理科生物細胞・生殖・遺伝

グリフィスが発見した形質転換とは何?医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説

君たちはグリフィスという人物を知っているでしょうか?
現代のバイオ実験では大腸菌やマウスなどの動物のDNAを編集したり欠損させたりすることで、病気の同定や新薬の開発を行っているんですが、DNA編集の基礎である形質転換を発見したのがグリフィスです。
グリフィスは高校の生物で初めて名前が登場するから、もし君がまだ高校生ではないのなら今後のためにも是非覚えておいて欲しい名前です。

今回はグリフィスが形質転換を発見したきっかけになった実験や、形質転換とは何なのかについて生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系大学院を卒業した後、医学部のバイオ系研究室で実験助手をしている。毎日DNAの解析を行い、遺伝による疾患を見つけるための実験をしているため、遺伝の法則については熟知している。

グリフィスが形質転換を発見するまで

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フレデリック・グリフィスは1879年にイギリスで生まれました。1928年、グリフィスがイギリスで軍医をしているとき世界ではスペイン風邪が大流行。このスペイン風邪の流行を抑止するため、グリフィスは肺炎のワクチンを開発することになります。グリフィスの研究はとにかく多くの患者から肺炎球菌を集めて培養し、分類することでした。

この時集めた肺炎球菌を観察すると、菌の種類によって免疫機構に対する耐性が異なっていることに気がついたのです。肺炎球菌のR型菌は菌がカプセルをもっておらず病原性がありませんが、S型菌はカプセルがあり病原性もありました。カプセルを持っていないR型菌は宿主の免疫機構に負けてしまい病原性を失ってしまいますが、S型菌はカプセルで守られているため宿主の中でも繁殖することができ、病気を引き起こすことができるのです。グリフィスはこの2種類の肺炎球菌を使ってある実験を行いました。

グリフィスの行った実験

グリフィスの行った実験

image by Study-Z編集部

グリフィスはまず病原性を持たないR株と病原性をもつS株をそれぞれ別々のマウスへ打ち込みました。当然のようにR株を打たれたマウスは死なず、S型菌を打ち込まれたマウスは死亡します。今度はS型菌を加熱して菌を殺してから別のマウスに打ち込みました。するとマウスは発病せず、死ななかったのです。続いて、加熱したS型菌に病原性がないことを確かめるために生きたR型菌と加熱したS型菌を混ぜてマウスに打込みました。すると、加熱していないS型菌を注射したときのようにマウスは発病して死んでしまったそうです。

この実験で死んだマウスを解剖してみると、マウスの体内からは生きたS型菌が見つかりました。しかもこのS型菌は増殖してもR型菌が出てくることはなく、S型菌が増え続けたそうです。R型菌はどこへ行ったのか?S型菌はどこから表れたのか?グリフィスはこの謎を解明するために更に研究を進めました。

実験結果が意味することとは?

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グリフィスは今回の実験から、死んだS型菌の中にある何らかの転換要素がR型菌を病原性のあるS型菌に転換したのではないかと考えました。そしてこの現象を形質転換と呼んだのです。

では転換要素とは一体何なのでしょうか?アメリカの細菌学者であるオズワルド・エイブリーはグリフィスの実験結果をすぐには信じませんでした。しかしグリフィスの実験は再現性があり、事実だということがわかったため1930年代から転換要素とは何なのかを探す実験が始まりました。そして、後に転換要素がDNAであることがわかったのです。

グリフィスの実験の後に行われた実験

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グリフィスは1941年、ナチス・ドイツによるロンドン大空襲によって亡くなりました。その後、グリフィスが残した「転換要素とは一体何なのか?」という課題はオズワルド・エイブリーというロックフェラー研究所の教授が引き継ぐことになったのです。エイブリーが実験を始めたのは1944年のことでした。この時すでにエイブリーは67歳。しかも太平洋戦争真っ只中だったため、実験はとても大変だったことでしょう。

エイブリーの行った実験はこのようなものでした。まず、加熱殺菌したS型菌と生きたR型菌を混ぜると生きているS型菌が現れるのでしたね。なので、加熱殺菌したS型菌に転換要素としていくつか候補があったため、それぞれ1つずつ混ぜてみます。すると、核酸と呼ばれる物質を混ぜたときのみ生きたS型菌が現れることがわかったのです。遺伝子は核酸でできている、つまりDNAがS型菌を生き返らせるのに関与しているということなんですよ。

R型菌をDNA分解酵素で処理した場合、生きたS型菌は見つかりませんでした。

\次のページで「DNAとは何か?」を解説!/

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