

今回はそんな「アショーカ王」について歴史オタクのライターリリー・リリコと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/リリー・リリコ
興味本意でとことん調べつくすおばちゃん。座右の銘は「何歳になっても知識欲は現役」。大学の卒業論文は義経をテーマに執筆。日本史のほうで仏教について様々な解説記事を作成。今回の「アショーカ王」は仏教を守護した重要な王様のため解説する。
お釈迦様が予言した理想の王
その昔、仏教の開祖「釈迦(釈尊)」が生きていた時代のことです。ある日、お釈迦様が弟子のアーナンダーを連れて托鉢(信者の家を巡って食料を乞う修行)を行っていると、徳勝童子と無勝童子というふたりの子どもがお釈迦様の姿を見て喜んでやってきました。しかし、子どもたちはお釈迦様に供養(捧げる)するものを何も持っていません。そこで徳勝童子は土で作った餅を供養し、無勝童子は手を合わせました。
土の餅なので食べることはできませんが、子どもたちのその尊い行いを見たお釈迦様はアーナンダーにこう言います。
「この子たちは、私が入滅(僧侶が死ぬこと)して100年後、パータリプトラで転輪聖王になるでしょう。そして、仏法で国を治め、八万四千の仏塔を建立し、命あるすべてのものに安息をもたらすのです」
お釈迦様のいう「転輪聖王」とは、古代インドの思想における理想的な王様のこと。ダルマ(仏教における法)によって地上を治め、王に求められるすべての条件を備えた完璧な王様のことです。
このようにお釈迦様は徳勝童子と無徳童子が来世で理想の王となると予言した、と仏教の経典『雑阿含経』に書かれていました。
そうして、お釈迦様の入滅から100年後。古代インドのマガダ国マウリア朝の首都パータリプトラにて、三代目の王となる「アショーカ」が誕生します。このアショーカ王の前世こそが、お釈迦様に土の餅を供養した徳勝童子なのです。
古代インドの「マガダ国マウリヤ朝」
アショーカ王が治めることとなる「マガダ国マウリヤ朝」はどのように成立した国だったのか、先に解説しましょう。
古代インドでは十六の大国がお互いに争っていました。そのひとつ、ガンジス川下流域を支配していたのが「マガダ国ナンダ朝」です。ナンダ朝は非常に強い軍事力をもって領土を広げ、ガンジス川流域に広大な帝国を築き上げていました。
しかし、紀元前4世紀末ごろ、マガダ国の青年「チャンドラグプタ」がナンダ朝に対して挙兵します。ナンダ朝の王ダナナンダはすぐに将軍を派遣して鎮圧にあたらせますが、チャンドラグプタは将軍との戦いに勝ち、さらにはダナナンダ王を倒してナンダ朝を滅ぼしました。そうして、チャンドラグプタは首都パータリプトラにて新たに「マガダ国マウリヤ朝」をたてたのです。
さらにチャンドラグプタはインド北西部を手中におさめようと、当時インダス川流域を制圧していたセレウコス朝の排除に乗り出します。セレウコス朝はマケドニアのアレクサンドロス大王(イスカンダル)の死後、彼の後継者のひとり「セレウコス1世」が受け継いで立てた王国です。
チャンドラグプタは軍事力でセレウコス朝までも圧倒し、領土をインダス川の向こう側にまで伸ばしました。こうしてマガダ国マウリヤ朝はガンジス川流域、インダス川流域、そして中央インドの一部を領土とするインド初の統一帝国を築いたのです。

紀元前のインドは十六大国が互いにしのぎを削り合ういわば戦国時代のようなところだった。アショーカ王はその十六大国のひとつ、マガダ国マウリヤ朝に生まれることになるが、マウリヤ朝は戦いを勝ち抜いたインド史上最大の帝国だったんだな。
2.アショーカ王と争いの日々
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