この記事では「しどけない」について解説する。

端的に言えばしどけないの意味は「乱れていて、しまりがない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

本の虫ライター、ジュリアン・ソレルを呼んです。一緒に今回のキーワード「しどけない」の意味や例文、豆知識、類語などを見ていきます。

ライター/ジュリアン・ソレル

読書の虫ライター。漢字や熟語が好き。正確でロジカルな文章での解説を心がける。

今回は、単語「しどけない」をベースに、類語の「あられもない」「はしたない」などを、意味や語源から例文、使い方までみっちり解説。

「しどけない」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「しどけない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「しどけない」の意味は?

「しどけない」には、次のような意味があります。

1.身なりなどがきちんとせずだらしない。しまりがない様子。
2.順序が乱れている。秩序がなく雑然としている。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「しどけない」

「しどけない」というと、乱れた服装からくる色っぽさをイメージされる人もいるかと思いますが、辞書によると意味は、ただ「身なりなどがきちんとせずだらしない。しまりがない様子。」とのこと。

しかし今日では、実際に上記の1.の意味の場合「だらしない」が使われることが一般的かと思います。

そのため、わざわざ「しどけない」という言葉を使う場合には、ただ「だらしない」状態とは違い、色っぽい雰囲気が喚起されるのかもしれません。

2.の意味によると、服装、見た目に関係なく、ただ、順序や秩序が乱れているという意味でも使われるようですね。

「しどけない」の語源は?

では「しどけない」の語源を確認していきましょう。

「しどけない」の語源としては、

支度(し)」「解(とけ)」「甚し(なし)
つまり「身支度が解けて甚だしい」という説や、

支度(しど)」「気(け)」「無し(なし)
「身支度の気(様子)が無い」、という説、

また、「しどろもどろ」でも知られる、
しどろ」「気(け)」「甚し(なし)」など諸説あります。

1.きちんとしたところがなく、乱れているさま。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「しどろ」

\次のページで「「しどけない」の使い方・例文」を解説!/

「しどけない」の使い方・例文

「しどけない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.しどけない寝巻姿を見せる
2.けふの御座席こそしどけなう見えさせ給へ (出典:平治物語)

上記の例文にも乱れた服装と、色っぽさのイメージを感じますね。

また、「しどけない」は、シンガーソングライターの南佳孝の、郷ひろみや斉藤和義のカバーでも知られる名曲「モンロー・ウォーク」の歌詞にも見られ、グラスを片手に持ち、背中のあいたドレスを着た女性が窓辺にもたれかかり、「しどけない」ポーズで、酔いざましをしている、様子が歌われているようです。

「しどけない」の類義語は?

image by PIXTA / 60880929

「あられもない」

「しどけない」の類義語としては、「あられもない」や「はしたない」が挙げられます。

まず「あられもない」の意味から見てみましょう。

1.似つかわしくない。特に、女性の身だしなみや振る舞いとしてふさわしくない。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「あられもない」

「あられもない」の例文はこちら。

1.自分のあられもない噂が広まり困惑する
2.ベランダからあられもない姿を人前に晒してしまう
3.レストランにおける彼女のあられもないマナーを責める

国語辞典によるとその語源は、存在を意味する動詞「あり」に可能の助動詞「れる」が付いて名詞化した「あられ」が「無い(ない)」から。転じて、「そうであるはずがない」「あるまじきことだ」の意となります。「あり得ない」とは、意味も語源もかなり近い言葉です。

またこの言葉は、「露/顕な(あらわな)」とも語感が似ており、「あらわな姿」と「あられもない姿」ではどちらも同じ情景を喚起させる可能性がありますが、それらの語源から、本来異なる意味であることがわかります。

「はしたない」

そして「はしたない」の意味、辞書には以下のようにあります。

1. 礼儀に外れていて品がない。上品ではない。下品だ。いやしい。なさけない。
2.どっちつかずのさまである。中途半端である。 
3.きまりが悪い。まが悪い。
4.そっけない。つれない。 
5.迷惑である。
6.程度がはなはだしい。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「はしたない」

以下が「はしたない」の例文になります。

1.子供たちがお店で走り回っていて、はしたない
2.彼女のはしたないふるまいに驚く
3.こんな場所で、はしたない言葉遣いはおよしなさい

こちらの語源は、「はした金」などに使われる、半端、些細な、上品でない等の意味で使われる「はした」に「甚し(なし)」です。

この場合の「ない」は、「あられもない」のときの非存在を意味する「無い(ない)」ではなく、「甚だしい」を意味する「甚し(なし)」になります。

\次のページで「「しどけない」の対義語は?」を解説!/

「しどけない」の対義語は?

image by PIXTA / 66930037

次は、「しどけない」の対義語について考察していきます。

「隙(スキ)がない」

一般の見解としての対義語というものはありませんが、考えられるものとしては、「隙(スキ)がない」でしょう。

意味は、弱点や油断のないこと秩序正しい様子であり、「しどけない」の意味、

2.順序が乱れている。秩序がなく雑然としている。

と対を成しています。

さらに、「隙(スキ)がない」は、ピシッとスーツで決めたような、しまりのある服装に対するイメージを喚起させることから、

1.身なりなどがきちんとせずだらしない。しまりがない様子。

にも対応しています。こちらは男性の容姿や服装をイメージさせ、意味上で対を成すだけではなく、イメージやそのニュアンスにおいて、男女の対立が浮かび上がるというのが不思議です。

ちなみに古語では「隙/暇(ひま)」と呼ばれ、多くの意味を持ち、こちらも「源氏物語」に見られます。

「隙/暇(ひま)」の意味は以下になります。

1.すきま。物と物との間。
2.絶え間。
3.心の隔たり。不仲。不和。
4.よい機会。
5.時間のゆとり。
6.休暇。いとま。

出典:学研全訳古語辞典(学研)「隙/暇(ひま)」

そして「源氏物語」からの例文の抜粋です。

4.「うはべはいとよき御仲の、昔よりさすがにひまありける」
(表面的にはよい仲のようであるが、昔からやはり心の隔たりがあった。)
出典:源氏物語 常夏

5.「例の、ひまもやと、うかがひありき給(たま)ふを」
(いつものように、よい機会もあるだろうと、すきをねらってお歩きになるのを。)
出典:源氏物語 紅葉賀

「しどけない」「あられもない」「はしたない」を使いこなそう

「源氏物語」にも見られる大和言葉である「しどけない」。

他にはない柔らかさ、あたたかみや上品さを持ち、歌の歌詞にも登場するその素敵な日本語のニュアンスと、類語「あられもない」「はしたない」を、上手に活用してみてください!

" /> 「しどけない」の意味や由来は?例文や使い方、類語「あられもない」「はしたない」との違いを本の虫ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「しどけない」の意味や由来は?例文や使い方、類語「あられもない」「はしたない」との違いを本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「しどけない」について解説する。

端的に言えばしどけないの意味は「乱れていて、しまりがない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

本の虫ライター、ジュリアン・ソレルを呼んです。一緒に今回のキーワード「しどけない」の意味や例文、豆知識、類語などを見ていきます。

ライター/ジュリアン・ソレル

読書の虫ライター。漢字や熟語が好き。正確でロジカルな文章での解説を心がける。

今回は、単語「しどけない」をベースに、類語の「あられもない」「はしたない」などを、意味や語源から例文、使い方までみっちり解説。

「しどけない」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「しどけない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「しどけない」の意味は?

「しどけない」には、次のような意味があります。

1.身なりなどがきちんとせずだらしない。しまりがない様子。
2.順序が乱れている。秩序がなく雑然としている。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「しどけない」

「しどけない」というと、乱れた服装からくる色っぽさをイメージされる人もいるかと思いますが、辞書によると意味は、ただ「身なりなどがきちんとせずだらしない。しまりがない様子。」とのこと。

しかし今日では、実際に上記の1.の意味の場合「だらしない」が使われることが一般的かと思います。

そのため、わざわざ「しどけない」という言葉を使う場合には、ただ「だらしない」状態とは違い、色っぽい雰囲気が喚起されるのかもしれません。

2.の意味によると、服装、見た目に関係なく、ただ、順序や秩序が乱れているという意味でも使われるようですね。

「しどけない」の語源は?

では「しどけない」の語源を確認していきましょう。

「しどけない」の語源としては、

支度(し)」「解(とけ)」「甚し(なし)
つまり「身支度が解けて甚だしい」という説や、

支度(しど)」「気(け)」「無し(なし)
「身支度の気(様子)が無い」、という説、

また、「しどろもどろ」でも知られる、
しどろ」「気(け)」「甚し(なし)」など諸説あります。

1.きちんとしたところがなく、乱れているさま。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「しどろ」

\次のページで「「しどけない」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: