
「背後であやつる」
「糸を引く」や「黒幕として動く」と同様に「表には出ず実行者の背後から計画やシナリオに基づいて指示、指令を出して動かす」という意味を持つ慣用句に「背後であやつる」(はいごであやつる)があります。政治の世界で言えば、男女両方からの票を獲得し、党内派閥のバランスを保つために華やかで人気のある女性議員を入閣(にゅうかく)させようと表には見えないところでシナリオを書いて動いている政治家がいるかもしれませんね。
「糸を引く」の対義語は?
次に「糸を引く」の対義語を見ていきましょう。
ここでも「類義後」の場合と同様に「糸を引く」の意味の中でも「陰にいて他人をあやつる」という使い方に対しての反対語をご紹介したいと思います。
「自発的に」
「陰(かげ)にいて他人をあやつる」という方法ではなく、「自分の意思に基づいて実行するさま」は「自発的に」ということばで表現することができます。「自発的に」は、「自分の意思」であり、背後には、「特定の指揮や指図」は介在(かいざい)していないのです。
「主体的に」
「主体的に」という言葉にも、「自分の意思に基づいて実行するさま」という意味であり、「糸を引く」の対義語のひとつと言えるでしょう。「主体的に」は、「自発的に」とほぼ同じ意味を持ち同じような使い方がされます。若干のニュアンスの違いがあるとすれば、「自主的に」の方がやるべきことがより具体的ではっきりしているのに対して、「主体的に」の方が抽象的な行動の場合にも使われる点です。
「糸を引く」の英訳は?

image by iStockphoto
それでは、「糸を引く」の英訳を見ていきましょう。「糸を引く」の最初の意味である「ねばって長くのびる」は「ネバネバした」という意味としてとらえ、「sticky」(stíki)や「slimy」(slάɪmi)と表現すれば、ヌルヌル感を伝えることができますね。
二つ目の「後まで長く続く」は、「to last long」(lˈæst lˈɔːŋ)と表現できます。この場合の「last」は自動詞で、時間が「続く」、「継続する」を意味し、「long」は副詞で「長く」という意味です。それでは、「糸を引く」が持つあと二つの意味の英語表現も見ていきましょう。
「manipulate somebody」
「糸を引く」が持つ「陰で操る」(かげであやつる)にピッタリとくる英語表現のひとつが「manipulate」(mənípjʊlèɪt)です。「manipulate」は、単に「扱う」や「操作・操縦する」という意味に「魂胆(こんたん)あって」や「たくらみがあって」というニュアンスを出せる単語で、例えば、「彼は、彼女を陰で操ろうとしている」の場合は、「He is trying to manipulate her from behind.」となります。
「(陰で)糸を引く」は、日本語の感覚と同様に「pull the strings」(糸を引っ張る)と表現しても陰で操るさまは相手に伝わるでしょう。
\次のページで「「spin」」を解説!/