端的に言えば「君臨すれども統治せず」の意味は「統治者がいながら、直接関与しないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「君臨すれども統治せず」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「君臨すれども統治せず」の意味は?
「君臨すれども統治せず」には、次のような意味があります。
国王は君主として君臨しているが、統治権は議会を通じて国民が行使する。イギリスの政体をいう。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「君臨すれども統治せず」
この言葉は、「王=最高権力者はいるものの、物事に直接かかわらない」という意味の慣用表現です。辞書によっては「王は君臨すれども統治せず」と「王は」が付いて掲載されているものもありました。
言葉の由来は18世紀のイギリス政治での出来事から。現実で使う場合は、政治にとどまらず「やり方や方針に口出ししない」という意味合いになるでしょう。
使用目的には注意したいところで、「王様はいるのに~してくれない」というニュアンスが含まれれば、批判的な意味合いが漂います。この表現を使うことによって、何を表現したいのか考えることが大切です。使い方の項も合わせてチェックしてみてくださいね。
「君臨すれども統治せず」の語源は?
次に「君臨すれども統治せず」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、18世紀イギリスでの政策が由来になったと言われています。
その時のイギリス国王、ジョージ1世はドイツ生まれであったため英語を理解できず、政務を別の人間に任せることになりました。これが、現在でも多くの国で採用されている「議院内閣制」の始まりと言われています。
当時の国王は議会に対して一方的な権限を持ち、まさに「王」として君臨していたわけですが、大きく変化することとなったのです。「君臨すれども統治せず」の概念は以前からあったとされていますが、歴史の転換点として、この出来事が取り上げられるようになったのでしょう。
なお、余談ですが、実際にはジョージ1世は外交や軍事問題において実績を残しており、話は誇張されて伝わっているようです。
能力がなかったのではなく、むしろ政治の近代化のため、合理的な判断を行ったのかもしれません。「統治しない王様」を批判するような悪い意味はなかった可能性も押さえておきましょう。
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