今回のテーマ「横紋筋」と「平滑筋」について見ていこう。
高校生物で学習する範囲に含まれる知識ですが、詳細を覚えている人は少ないでしょう。
今回は、高校で生物を履修していない人にも分かりやすくなるように、東大生物学科卒で生物に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

横紋筋とは?

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今回は、「横紋筋」と「平滑筋」について解説していきます。それぞれの特徴や違いを理解することを目標として、まず初めに、横紋筋から見ていきましょう。

横紋筋の特徴は?

横紋筋とは、その名称通りに、横方向に縞模様の入った構造を観察できる筋肉のことです。

筋肉は筋繊維筋線維)と呼ばれる細い線維が集まってできていますが、この筋線維は、さらに細い筋原線維と呼ばれる線維が集合することで成り立っています。筋原線維を構成するのは、アクチンフィラメントミオシンフィラメントと呼ばれる細い紐状の構造ですが、このアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが規則正しく配列されると同時に、Z帯と呼ばれる構造で区切られているのが横紋筋の特徴です。顕微鏡で見た際に、ちょうどこのZ帯が横方向の線に見えるため、横紋筋と呼ばれます。

ちなみに、Z帯とZ帯の間の区間のことをサルコメアと呼び、これが筋肉の収縮を生み出す最小単位になっているというわけです。横紋筋の収縮は、アクチンフィラメントに沿ってミオシンフィラメントが移動することによって生じ、この現象のことを「滑り説」と言います。

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横紋筋に分類される筋線維は?

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横紋筋に分類される筋線維は2種類あり、骨格筋心筋が該当します。

骨格筋は、一般の人が筋肉と聞いたときに連想する筋肉に合致しており、さまざまな運動をするための基本となる単位です。骨格筋が収縮することで関節が曲げられ、それにより目的とする部位の動作が行われます。骨格筋の他の特徴は、多核細胞からなるという点です。通常の細胞は一つの細胞につき一つの核を持っていますが、骨格筋はその形成の過程で、多数の細胞が癒着するように集合し、結果として、一つの細胞に多数の核を持つ状態になります。筋線維は全部で3種類ありますが、多核細胞であるという特徴は骨格筋に特有のものです。骨格筋は強い力を発揮することは得意ですが、代わりに持久力に乏しいという特徴があります。

もう一つの横紋筋である心筋は、心臓を構成する筋肉です。心筋も骨格筋のように、顕微鏡で見ると横線がありますが、一つの細胞に一つの核しか持たない単核細胞である点が骨格筋と異なる点になります。心筋の他の特徴は、非常に疲労に強い性質を持つという点です。心臓は、24時間休みなく動き続ける必要があるので、このような性質を持つ必要があります。また、全身に血液を送り出すためには強い力が必要であるため、骨格筋同様に非常に強い力発揮ができるという特徴も持つというわけです。

骨格筋は自分の意思で伸ばしたり縮めたりすることができますが、心臓の収縮は自分では制御できません。このことから、骨格筋のことを随意筋、心筋のことを不随意筋と呼びます。前者は運動神経によって制御され、後者は自律神経によって制御されていることもあわせて理解しましょう。

骨格筋の特徴は、多核細胞からなり、収縮力は強いものの持久力は弱いという点です。

一方の心筋は、単核細胞からなり、収縮力も持久力もあわせ持っていましたね

平滑筋とは?

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続いては、「平滑筋」について見ていきましょう。

横紋筋である骨格筋と心筋は、ともに収縮力が強かったですが、平滑筋ではどうなっているのでしょうか。

平滑筋が存在する場所は?

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骨格筋が身体運動に関わる筋線維であり、心筋が心臓の拍動に関与する筋線維であったのに対し、平滑筋は主に、血管や内臓組織の壁を構成する筋肉となります。

平滑筋の特徴は?

平滑筋は横紋筋と異なり、その構造に横線を持ちません。アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが構成要素にあることは分かっていますが、骨格筋や心筋のように、綺麗に整列することなく散在しています。横紋筋の収縮は、整列したアクチンフィラメントの間をミオシンフィラメントが移動する「滑り説」で説明できますが、アクチンフィラメントやミオシンフィラメントが散在している平滑筋がどのようにして収縮しているかは分かっていません。

平滑筋は主に内臓に分布する筋線維ですが、その収縮運動のことをぜん動運動と呼びます。食べたものが、食道を経由した後に、胃や小腸、大腸といった消化管の中を運ばれるのは、このぜん動運動によるものです。この蠕動運動は、収縮力は乏しいものの、長時間持続することが可能な特徴を持っています。

平滑筋は心筋同様に自分の意思では動かせないため、不随意筋に分類され、自律神経による支配を受けていることも知っておきましょう。

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横紋筋と平滑筋の復習

横紋筋と平滑筋の復習

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それでは、これまでの内容から重要なポイントを抽出して復習しましょう。

まず横紋筋ですが、これには骨格筋心筋が含まれています。それぞれ、アクチンフィラメントミオシンフィラメントがきれいに整列した構造を持っており、さらにZ帯と呼ばれる仕切りによって、サルコメアと呼ばれる単位に分割されていました。このZ帯が顕微鏡で見た際にちょうど横線に見えることから、横紋筋という名前がついていましたね。それぞれの筋線維の特徴として、骨格筋は強い収縮力を持つものの持久力に乏しい点、心筋は、収縮力が強く持久力もあわせ持つ点がありました。

次に平滑筋ですが、これは主に、血管の壁や内臓の壁を構成する筋線維のことを指します。アクチンフィラメントとミオシンフィラメントを含む点は骨格筋や心筋と同じですが、最大の違いは、それらがきれいに配列されていない点でした。骨格筋や心筋の収縮は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが相互作用する「滑り説」により説明できますが、平滑筋がどのようにして収縮しているかは今のところは分かっていません。

横紋筋と平滑筋はさらに細かく区分できる

今回は横紋筋と平滑筋について、それぞれの機能や特徴について解説しました。

今回の記事では深く踏み込みませんでしたが、持久力に乏しいと解説した骨格筋の中でも、さらに持久力に乏しいタイプ2B線維というものが存在したり、持久力が比較的あるタイプ1線維と呼ばれる線維が存在したりしています。平滑筋も、単元性平滑筋多元性平滑筋というようにさらに細かく分類することが可能です。

興味がありましたら、ぜひ詳細を自分自身で調べてみてくださいね。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 5分で分かる「横紋筋」と「平滑筋」それぞれの違いを東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
タンパク質と生物体の機能理科生物

5分で分かる「横紋筋」と「平滑筋」それぞれの違いを東大生物学科卒が分かりやすくわかりやすく解説

今回のテーマ「横紋筋」と「平滑筋」について見ていこう。
高校生物で学習する範囲に含まれる知識ですが、詳細を覚えている人は少ないでしょう。
今回は、高校で生物を履修していない人にも分かりやすくなるように、東大生物学科卒で生物に詳しいライターAEON2と一緒に解説していきます。

ライター/AEON2

東京大学理学部生物学科出身で、在学中は塾講師として高校受験生物の指導をすること多数。また高校時代には、国際生物学オリンピックの国内選考で銅メダルを受賞した経験あり。趣味はボディビルディング。

横紋筋とは?

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今回は、「横紋筋」と「平滑筋」について解説していきます。それぞれの特徴や違いを理解することを目標として、まず初めに、横紋筋から見ていきましょう。

横紋筋の特徴は?

横紋筋とは、その名称通りに、横方向に縞模様の入った構造を観察できる筋肉のことです。

筋肉は筋繊維筋線維)と呼ばれる細い線維が集まってできていますが、この筋線維は、さらに細い筋原線維と呼ばれる線維が集合することで成り立っています。筋原線維を構成するのは、アクチンフィラメントミオシンフィラメントと呼ばれる細い紐状の構造ですが、このアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが規則正しく配列されると同時に、Z帯と呼ばれる構造で区切られているのが横紋筋の特徴です。顕微鏡で見た際に、ちょうどこのZ帯が横方向の線に見えるため、横紋筋と呼ばれます。

ちなみに、Z帯とZ帯の間の区間のことをサルコメアと呼び、これが筋肉の収縮を生み出す最小単位になっているというわけです。横紋筋の収縮は、アクチンフィラメントに沿ってミオシンフィラメントが移動することによって生じ、この現象のことを「滑り説」と言います。

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