
簡単に言えばコーヒーやお茶、ワインなど、粒子を含んだ液体によるシミのでき方に関する話です。
身近な液体の科学を生物化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi
理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。
1.コーヒーリング効果

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今回のテーマは私たちの生活において誰しも一度は目にしているであろう「リング状のシミ」について解説していきます。上の写真のように、コーヒーをこぼしてしまったことはあるでしょうか。バシャっとこぼしてしまったもの、滴状のもの、コーヒーカップの底の形をしたもの…シミには様々な形がありますね。しかしよく見てみてください。どのシミも外側の縁が濃くなっているように見えませんか?カップの底の形をしたものにおいては円の内側と外側両方の縁部分が濃くなっているのがわかりますね。
コーヒーリング効果(コーヒーリング現象)とは、粒子を含む液体が蒸発した後に見られるリング状の蒸発残渣物のことです。コーヒーは水とその他の物質を含む混合物ですね。このリングはその中に含まれる粒子の集まりであり、コーヒーの濃度が高ければ高いほどリングの部分は濃く太く変化します。
1-1.コーヒー以外の液体でも

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これはコーヒーのシミがきっかけになったことから「コーヒー」リング効果とされていますが、コーヒー以外の液体でもこの現象は見られます。例えば緑茶、紅茶、ワイン、醤油など様々です。
試しにノートに色付きの飲み物を一滴垂らしてみましょう。乾くまで少し時間がかかりますが、リングができる様子を観察してみてもいいですね。
2.コーヒーリングはなぜできる?

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それではなぜこのようなリングができるのか考えてみましょう。
リングができるのは液滴を放置して自然乾燥したときです。液体は表面張力によってドームのような形をとります。この図は液滴を横から見たときの図です。紙や机の上に落ちた液滴は空気と面する部分から徐々に蒸発していきます。また、周縁部分が最も乾燥速度が速いところです。そのため滴内部では中心から縁への流れが生じています。水は徐々に蒸発しますが、液体に溶け込んでいる粒子はそのまま滴内部にとどまるため、この流れに沿って粒子は縁へと移動していくのです。全ての水が蒸発してもこの粒子の集まりはリング状に残り、コーヒーのように色素を含むものはよりくっきりした跡ができるでしょう。
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