今回は銀河と銀河系について解説していきます。

我々の住んでいる銀河を銀河系という。この記事では銀河系を中心に銀河についても説明している。

今回は物理学科出身のライター・トオルと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

宇宙の階層構造

image by iStockphoto

我々が太陽系に住んでいて、太陽系は銀河系の中にあるということは多くの人が知っていると思います。では銀河系の外側はどうなってるのでしょうか。現在は望遠鏡が非常に高性能になり、非常に遠くまで観測できるようになっています。まずは銀河系の外側はどうなっているかを簡単に見てみましょう。

その1:局所銀河群

Local Group and nearest galaxies.jpg
Antonio Ciccolella - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

現在、観測的に見ることができる宇宙の大きさは、だいたいハッブル定数の逆数に光速度をかけた程度、つまり100億光年のオーダーです。このような大きさのスケールでの宇宙の基本的な構造要素となるものは銀河になります。我々の住む太陽系が属する銀河系は、一つの銀河ですがおよそ直径10万光年あり約2000億の星がレンズ状に集まった天体です。

銀河には、楕円銀河、我々の銀河系のように渦をまいた渦巻銀河、棒状銀河、そして不規則な球状をなしたものなどが存在しています。銀河は群れを成していて、およそ100個未満の銀河の群れが銀河群です。我々の銀河系はアンドロメダ銀河を中心とした40個ほどの銀河の群れである、局所(局部)銀河群に属しています。上記の画像は、局所銀河群の想像図です。

その2:階層構造

ESO-M87.jpg
Chris Mihos (Case Western Reserve University)/ESO - http://www.eso.org/public/images/eso0919a/ Compare also to WikiSky DSS2 image at: http://www.wikisky.org/?ra=12.430147459292154&de=12.871871317009594&zoom=7&show_grid=1&show_constellation_lines=1&show_constellation_boundaries=1&show_const_names=0&show_galaxies=1&show_box=1&box_ra=12.513722&box_de=12.391111&box_width=50&box_height=50&img_source=DSS2 Deep Virgo: Markarian's Chain: http://www.cloudynights.com/item.php?item_id=1779, CC 表示 4.0, リンクによる

おとめ座の方向に大量の銀河が密集していることが星図などからよくわかりますが、これはおよそ直径が1500万光年、2500個ほどの銀河の集団で、おとめ座銀河団と呼ばれています。このように多数の銀河の集団が銀河団です。さらに我々の局所銀河群は、おとめ座銀河団を中心とするさらに大きな銀河の集団である局所超銀河団の一員になります。超銀河団は複数の銀河団を含むような大きな塊で、1億光年程度もの大きさを持ち、隣との境界もあいまいです。このように宇宙は大きなスケールで、銀河・銀河群・銀河団・超銀河団といった階層構造をなしています。

銀河の姿と進化

image by iStockphoto

宇宙は静的ではなくダイナミックに進化しています。銀河を構成している星(恒星)も生成と消滅を繰り返しているのです。では次に渦巻銀河の特徴についても併せて見てみましょう。

\次のページで「その1:星と星間ガス」を解説!/

その1:星と星間ガス

Evolved star fusion shells.svg
User:Rursus - R. J. Hall, CC 表示 2.5, リンクによる

宇宙の大構造の基本単位である銀河は星(恒星)の集団であり、銀河の形状や内部での星の運動は誕生時の質量や角運動量などによって決まります。銀河の進化は、その基本構成要素である星の進化と星と星間ガスの相互作用によるのです。

星は天然の核融合炉であり、核融合で発生するエネルギーで輝いているので、星の内部には核融合で合成された重元素が蓄積されています。それが進化の末期に、赤色巨星から星風として流れたり、超新星の爆発で吹き飛ばされたりして星間空間に放出されるのです。銀河の中では、物質は、星間ガスの重元素量を増大させながら、星と星間空間の間を循環しています。上記の画像は、赤色巨星断面のイメージ図です。

その2:星の種族

The Sun by the Atmospheric Imaging Assembly of NASA's Solar Dynamics Observatory - 20100819.jpg
NASA/SDO (AIA) - http://sdo.gsfc.nasa.gov/assets/img/browse/2010/08/19/20100819_003221_4096_0304.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

銀河形成直後に生まれる星は種族3の星と呼ばれます。重元素がないため太陽質量程度の通常の星は作られず、種族3の星の質量は太陽質量の数十倍程度ではないかと推定されているようです。我々の銀河系には金属量が太陽の金属量と比較してきわめて少ない星が、小さい年老いた星のあつまりである球状星団などに存在しており、これらは種族2の星です。種族2の星の金属量は太陽系の一桁程度少ないものから10万分の1以下のものまで見つかっています。太陽程度の金属量をもった星は種族1の星です。上記の画像は、太陽の画像になります。

その3:渦巻銀河

NGC 4414 (NASA-med).jpg
The Hubble Heritage Team (AURA/STScI/NASA) NASA Headquarters - Greatest Images of NASA (NASA-HQ-GRIN) - http://nix.larc.nasa.gov/info;jsessionid=1sl2so6lc9mab?id=GPN-2000-000933&orgid=12 http://imgsrc.hubblesite.org/hu/db/images/hs-1999-25-a-full_tif.tif, パブリック・ドメイン, リンクによる

渦巻銀河を構成する星はその中心の回りを回っています。星は円盤状に分布しているだけでなく、円盤上部から観測すると、名前のとおり渦を巻いているのです。渦巻の腕には生まれて間もない明るい大質量星がありますが、これは銀河の回転によって渦巻状の星間ガスのパターンが形成され、星形成率が高くなったためであると考えられています。重力不安定性によるパターン形成の理論によれば、この渦巻構造が安定に存在するためには、円盤を取り囲むハロー領域に、銀河円盤より大きな質量の物質が充満していなければなりません。この見えない質量のことを暗黒物質もしくは、ダークマターといいます。上記の画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した渦巻銀河の画像です。

その4:ハローの証拠

銀河の中心の周りをケプラー運動している星や星間ガスの回転速度は、その軌道半径とそれより内側にある質量で決まります。ある半径を境にしてそれより外側には質量がない、すなわち外側では半径が増えてもその内側にある質量は一定ならば、回転速度は半径のマイナス二分の一乗で減少するはずです。しかし、実際に渦巻銀河の回転を測定してみると、外側でもほとんど減少しません。これは外側に向かってその半径内に含まれる質量がどんどん増大していることを示しています。このことより求められる渦巻銀河の質量は、光っている星の総量として推測される質量の10倍以上にもなるのです。これがハローが存在する証拠と考えられています。

銀河系

我々のいる銀河を銀河系といいます。この銀河系は典型的な渦巻銀河のようです。我々の住む銀河系について見てましょう。ちなみに、我々の銀河はいずれお隣のアンドロメダ銀河と衝突するようです。このような銀河同士の衝突合体は宇宙で頻繁に起こってることが確認されています。

\次のページで「その1:銀河系」を解説!/

その1:銀河系

銀河系の想像図
NASA/JPL-Caltech/ESO/R. Hurt - http://www.eso.org/public/images/eso1339e/, パブリック・ドメイン, リンクによる

我々の太陽系が属する銀河は、天の川銀河、もしくは銀河系とよばれています。銀河系はおよそ直径10万光年、約二千億個の星が凸レンズ上に集まった渦巻銀河です。凸レンズの中心部は厚くなって盛り上がっており、バジルと呼ばれています。円盤部分は中心のまわりに回転していて、中心部を除けば円盤の広い範囲にわたって回転速度がほぼ一定であるので、外側ほど回転周期は長いのです。地球から観測すると銀河系中心はいて座の方向にあり、太陽は銀河系中心から2万5000光年の位置にあって、220km/sで回転運動をしています。上記の画像は、銀河系の想像図です。

その2:銀河系の星

円盤の質量の8-9割は星であり、星間ガスは1-2割ほどです。銀河円盤の中には新しく生まれた若い星も観測されることから、今も星が形成され続けていることがわかります。銀河円盤は渦を巻いていますが、渦巻の腕の部分では星の形成率が高く、明るく質量の比較的大きい若い星が分布しているようです。星間物質の密度の濃い領域である暗黒星雲はさらに収縮するとその中で星が形成されます。

その3:その他の銀河系の星

オリオン大星雲 (M42)
Ole Nielsen - http://www.ngc7000.org/ccd/m42-20050206-lrgb-900.jpg, CC 表示-継承 2.5, リンクによる

星の形成の現場は多く観測されていて、生まれたての星と考えられる星も観測されています。有名なのは、オリオン座の縦三ツ星の近傍にあるオリオン星雲。暗黒星雲に隠され可視光では見えませんが、強い赤外線を放っている原始星も観測されています。ハロー領域には数万個から100万個のふるい星の集団である球状星団が見られるのです。

現在約150個ほど球状星団は知られていますが、銀河系中心を中心にして球状に分布しています。銀河系の周りには銀河系の子供銀河ともいうべき小さな銀河が10個程度回っているようです。上記の画像は、オリオン星雲の画像になります。

謎につつまれた宇宙

謎につつまれた宇宙

image by Study-Z編集部

宇宙から見れば、銀河は宇宙を構成している最小単位にみえますが、銀河系の直径10万光年は約9.5兆の10万倍キロメートルになり、矮小な人間にとっては途方もない大きさです。そのため、いかに大型の望遠鏡を使おうとも調べるのがいかに困難かがわかるでしょう。しかしながら多くの研究者の努力により宇宙の謎は少しづつ解明されていっています。これからも、きっと衝撃的な発見があるでしょう。ちなみに、宇宙の研究には日本の大学のチームをはじめ多くの日本人も貢献しています。

" /> 3分で簡単「銀河系」銀河や星間ガスなどについても理系ライターがわかりやすく解説 – ページ 3 – Study-Z
地学宇宙理科

3分で簡単「銀河系」銀河や星間ガスなどについても理系ライターがわかりやすく解説

その1:銀河系

銀河系の想像図
NASA/JPL-Caltech/ESO/R. Hurt – http://www.eso.org/public/images/eso1339e/, パブリック・ドメイン, リンクによる

我々の太陽系が属する銀河は、天の川銀河、もしくは銀河系とよばれています。銀河系はおよそ直径10万光年、約二千億個の星が凸レンズ上に集まった渦巻銀河です。凸レンズの中心部は厚くなって盛り上がっており、バジルと呼ばれています。円盤部分は中心のまわりに回転していて、中心部を除けば円盤の広い範囲にわたって回転速度がほぼ一定であるので、外側ほど回転周期は長いのです。地球から観測すると銀河系中心はいて座の方向にあり、太陽は銀河系中心から2万5000光年の位置にあって、220km/sで回転運動をしています。上記の画像は、銀河系の想像図です。

その2:銀河系の星

円盤の質量の8-9割は星であり、星間ガスは1-2割ほどです。銀河円盤の中には新しく生まれた若い星も観測されることから、今も星が形成され続けていることがわかります。銀河円盤は渦を巻いていますが、渦巻の腕の部分では星の形成率が高く、明るく質量の比較的大きい若い星が分布しているようです。星間物質の密度の濃い領域である暗黒星雲はさらに収縮するとその中で星が形成されます。

その3:その他の銀河系の星

星の形成の現場は多く観測されていて、生まれたての星と考えられる星も観測されています。有名なのは、オリオン座の縦三ツ星の近傍にあるオリオン星雲。暗黒星雲に隠され可視光では見えませんが、強い赤外線を放っている原始星も観測されています。ハロー領域には数万個から100万個のふるい星の集団である球状星団が見られるのです。

現在約150個ほど球状星団は知られていますが、銀河系中心を中心にして球状に分布しています。銀河系の周りには銀河系の子供銀河ともいうべき小さな銀河が10個程度回っているようです。上記の画像は、オリオン星雲の画像になります。

謎につつまれた宇宙

謎につつまれた宇宙

image by Study-Z編集部

宇宙から見れば、銀河は宇宙を構成している最小単位にみえますが、銀河系の直径10万光年は約9.5兆の10万倍キロメートルになり、矮小な人間にとっては途方もない大きさです。そのため、いかに大型の望遠鏡を使おうとも調べるのがいかに困難かがわかるでしょう。しかしながら多くの研究者の努力により宇宙の謎は少しづつ解明されていっています。これからも、きっと衝撃的な発見があるでしょう。ちなみに、宇宙の研究には日本の大学のチームをはじめ多くの日本人も貢献しています。

1 2 3
Share: