この記事では「糸を引く」について解説する。

端的に言えば糸を引くの意味は「糸をつむぐ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「糸を引く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「糸を引く」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「糸を引く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「糸を引く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「糸を引く」の意味は?

「糸を引く」には、次のような意味があります。

1. 糸状にねばって長くのびる。食品が腐ったときの形容にもいう。
2.  糸をのばしたように、後まで長く続く。
3. 〔糸であやつる操り人形から出た語〕 陰にいて他人をあやつる。
4. 引き出して糸につむぐ。糸をつむぐ。

出典:大辞林 第三版(三省堂) 「糸を引く」

さまざまな意味を持つ「糸を引く」(いとをひく)ですが、「糸を紡ぐ(つむぐ)」という行為に対して「糸を引く」という言葉を使ったのが始まりだと考えられています。「糸を引く」あるいは、「糸を紡ぐ」とは、糸の原料である綿(めん)や蚕(かいこ)の繭(まゆ)から繊維を引き出す行為のことを呼んでいました。糸を引いた後、糸を複数重ねて揃え、“撚り(より)”をかけて、強度の増した糸を巻き取っていくのです。原料から糸を引き、最終的に糸を巻き取るまでの工程のことを「糸を引く」と言います。

巻き取られた糸はほどくとかなりの長さになりますよね。辞書の2番目の意味として記載されているように「糸を引く」はあとあとまで長く続く意味でも使われるのです。

発酵している食品の形容としても「糸を引く」とも表現されますが、代表的な例には「納豆」があります。箸で納豆を混ぜて糸を引かせることで味わいが深まりますよね。

糸であやつる人形の例には、「ピノキオ」や「マリオネット」がありますが、当然のことながら人形が自ら動いているわけではなく、陰で黒子(くろこ)として操っている人間が存在しています。裏に誰か黒幕(くろまく)がいる場合にも「糸を引く」と表現されるのです。

「糸を引く」の語源は?

次に「糸を引く」の語源を見ていきましょう。

人類が「糸を引き」、「紡ぎ」、「布を作り始めた」のは紀元前5000年以前のことだと言われています。現在では作業は機械化されましたが、行うべき工程は今も昔もそんなに変わっていません。布が使われるようになって、かなり古い時代から「糸を引く」という言葉は使われていたかもしれませんね。

「糸を引く」食品である納豆が確認できる最古の文献は11世紀頃の書物であることから平安時代にはすでに納豆が存在していたとされています。 日本人が納豆を食べ始めた時期は特定はできませんが、「弥生時代」(やよいじだい)からだという説もあるのです。

「糸を引いて行う」操り人形は世界中にありますが、日本では江戸時代(元禄時代)には既に行われていた記録があります。

\次のページで「「糸を引く」の使い方・例文」を解説!/

「糸を引く」の使い方・例文

「糸を引く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下の使用例のように用いられます。

1. やはりこの水戸(みと)で生産された納豆は絶品だね。「糸を引く」ネバネバ感が最高で時間があればいつまでもかき混ぜていたいくらいだ。

2. この凧(たこ)は、どのくらい遠くまで上がっていくのだろう。このあいだ、凧糸を100メートルほど追加しておいたからさらに遠くまで飛んでいくよね。まさに、まっすぐに「糸を引いている」ようだ。

3.大統領暗殺未遂を、この容疑者が単独で行ったとはどうしても考えにくい。大統領の立ち寄り先や日時の関連情報を集めるだけでもかなりの時間を要するはずだ。誰か黒幕がいて裏で「糸をひいている」と考えた方が自然じゃないか?

4. この産業技術記念館では、「糸を引く」工程から「織る」工程までの初期の紡織機から現代の紡織機までを展示していて、紡織機械の発展の歴史を理解することができます。

「糸を引く」は主に四つの意味で使われるのですね。

「糸を引く」の類義語は?違いは?

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「糸を引く」には、主な意味が四つありますが、三つの意味についてはほとんどが文字のままの意味のため、ここでは、「糸を引く」の意味の中でも「陰にいて他人をあやつる」という使い方の類語後をご紹介しましょう。

「黒幕として動く」

「糸を引く」には操り人形を背後から人間が操作するように「表面には出ないものの後ろで指揮をしてはかりごとを行うこと」の意味もありますね。同じ意味を持つ慣用句には「黒幕として動く」(くろまくとしてうごく)があります。用心深い「黒幕」であると「はかりごとの実行者」と直接コンタクトもとらず、フィクサーと呼ばれる仲立ちを通じて行為を管理する場合もあるのです。

\次のページで「「背後であやつる」」を解説!/

「背後であやつる」

「糸を引く」や「黒幕として動く」と同様に「表には出ず実行者の背後から計画やシナリオに基づいて指示、指令を出して動かす」という意味を持つ慣用句に「背後であやつる」(はいごであやつる)があります。政治の世界で言えば、男女両方からの票を獲得し、党内派閥のバランスを保つために華やかで人気のある女性議員を入閣(にゅうかく)させようと表には見えないところでシナリオを書いて動いている政治家がいるかもしれませんね。

「糸を引く」の対義語は?

次に「糸を引く」の対義語を見ていきましょう。
ここでも「類義後」の場合と同様に「糸を引く」の意味の中でも「陰にいて他人をあやつる」という使い方に対しての反対語をご紹介したいと思います。

「自発的に」

「陰(かげ)にいて他人をあやつる」という方法ではなく、「自分の意思に基づいて実行するさま」「自発的に」ということばで表現することができます。「自発的に」は、「自分の意思」であり、背後には、「特定の指揮や指図」は介在(かいざい)していないのです。

「主体的に」

「主体的に」という言葉にも、「自分の意思に基づいて実行するさま」という意味であり、「糸を引く」の対義語のひとつと言えるでしょう。「主体的に」は、「自発的に」とほぼ同じ意味を持ち同じような使い方がされます。若干のニュアンスの違いがあるとすれば、「自主的に」の方がやるべきことがより具体的ではっきりしているのに対して、「主体的に」の方が抽象的な行動の場合にも使われる点です。

「糸を引く」の英訳は?

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それでは、「糸を引く」の英訳を見ていきましょう。「糸を引く」の最初の意味である「ねばって長くのびる」は「ネバネバした」という意味としてとらえ、「sticky」(stíki)や「slimy」(slάɪmi)と表現すれば、ヌルヌル感を伝えることができますね。

二つ目の「後まで長く続く」は、「to last long」(lˈæst lˈɔːŋ)と表現できます。この場合の「last」は自動詞で、時間が「続く」、「継続する」を意味し、「long」は副詞で「長く」という意味です。それでは、「糸を引く」が持つあと二つの意味の英語表現も見ていきましょう。

「manipulate somebody」

「糸を引く」が持つ「陰で操る」(かげであやつる)にピッタリとくる英語表現のひとつが「manipulate」(mənípjʊlèɪt)です。「manipulate」は、単に「扱う」や「操作・操縦する」という意味に「魂胆(こんたん)あって」や「たくらみがあって」というニュアンスを出せる単語で、例えば、「彼は、彼女を陰で操ろうとしている」の場合は、「He is trying to manipulate her from behind.」となります。

「(陰で)糸を引く」は、日本語の感覚と同様に「pull the strings」(糸を引っ張る)と表現しても陰で操るさまは相手に伝わるでしょう。

\次のページで「「spin」」を解説!/

「spin」

「糸を引く」が持つ意味の中で「糸を紡ぐ」、あるいは「糸をつくる」にドンピシャリの表現が、「spin」(spín)です。例えば、「彼は綿を紡いで糸にしました」という過去形の文章を作った場合には、「He spun cotton into thread」となりますね。

「糸を引く」を使いこなそう

この記事では、「糸を引く」の意味や使い方を見てきました。「糸を引く」には、大きく四つの意味がありましたね。「食品が腐った時の糸状を形容する場合」、「糸のように後まで長く続く状態」、「背後にいて他人をあやつること」、最後は「原料から糸を引き出して糸を紡ぐこと」でした。「糸を引く」にはたくさんの意味がありますが、どの意味でもよく使われます。みなさん、テレビなどで「糸を引く」という表現がでてきたら気を留めてみてください。また、日常生活でも使ってみると楽しいかもしれませんね。

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【慣用句】「糸を引く」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「糸を引く」について解説する。

端的に言えば糸を引くの意味は「糸をつむぐ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「糸を引く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「糸を引く」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「糸を引く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「糸を引く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「糸を引く」の意味は?

「糸を引く」には、次のような意味があります。

1. 糸状にねばって長くのびる。食品が腐ったときの形容にもいう。
2.  糸をのばしたように、後まで長く続く。
3. 〔糸であやつる操り人形から出た語〕 陰にいて他人をあやつる。
4. 引き出して糸につむぐ。糸をつむぐ。

出典:大辞林 第三版(三省堂) 「糸を引く」

さまざまな意味を持つ「糸を引く」(いとをひく)ですが、「糸を紡ぐ(つむぐ)」という行為に対して「糸を引く」という言葉を使ったのが始まりだと考えられています。「糸を引く」あるいは、「糸を紡ぐ」とは、糸の原料である綿(めん)や蚕(かいこ)の繭(まゆ)から繊維を引き出す行為のことを呼んでいました。糸を引いた後、糸を複数重ねて揃え、“撚り(より)”をかけて、強度の増した糸を巻き取っていくのです。原料から糸を引き、最終的に糸を巻き取るまでの工程のことを「糸を引く」と言います。

巻き取られた糸はほどくとかなりの長さになりますよね。辞書の2番目の意味として記載されているように「糸を引く」はあとあとまで長く続く意味でも使われるのです。

発酵している食品の形容としても「糸を引く」とも表現されますが、代表的な例には「納豆」があります。箸で納豆を混ぜて糸を引かせることで味わいが深まりますよね。

糸であやつる人形の例には、「ピノキオ」や「マリオネット」がありますが、当然のことながら人形が自ら動いているわけではなく、陰で黒子(くろこ)として操っている人間が存在しています。裏に誰か黒幕(くろまく)がいる場合にも「糸を引く」と表現されるのです。

「糸を引く」の語源は?

次に「糸を引く」の語源を見ていきましょう。

人類が「糸を引き」、「紡ぎ」、「布を作り始めた」のは紀元前5000年以前のことだと言われています。現在では作業は機械化されましたが、行うべき工程は今も昔もそんなに変わっていません。布が使われるようになって、かなり古い時代から「糸を引く」という言葉は使われていたかもしれませんね。

「糸を引く」食品である納豆が確認できる最古の文献は11世紀頃の書物であることから平安時代にはすでに納豆が存在していたとされています。 日本人が納豆を食べ始めた時期は特定はできませんが、「弥生時代」(やよいじだい)からだという説もあるのです。

「糸を引いて行う」操り人形は世界中にありますが、日本では江戸時代(元禄時代)には既に行われていた記録があります。

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