切な部分であるのとともに「労働できること」の象徴でした。「腕一本、脛一本」は、「財産や地位がなく、自分の身体以外に頼るべきものがないこと」の意味で使われてきましたが、逆に考えると「腕一本、脛一本」があるからこそ、未来を切り開いていける可能性を秘めていたのです。この「腕一本、脛一本」をもとに、江戸に入ると「すねをかじる」という言葉も広く使われるようになったと考えられています。辞書に記載されているとおり、「すねをかじる」は「独立して一人で生活できずに親や他人に頼って養ってもらう」ことをいうのですね。

\次のページで「「すねをかじる」の使い方・例文」を解説!/

「すねをかじる」の使い方・例文

「すねをかじる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 末っ子には本当に困っているのよ。「ミュージシャンになることが俺の人生の目的だ」とか言ってすねかじりもいいところなの。バイトでもするように言うと「3年後には珠玉の名曲をヒットさせて何倍にでもして返してやるよ。」だって。本当に呆れちゃうわ。

2. 大学生になって教養をつけようなんて考えず、あなたは今は労働することだけを考えなさい。お隣の家はお金があるからすねかじりの生活ができるかもしれないけれど、うちはお隣とは違うの。お金を稼いで家計を助けること。それが今のあなたの義務でもあるの。

子どもが「すねをかじる」ことができるのは、裕福な家庭が多いのかもしれないですね。

「すねをかじる」の類義語は?違いは?

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それでは、「すねをかじる」の類義語を見ていきましょう。

「ニート」

最近、日本でも定着した外来語に「ニート」があります。アルファベットにすると「NEET」になり、「NEET」は、「not in education, employment or training」の略で、イギリスにおいて義務教育終了後の16~18歳までの間の人の中で「教育」、「労働」、「職業訓練」のいずれにも属していない人を指す慣用句です。日本で「ニート」という単語が使われる場合には、特に年齢の制限はありませんが、やはり「勉強をするわけではなく」「大学生でもなく」「就職もせず」実家で父母の世話になり、親からお小遣い程度の支援を受け親がかりで生活している人を指します。

「自分で独立した生活ができない点」で「ニート」は、「すねをかじる」の類義語になりますが、「すねをかじる」には、将来、芸術家や小説家になるためにやむなく親から援助をうけているような場合を含みますが、「ニート」は、社会生活からドロップアウトしてしまったという意味合いもあり、成長の可能性もなく目標もなく新しく家庭を持とうという意思もない半ばシングルであり続けることが確定してしまった人生をおくっている人に使われるのです。

\次のページで「「パラサイト」」を解説!/

「パラサイト」

「パラサイト」も「自立した生活ができず、経済的に親に依存した生活をおくっている」点で「すねをかじる」の類義語のひとつであると言えるでしょう。「パラサイト」も、もともと英語で綴(つづ)りは、「parasite」、「寄生生物」や「寄生虫」という意味で使われることが多い単語です。学校を卒業して、就職し働き始める年齢に達しているのに、引き続き経済的に親に頼る状況を続けている点が、親や第三者から見ると、少し「寄生虫」のように思えるのかもしれませんね。

「すねをかじる」の対義語は?

それでは、「すねをかじる」の反対語を見ていきましょう。

「たたき上げ」

「すねをかじる」は「自立して生活できないため親や他人に養ってもらう」意味ですから、反対語は、「自立心が強く独力で生活していく」ことを意味することばになりますね。そんなことばのひとつに「たたき上げ」があります。「たたきあげ」はもともとは職人の世界で使われていた言葉で、親が裕福であったり、高学歴で社会に出る時点で恵まれていた人たちに対して、「下積みの時代から努力して一人前になることや一人前になった人」を意味する言葉です。芸能界や政治の世界でも親や周りの状況に恵まれて約束されたスタートが切れる人がある一方、努力し独力で登り詰めていく人もいるのですね。

「独立独歩」

「他人に頼って自立できない」ことの反対の意味を持つ言葉には、「独立独歩」(どくりつどっぽ)という慣用句もあります。「独立独歩」は「人の助けに頼らず、自信の考え方に意義を見出し、信念に従って進んでいくこと」です。多くの社会で尊ばれる生き方ですが、周りの考え方を摺(す)りこまれ、相手との不必要な摩擦(まさつ)を流されて生きてしまいがちになるのも人間の特性かもしれません。「独立独歩」の生き方も私たちがイメージする以上に大変な生き方なのかもしれませんね。

「すねをかじる」の英訳は?

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それでは、「すねをかじる」の英訳を見ていきましょう。

「sponge off」

「すねをかじる」行為をするのは、なにも日本人に限ったことではありません。当然、英語圏を含めて世界中にいます。英語では決まり文句があり、「すねをかじる」は、「sponge off」(spˈʌndʒ ɔːf)と表現されているのです。「sponge off」の「sponge」で最初にでてくる意味は、「スポンジ」、いわゆる「海綿状の吸収物」なのですが、一方で、「大酒飲み」や「居候(いそうろう)」という意味もあります。スポンジは吸い取るのみで自らは提供するすることがないので、「お金をお酒を消費するだけで、「勤労はしない」ため「居候」や「すねかじり」の意味で使われるのかもしれませんね。

\次のページで「「すめをかじる」を使いこなそう」を解説!/

・ He is over 40, but he has never worked. He sponges off his parents.
(彼は40歳を過ぎているのに、働いたことがなく、親のすねかじりなんだ)

「すめをかじる」を使いこなそう

この記事では、「すねをかじる」の意味や使い方などを見てきました。「すねをかじる」とは、「自分で独立して生活できず親などに養ってもらう生活をすること、またはそんな生活をしている人」を指す慣用句でした。現在では、「すねをかじる」人のことを「ニート」や「パラサイト」あるいは「引きこもり」と呼ぶことも多くなってきましたね。しかし、好きで親に養ってもらっている人ばかりではありません。それぞれに理由がある場合も多いのです。人生いつでもやり直しができると思いますし、やり直ししやすい社会になって欲しいですね。

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【慣用句】「すねをかじる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「すねをかじる」について解説する。

端的に言えばすねをかじるの意味は「成長しても親に頼り養ってもらう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「すねをかじる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「すねをかじる」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「すねをかじる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「すねをかじる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「すねをかじる」の意味は?

まずは、「すねをかじる」の辞書の意味から見ていきましょう。

1. 自分で独立して生活することができないで、親または他人に養ってもらう。

出典:日本国語大辞典(精選版)「脛を齧る」(すねをかじる)

「すねをかじる」の「すね」とは漢字では「脛」と書かれ、身体の膝(ひざ)から足首までの間のことを言います。体のどの部分が悪くても不都合が生じますが、「すね」があるからこそ、人は移動することができ、必要な場所へ到達できてコミュニケーションをとることができるのです。「すね」がなければ仕事へ行くこともできないので収入を得るのに大切な部分ですよね。昔から「すね」は「労働する」の意味で使われてきた言葉でもありました。「すねをかじる」は大切な糧(かて)となる部分をかじられてしまうことですから、否定的な意味合いで使われることばと言ってもいいでしょう。

「すねをかじる」の語源は?

次に「すねをかじる」の語源を確認しておきましょう。

昔、「すね」に関わる用語に「腕一本、脛一本」(うでいっぽん、すねいっぽん)という慣用句がありました。「腕」は技能の象徴であり努力によって能力を伸ばすことができます。一方、「すね」は、人が移動するための大切な部分であるのとともに「労働できること」の象徴でした。「腕一本、脛一本」は、「財産や地位がなく、自分の身体以外に頼るべきものがないこと」の意味で使われてきましたが、逆に考えると「腕一本、脛一本」があるからこそ、未来を切り開いていける可能性を秘めていたのです。この「腕一本、脛一本」をもとに、江戸に入ると「すねをかじる」という言葉も広く使われるようになったと考えられています。辞書に記載されているとおり、「すねをかじる」は「独立して一人で生活できずに親や他人に頼って養ってもらう」ことをいうのですね。

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