この記事では「札付き」について解説する。

端的に言えば札付きの意味は「悪い評判が定着していること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「札付き」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「札付き」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「札付き」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「札つき」と表記されることもあり、読み方は「ふだつき」です。

「札付き」の意味は?

「札付き」には、次のような意味があります。まずは辞書の意味を確認してから、さらに詳しい意味をチェックしていきましょう。

1.札がついていること。特に、商品に正札がついていること。また、そのもの。
2.定評のあること。特に、悪い評判が定着していること。また、その人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「札付き」

辞書の意味の1.は実際に札がついているというそのままの意味となっており、2.のほうの「定評のあること」が慣用句としての意味です。

慣用句としての意味は「定評のあること」ですが、悪い評判が知れわたっていたり定着しているということを表しています。「悪い」というのは、一般社会でいうと犯罪レベルであったり犯罪スレスレの行為、素行不良など、その悪さの度合いとしては強いものになっていますよ。

「札付き」の語源は?

次に「札付き」の語源を確認しておきましょう。

「札付き」の由来は、江戸時代にさかのぼります。簡単に言うと、危険人物に対して戸籍に札が付けられたということです。

江戸時代には、罪を犯すと家族や隣近所まで刑罰が及ぶ「連座(れんざ)」という制度がありました。そういった罪を犯すおそれのある子の場合、勘当して戸籍にあたる「人別帳(にんべつちょう)」から抹消を願い出て認められると帳外となります。

そののち、勘当すると同時に帳外となるようになり、さらには、要注意人物には村役人が帳外扱いにして人別帳に札を付けておいたことから「札付き」と呼ばれるようになったということです。

\次のページで「「札付き」の使い方・例文」を解説!/

「札付き」の使い方・例文

「札付き」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.昔は札付きのワルと言われた彼だったが、現在は周囲に気配りできる人になっている。
2.A社は何度も違法まがいの商売をしてきたので、業界の人なら札付きだと知っている。

いずれの例文も、過去に悪事を重ねてきたことについて書かれています。例文1.は、若いころは素行が悪かったという彼が、現在は人の気持ちを考えられる人になっていることです。

例文の2.のほうは、商売において法に触れるレベルのやり方で他社を出し抜いてきたA社について、そういった情報は同業の人であれば誰でも知っているということが書かれています。

「札付き」の類義語は?違いは?

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それでは、「札付き」の類義語についての説明です。悪い評判が定着しているという「札付き」に関連する表現について、一緒に見ていきましょう。

「悪名高い」

「札付き」の類義語には、「悪名高い(あくみょうだかい)」があります。意味は、悪い評判が広く知れわたっているということです。「悪名」は悪い評判のこと、「高い」は声が大きいという意味から転じて知れわたっているということを表しています。

「悪名高い」の悪事の内容は、「札付き」同様に犯罪やそれに近いこと、人を出し抜くなど人道に反すること、素行の悪いこと全般を指していますよ。

\次のページで「「泣く子も黙る」」を解説!/

「泣く子も黙る」

もう一つの類義語には、「泣く子も黙る(なくこもだまる)」があります。聞き分けなく泣いている子供が泣くのをやめるほど恐ろしい存在であるという意味です。ここでいう恐ろしさとは、その人の過去の武勇や悪行が際立っていたり、見た目に威圧感のある風貌であるということを表しています。

この慣用句の由来は、三国志(さんごくし)における魏(ぎ)の武将張遼(ちょうりょう)です。張遼の武勇は有名で、「張遼が来るぞ」と聞くと兵が浮足立つようなことがありました。のちに、泣いている子供を静かにさせるときに「泣いていると張遼がくるよ」と言って聞かせることがあったとされています。

張遼は別に悪いことをしたわけではありませんが、子供を恐がらせるために使われる言葉となってしまいました。

「札付き」の対義語は?

次に、「札付き」の対義語についての説明です。悪い評判があるのが「札付き」だったので、対義語としてよい評判があるという慣用句について、一緒に見ていきましょう。

「折り紙付き」

「札付き」の対義語には、「折り紙付き(おりがみつき)」もしくは「折り紙つき」があります。意味は、絶対に間違いないと保証できること、その価値に定評があることです。「折り紙」は保証書や鑑定書のことを表しており、そこから信用に値する価値があるという意味合いにつながっています。

「折り紙」は保証書や鑑定書という意味から、よい意味で使われるのはもちろん、「価値の高さは周知の事実である」「誰もが認めるところである」「どこでも通用する」といったニュアンスを含んでいますよ。

「指折り」

もう一つの対義語には、「指折り(ゆびおり)」があります。数あるものや人の中で、指を折りながら数えられるほど優れているという意味です。指については、実際に五つか十かということではなく、それほど少ない数であるということを表しています。別の言い方で「屈指(くっし)」と表現することもありますよ。

また、使い方としては、優れたものや人に対して使う言葉であり、悪いものを数えて「指折り」という言い方はしません。

「札付き」の英訳は?

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最後に、「札付き」の英訳についての説明です。語源の意味を含む日本語の表現とは異なりますが、意味が近い英語表現や英単語について見ていきましょう。

「notorious」

「札付き」の英訳には、「notorious」があります。意味は「有名な、悪名高い」などです。品詞は形容詞なので、「a + notorious + 名詞(悪名高い〜)」や「主語 + be動詞 + notorious + for / as 〜(主語は〜で/として悪評がある)」という形でよく使われます。

その他、「branded」があり、意味は「烙印を押された、悪いものと評価されている」です。

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「札付き」を使いこなそう

今回の記事では「札付き」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「札付き」の基本的な意味は、悪い評判が定着していることです。語源が要注意人物につけられた札のことであるため、よい評判に対して使うことはありません。類義語や対義語についても、よい評判に使うのか、悪い評判に使うのかをチェックして使い分けるといいですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「札付き」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「札付き」について解説する。

端的に言えば札付きの意味は「悪い評判が定着していること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「札付き」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「札付き」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「札付き」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「札つき」と表記されることもあり、読み方は「ふだつき」です。

「札付き」の意味は?

「札付き」には、次のような意味があります。まずは辞書の意味を確認してから、さらに詳しい意味をチェックしていきましょう。

1.札がついていること。特に、商品に正札がついていること。また、そのもの。
2.定評のあること。特に、悪い評判が定着していること。また、その人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「札付き」

辞書の意味の1.は実際に札がついているというそのままの意味となっており、2.のほうの「定評のあること」が慣用句としての意味です。

慣用句としての意味は「定評のあること」ですが、悪い評判が知れわたっていたり定着しているということを表しています。「悪い」というのは、一般社会でいうと犯罪レベルであったり犯罪スレスレの行為、素行不良など、その悪さの度合いとしては強いものになっていますよ。

「札付き」の語源は?

次に「札付き」の語源を確認しておきましょう。

「札付き」の由来は、江戸時代にさかのぼります。簡単に言うと、危険人物に対して戸籍に札が付けられたということです。

江戸時代には、罪を犯すと家族や隣近所まで刑罰が及ぶ「連座(れんざ)」という制度がありました。そういった罪を犯すおそれのある子の場合、勘当して戸籍にあたる「人別帳(にんべつちょう)」から抹消を願い出て認められると帳外となります。

そののち、勘当すると同時に帳外となるようになり、さらには、要注意人物には村役人が帳外扱いにして人別帳に札を付けておいたことから「札付き」と呼ばれるようになったということです。

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