この記事では「大山鳴動」について解説する。

端的に言えば大山鳴動の意味は「噂が大きな割に大した内容ではないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「大山鳴動」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「大山鳴動」の意味や語源・使い方まとめ

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大山鳴動は「たいざんめいどう」と読みます。それでは、さっそく「大山鳴動」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「大山鳴動」の意味は?

大山鳴動には、次のような意味があります。

騒ぎだけ大きくて、結果は意外に小さいことのたとえ。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「大山鳴動」

文字だけを見ると、騒ぎが大きいのはイメージできますが、結果が小さいことはわかりませんね。実は、「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの一部になっている熟語です。このことわざの意味が、そのまま熟語の意味になっています

「大山鳴動」の由来は?

大山鳴動は「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの一節から生まれた熟語で、意味はこのことわざとまったく同じです。そこでここでは、「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの由来について解説します。

日本語のことわざとしては珍しく、翻訳した西洋のことわざに由来する言葉です。古代ローマの詩人ホラティウスの詩からとられたもので、「Parturiunt montes, nascitur ridiculus mus.」(山々が産気づき、滑稽な鼠が一匹生まれる)が原文となっています。古代ローマの中心都市のひとつだったイタリアとその周辺には、世界的に有名な火山がいくつもありました。もちろん、古代ローマ時代にも火山活動が活発化したことは何度もあったようです。火山活動が活発になれば、噴煙が上がり、地震が起こり、動物たちが逃げ出して、大変な騒ぎになったはずですね。ところが、それだけ騒いでいても火山活動が収束し、何事もなかったかのように静まり返ってしまうことも多かったようです。

一方、当時の出産では無痛分娩などなく、妊婦さんの出産は大変な痛みを伴うものでした。この妊婦さんの様子と、火山活動の様子を重ねて、「山々が産気づき」という表現になったようです。それだけの大騒ぎだったのにねずみが一匹飛び出して来ただけだった、ということから、大騒ぎした割に結果は大したものではなかった、という意味につながっています。

\次のページで「「大山鳴動」の使い方・例文」を解説!/

「大山鳴動」の使い方・例文

先に説明した通り、大山鳴動だけを単独で使用することはほとんど考えられません。本来のことわざとして、「大山鳴動して鼠一匹」という形で使われる場合がほとんどです。それでは、この言葉を用いた例文をみていきましょう。

大山鳴動して鼠一匹とは言うが、台風が上陸する予報であれだけ大騒ぎしていたのに、けっきょく小雨が降っただけだった。

大山鳴動して鼠一匹になってしまうと格好がつかないので、結果がはっきりわかるまでもう少し待とう。

・トップチームで活躍した超大物と聞いていたが、大山鳴動して鼠一匹とはこのことだ。

これらの例文では、すべて「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの形で用いています。

1つめの例文では、台風上陸という予報に世間が大騒ぎしていたが、実際には小雨だった、という様子を表現していますね。

2つ目の例文は、自分が発信した情報が誇張になってしまうと困る、という主旨の表現です。

3つめの例文では、トップチームで活躍していたスポーツか何かの選手が期待外れだった様子を表しています。

これらの例文をみてわかる通り、あまりポジティブな表現でこの言葉を用いることはありません。結果的に大したことではなかった場合や、期待したほどの結果ではなかった場合に使われる表現です。

「大山鳴動」の類義語は?違いは?

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大山鳴動は、噂話ばかり大きくて結果は大したことではなかったことを示す言葉です。それでは、類義語をみていきましょう。

「竜頭蛇尾」

竜頭蛇尾は「りゅうとうだび」と読みます。文字通り、頭は勇ましい竜なのに尾はただの蛇だった、という意味です。

この言葉は中国の故事に由来する言葉で、宋の時代に書かれた仏教の資料「景徳伝灯録」に最初の出典があります。

修行僧だった陳が、ある僧侶と議論になりました。その僧侶は威厳をもって話していましたが、実力を見抜いた陳が質問を切り返したところ、どんどんしりすぼみになってしまったのです。このことを例えて、「竜頭蛇尾」と表現したのが始まりとされています。このことから、見た目や最初の始まりは勇ましく威厳があっても、最後には衰えて振るわなくなってしまう、という意味になったのです。大山鳴動とよく似た表現といえるでしょう。

\次のページで「「有頭無尾」」を解説!/

「有頭無尾」

有頭無尾は「ゆうとうむび」と読みます。頭があるのに尾がない、つまり、始めた物事を途中でやめてしまうことをいう表現です。言い出したことを途中で投げ出してしまう、中途半端な様子を著した言葉ですね。中国語の慣用句なので、日本語の四字熟語としてはあまり一般的ではありませんが、意味としては十分通じるものがあります。

大山鳴動とは少しニュアンスが違いますが、「会社を立ち上げて大金持ちになると息巻いていたのに、資金繰りに苦労して会社を作ることもせず終わってしまった」など、状況によってはほとんど同じ意味で使うことができるでしょう。

「大山鳴動」の対義語は?

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次に、大山鳴動の対義語をみていきましょう。

「初志貫徹」

初志貫徹は「しょしかんてつ」と読みます。「初めの志を徹して貫く」という文字の通り、はじめに立てた目標を貫き通して達成することをいう表現です。「初心忘るるべからず」という世阿弥の言葉と混同されるケースがありますが、「初心忘るるべからず」は初志貫徹とは少し意味が違い、特に語源となっているわけではないので注意しましょう。

類義語で挙げた有頭無尾のところで述べた例のケースでいえば、まさに大山鳴動の対義語であるといえるでしょう。もちろん、そもそもの初志貫徹の意味は、最初に立てた目標の達成なので、大山鳴動の反対となる場面でしか使えない、ということもありません。

「終始一貫」

終始一貫は「しゅうしいっかん」と読みます。はじめから終わりまで、考え方や目標、態度などを変えないことを指す言葉です。熟語の中に出てくる「一貫」とは、ひとつの態度や方法などをはじめから終わりまで変えずに貫き通すという意味で、最初に「終始」とつけることで意味を強調した熟語となっています。あまりネガティブなイメージのある言葉ではなく、良いことを貫き通した場合に用いられることの多い言葉といえるでしょう。竜頭蛇尾などとは正反対の言葉なので、大山鳴動とも対義語関係にあるといえます。

「有終完美」

有終完美は「ゆうしゅうかんび」と読みます。何事も終わりが肝心であり、最後まで立派に物事をやり遂げることをいう言葉です。よく似た表現に「有終の美」という言葉もあります。この言葉も、始めた物事を最後までやり遂げることを美とした表現になっており、噂ばかり大きくて結果の伴わない大山鳴動とは反対の関係にある言葉といえるでしょう。

\次のページで「「大山鳴動」を使いこなそう」を解説!/

「大山鳴動」を使いこなそう

今回の記事では、大山鳴動の意味や由来、使い方について説明しました。大山鳴動という言葉だけでは、大きな山が鳴り動いているという意味になり、あまり文字から意味の想像がつきませんが、「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの一部であることを知っていると、その意味を正確に理解することができるでしょう。このことわざも、元々は古代ローマの詩に由来する言葉だというところも大変興味深いところです。

また、類義語、対義語についてもいくつかご紹介しました。今回紹介した類義語と対義語は完ぺきな対応関係にはありませんが、大まかな意味としては類義語、対義語の関係になっています。大山鳴動とともに覚えて、使いこなせるようにしておきましょう。

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【四字熟語】「大山鳴動」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「大山鳴動」について解説する。

端的に言えば大山鳴動の意味は「噂が大きな割に大した内容ではないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「大山鳴動」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「大山鳴動」の意味や語源・使い方まとめ

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大山鳴動は「たいざんめいどう」と読みます。それでは、さっそく「大山鳴動」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「大山鳴動」の意味は?

大山鳴動には、次のような意味があります。

騒ぎだけ大きくて、結果は意外に小さいことのたとえ。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「大山鳴動」

文字だけを見ると、騒ぎが大きいのはイメージできますが、結果が小さいことはわかりませんね。実は、「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの一部になっている熟語です。このことわざの意味が、そのまま熟語の意味になっています

「大山鳴動」の由来は?

大山鳴動は「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの一節から生まれた熟語で、意味はこのことわざとまったく同じです。そこでここでは、「大山鳴動して鼠一匹」ということわざの由来について解説します。

日本語のことわざとしては珍しく、翻訳した西洋のことわざに由来する言葉です。古代ローマの詩人ホラティウスの詩からとられたもので、「Parturiunt montes, nascitur ridiculus mus.」(山々が産気づき、滑稽な鼠が一匹生まれる)が原文となっています。古代ローマの中心都市のひとつだったイタリアとその周辺には、世界的に有名な火山がいくつもありました。もちろん、古代ローマ時代にも火山活動が活発化したことは何度もあったようです。火山活動が活発になれば、噴煙が上がり、地震が起こり、動物たちが逃げ出して、大変な騒ぎになったはずですね。ところが、それだけ騒いでいても火山活動が収束し、何事もなかったかのように静まり返ってしまうことも多かったようです。

一方、当時の出産では無痛分娩などなく、妊婦さんの出産は大変な痛みを伴うものでした。この妊婦さんの様子と、火山活動の様子を重ねて、「山々が産気づき」という表現になったようです。それだけの大騒ぎだったのにねずみが一匹飛び出して来ただけだった、ということから、大騒ぎした割に結果は大したものではなかった、という意味につながっています。

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