教師としては中途半端な自分が言うことではありませんが、受験指導や生徒指導をしていると、自分の中の教師としての血が騒ぎだすんですね。何とかして生徒たちをいい方向に進めさせてあげたい…。おや?「血が騒ぐって物騒です」って顔してますね。

この「血が騒ぐ」という言葉、実はそこまで物騒な意味ではないんですよ。今回はその「血が騒ぐ」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「血が騒ぐ」の意味や使い方は?

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「血が騒ぐ」という言葉、何度か見聞きしたことがある人が多いのではないでしょうか。「血」という字が物騒な雰囲気を醸し出していますが、実際はそこまで物騒な意味ではありません。まずは、「血が騒ぐ」の意味や使い方を確認していきましょう。

「血が騒ぐ」の意味は「気持ちが高ぶり落ち着いていられなくなる」

最初に、「血が騒ぐ」の意味を辞書の記述を参考に確認していきましょう。「血が騒ぐ」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

気持ちが高ぶって、落ち着いていられなくなる。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆血が騒(さわ)・ぐ」

「血が騒ぐ」は「気持ちが高ぶり落ち着いていられなくなる」という意味の慣用句です。「血」という字から物騒な意味を想像してしまいますが、そこまで物騒な意味ではありません。興奮することによって体内をめぐる血の流れが感じられるようになる様子から生まれた言葉だと考えられています

なお、「悪い予感や不安から気が落ち着かない」という意味では使用しません。この場合は「が騒ぐ」という表現を使います。似ていますので混同しないように注意しましょう。

「血が騒ぐ」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「血が騒ぐ」の使い方を例文とともに解説していきましょう。

「血が騒ぐ」という言葉を単独で使って「興奮する」という意味を表すこともできますが、「○○としての血が騒ぐ」「○○の血が騒ぐ」という言い方で、「ある様子を見て、ある立場の人間として興奮する・やる気が出る・落ち着いていられなくなる」という意味を表すこともできます

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1.受験本番まであと1週間。緊張と同時に血が騒ぐのも感じる。
2.他のクラスの生徒でも、困っている生徒を見ると先生としての血が騒いでどうしても助けてあげたくなる。
3.自分は怪我で現役を若くして引退したが、テレビで試合を見ると、元サッカー選手の血が騒いで仕方がない。

例文1は、「血が騒ぐ」という言葉を単独で使って「興奮する」という意味を表す場合の例です。ここでは「緊張と同時に興奮もしてきた」という意味を表していますね。

例文2は、「困っている生徒を見ると、先生として落ち着いていられなくなり、どうしても助けてあげたくなる」という意味で「血が騒ぐ」が使用されています。困っている生徒を見ると助けたくなる先生、まさに先生の鑑ですね。

例文3は、怪我で引退をした元サッカー選手がテレビで試合を見ると、「現役のころを思い出したり、自分ならどうプレーするかを考えたり、自分がこの試合に出たかったと考えたりなどして、いてもたってもいられなくなる」という意味合いで「血が騒ぐ」が使用されています。若くして引退しただけに悔しさや未練が残っていると言えるでしょう。

「血が騒ぐ」の類義語は?

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次に、「血が騒ぐ」の類義語をご紹介します。「血が騒ぐ」の類義語は「血が沸く」「腕が鳴る」「勇み立つ」です。それぞれの意味の確認と、「血が騒ぐ」との確認をこのコーナーでは行っていきます。

「血が沸く」:感情が高揚する

「血が沸く」は「感情が高揚する」という意味の慣用表現です。血液が沸騰するようなレベルの興奮を表します。「沸く」という字は「湧く」と書いても問題はありません。

「血が騒ぐ」とは意味やニュアンスの違いはありませんが、「○○としての血が沸く」という言い方はあまりしません。「○○としての血が騒ぐ」という言い方の方が一般的です。

「腕が鳴る」:自分の力を発揮したくて、じっとしていられない

「腕が鳴る」は「自分の力を発揮したくて、じっとしていられない」という意味の慣用句です。腕をブンブン振り回したときに音が立つ様子…から生まれた言葉だとされています。

「血が騒ぐ」との違いは、使用場面が「腕が鳴る」の場合は限定される点です。「腕が鳴る」は「自分の力を発揮したい」と思った上で興奮している場面でしか、使用することはできません

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「勇み立つ」:勇気をみなぎらせて気力が沸き起こる

「勇み立つ」は「勇気をみなぎらせて気力が沸き起こる」という意味の慣用句です。自ら勇気を持ったり、他者から勇気をもらったりして、気持ちが高ぶったことを表す表現ですね。

「血が騒ぐ」との違いは、「勇み立つ」には「勇気をみなぎらせて」というニュアンスが必ず加わる点です。ただ、使用場面や意味に違いはほとんどありません。

「血が騒ぐ」の英語表現は?

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続いて、「血が騒ぐ」の英語表現を見ていきましょう。もちろん「血」と「騒ぐ」という言葉をそのまま直訳しても「血が騒ぐ」という意味を表すことはできません。慣用句は意味から英訳を考えることが大切です。

「get excited」:気持ちが高ぶる

「get excited」は「気持ちが高ぶる」という意味の英語表現です。「血が騒ぐ」の根幹の意味が「気持ちが高ぶる」ですから、翻訳としては問題はないでしょう。例文は以下の通りです。

1.Today is the day before the exam and I am getting very excited.
今日は試験前日だが、とても血が騒いできた。

2.I get excited as a former high school baseball player when I watch baseball.
野球を見ると、元高校球児としての血が騒ぐ

「be thrilled」:ゾクゾクする・ワクワクする

「be thrilled」は「ゾクゾクする」「ワクワクする」という意味の英語表現です。「ゾクゾク」も「ワクワク」も気持ちが高ぶっていることを表す英語表現であるため、「血が騒ぐ」の訳語として問題なく使用できます。例文を見てみましょう。

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1.Tomorrow's final game, I am now thrilled.
明日の決勝戦、今から血が騒いでいる

2.Tom said he was very thrilled as a police officer when he raided the robbers' hideout.
トムは、強盗犯のアジトに突入したときは、警察官としてとても血が騒いだという。

あなたは何に「血が騒ぎます」か?

今回は「血が騒ぐ」について解説しました。「血が騒ぐ」は「気持ちが高ぶり落ち着いていられなくなる」という意味の慣用句です。この記事を最後までお読みくださった方は、そこまで物騒な意味ではないというのがお分かりいただけたのではないでしょうか。

私はスポーツを見ると血が騒ぐタイプの人間です。皆さんは何に血が騒ぎますか?

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国語言葉の意味

そこまで物騒ではない?「血が騒ぐ」の意味や使い方、類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

教師としては中途半端な自分が言うことではありませんが、受験指導や生徒指導をしていると、自分の中の教師としての血が騒ぎだすんですね。何とかして生徒たちをいい方向に進めさせてあげたい…。おや?「血が騒ぐって物騒です」って顔してますね。

この「血が騒ぐ」という言葉、実はそこまで物騒な意味ではないんですよ。今回はその「血が騒ぐ」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「血が騒ぐ」の意味や使い方は?

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「血が騒ぐ」という言葉、何度か見聞きしたことがある人が多いのではないでしょうか。「血」という字が物騒な雰囲気を醸し出していますが、実際はそこまで物騒な意味ではありません。まずは、「血が騒ぐ」の意味や使い方を確認していきましょう。

「血が騒ぐ」の意味は「気持ちが高ぶり落ち着いていられなくなる」

最初に、「血が騒ぐ」の意味を辞書の記述を参考に確認していきましょう。「血が騒ぐ」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

気持ちが高ぶって、落ち着いていられなくなる。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆血が騒(さわ)・ぐ」

「血が騒ぐ」は「気持ちが高ぶり落ち着いていられなくなる」という意味の慣用句です。「血」という字から物騒な意味を想像してしまいますが、そこまで物騒な意味ではありません。興奮することによって体内をめぐる血の流れが感じられるようになる様子から生まれた言葉だと考えられています

なお、「悪い予感や不安から気が落ち着かない」という意味では使用しません。この場合は「が騒ぐ」という表現を使います。似ていますので混同しないように注意しましょう。

「血が騒ぐ」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「血が騒ぐ」の使い方を例文とともに解説していきましょう。

「血が騒ぐ」という言葉を単独で使って「興奮する」という意味を表すこともできますが、「○○としての血が騒ぐ」「○○の血が騒ぐ」という言い方で、「ある様子を見て、ある立場の人間として興奮する・やる気が出る・落ち着いていられなくなる」という意味を表すこともできます

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