突然ですが君たちは染色体についてどれくらい知っているでしょうか?
染色体という単語は中学校の理科で初めて出てくるわけですが、DNAと深い関係があるということくらいは知っている人も多いことでしょう。
では、そんな染色体に異常が起こると俺たちの体には何か変化があるのでしょうか?

今回は染色体の役割と、染色体に異常が起こったときに表れる体の変化とは何かを、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系大学院を卒業した後、医学部のバイオ系研究室で実験助手をしている。毎日DNAの解析を行い、遺伝による疾患を見つけるための実験をしているため、遺伝の法則については熟知している。

染色体とは

image by iStockphoto

生き物の体はDNA(デオキシリボ核酸)の中でも遺伝子と呼ばれる配列によって決められていることをご存知でしょうか。遺伝子は塩基と呼ばれる4種類の成分で構成されており、それぞれA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)と呼ばれています。この塩基配列から決められたタンパク質が合成され、それぞれ異なる役割を持っているのです。

染色体とは、遺伝子を含むDNAが保管されている構造体のことを言います。DNAは染色体の中にあり、染色体が収められているのが体細胞の核の中です。染色体の数は生き物によって違い、ヒトだと23対46本あります。

時々耳にするヒトゲノムとは、23本の染色体のことです。23本の染色体にはヒトの全ゲノム配列が含まれています。

染色体の役割

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染色体の役割ですが、1つは先程も説明したとおりDNAを保管することです。染色体上の遺伝子は決められた順序に従って配列しており、それぞれの遺伝子は遺伝子座と呼ばれる染色体上の特定の位置に配置されています。そしてもう1つは性別を決定することです。染色体には性別を決定するための染色体(性染色体)が1対あり、どのような組み合わせかで性別が決まるんですよ。

染色体には対立遺伝子が同じ順序で配列していて、形と大きさが等しい染色体が2本あり、これを相同染色体と呼んでいます。相同染色体はそれぞれ父親と母親から1本ずつ受け継がれてきたものです。

染色体の数と性染色体

染色体の数と性染色体

image by Study-Z編集部

染色体の数は生き物によって違うことをご存知でしょうか?人の場合は1956年にチオとレヴァンによって染色体の数が23対46本であることが明らかにされました。他の動物では豚と猫が38本、犬では78本、アヒルでは80本の染色体があります。全ての染色体は対で存在しますが、研究が進むにつれて例外があることが発見されたのです。その例外とは、片方の性別では全ての染色体が対になっているのに、もう片方の性別では1組だけ対にならない染色体があることでした。

哺乳類ではオスで、鳥類ではメスに対にならない染色体があります。つまり、性別の遺伝は染色体によって決まるということです。このような染色体を性染色体と呼びます。

性染色体にはX染色体とY染色体があり、哺乳類の場合はY染色体を持っているものが男性で、X染色体のみが女性となるのです。

体細胞分裂と減数分裂のときの染色体の数

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私達ヒトを例に、体細胞分裂のときと減数分裂のときの染色体の動きについて説明していきます。

体細胞分裂とは、その名の通り体細胞が分裂して2個になることです。この分裂を有糸分裂とも呼びます。体細胞分裂では1つの細胞にある46本の染色体を複製し、2個の細胞へ分けられるのです。

一方、減数分裂は生殖細胞のみで行われる分裂なので体細胞では起こりません。また、2本で1対だった染色体は1本ずつに分けられます。これは後に精子と卵が受精した際、2つの生殖細胞が1つに合わさるためです。減数分裂の際に染色体に乗り換えが起こるため、遺伝情報の新しい組み合わせができます。生物は遺伝的に多様性である必要があるため、減数分裂により様々な遺伝子の組み合わせができるようになっているのです。

\次のページで「染色体に異常が起こるとどうなる?」を解説!/

染色体に異常が起こるとどうなる?

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1960年以降、染色体の解析技術が高くなったことで、染色体の分染法によりヒトの全染色体の識別ができるようになりました。さらに、染色体の構造に異常があった時は染色体に見えるバンドの位置でわかるようになったのです。

さて、もし染色体に異常があった場合は染色体とそれを持つヒトにどのような変化が表れるのでしょうか?例えば、染色体は減数分裂をする際にエラーが起こってしまい2本1対のはずが3本で1セットとなってしまったとします。ヒトの場合このように染色体の数が増えて異常を起こしてしまうとそれ以上育つことができなくなり、お母さんのお腹にいる間に亡くなってしまうのです。

先天性異常症とは

染色体に異常が起こっても、それが少しだけだった場合生存可能な場合もあります。その時、タンパク質を作る際に必要となるエクソンの部分に異常が起きてしまうと、本来作られないといけないタンパク質が作られません。生き物の体はタンパク質でできているため、少しでも必要なタンパク質が欠損してしまうだけで体調を崩してしまいます。

このように、染色体に異常があるために生まれてくる前の段階ですでに病気にかかっていることを先天性異常症と呼ぶのです。

染色体に異常があった時どうしたらいいのか?

染色体に異常があった場合、体に様々な変化が表れます。例えば、熱性けいれんを起こしたときに低血糖症になったり、ちょっとしたきっかけで嘔吐が止まらなくなったりです。ほとんどが小児期に表れるため、まずはお近くの病院の小児科にかかることが多いと思います。その後、主治医から専門医へ案内されると思うのでそれに従いましょう。

染色体の異常による病気なので、残念ながら治すことはとても困難です。しかし、ほとんどの病気は投薬だけで普通の人と変わらない生活を送れるため、早めの診断が重要なんですよ。

生物にとって染色体はとても大事!

染色体はDNAが保管されているとても大事な器官です。染色体には相同染色体といって、対立遺伝子が同じ場所に配列し大きさと形の等しいものが2本あります。2本ある理由は片方が父親由来、もう片方が母親由来のためです。このようにして両親から遺伝情報を受け継ぐため、生物多様性に貢献しているのですね。

染色体に異常が起こると私達の体にも生命に関わるような異常が起こります。しかし、染色体に異常が生じている場合はほとんどが遺伝によるもののため、家族にそのような症状の人がいなければだいたい大丈夫です。遺伝によって生物多様性が生まれると言っても、染色体に起きた異常も受け継がれてしまうため考えものですね。

皆さんは父親似や母親似の部分があると思いますが、これは減数分裂の際に染色体で乗り換えが起こっているからでした。自分のどこが父親や母親に似ているのかを見つけてみて、染色体の乗り換えがいかに複雑に起こっているのかを感じてみましょう!

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理科生物細胞・生殖・遺伝

「染色体」の役割とは?もし染色体に異常がおこるとどうなるのか医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説

突然ですが君たちは染色体についてどれくらい知っているでしょうか?
染色体という単語は中学校の理科で初めて出てくるわけですが、DNAと深い関係があるということくらいは知っている人も多いことでしょう。
では、そんな染色体に異常が起こると俺たちの体には何か変化があるのでしょうか?

今回は染色体の役割と、染色体に異常が起こったときに表れる体の変化とは何かを、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系大学院を卒業した後、医学部のバイオ系研究室で実験助手をしている。毎日DNAの解析を行い、遺伝による疾患を見つけるための実験をしているため、遺伝の法則については熟知している。

染色体とは

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生き物の体はDNA(デオキシリボ核酸)の中でも遺伝子と呼ばれる配列によって決められていることをご存知でしょうか。遺伝子は塩基と呼ばれる4種類の成分で構成されており、それぞれA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)と呼ばれています。この塩基配列から決められたタンパク質が合成され、それぞれ異なる役割を持っているのです。

染色体とは、遺伝子を含むDNAが保管されている構造体のことを言います。DNAは染色体の中にあり、染色体が収められているのが体細胞の核の中です。染色体の数は生き物によって違い、ヒトだと23対46本あります。

時々耳にするヒトゲノムとは、23本の染色体のことです。23本の染色体にはヒトの全ゲノム配列が含まれています。

染色体の役割

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染色体の役割ですが、1つは先程も説明したとおりDNAを保管することです。染色体上の遺伝子は決められた順序に従って配列しており、それぞれの遺伝子は遺伝子座と呼ばれる染色体上の特定の位置に配置されています。そしてもう1つは性別を決定することです。染色体には性別を決定するための染色体(性染色体)が1対あり、どのような組み合わせかで性別が決まるんですよ。

染色体には対立遺伝子が同じ順序で配列していて、形と大きさが等しい染色体が2本あり、これを相同染色体と呼んでいます。相同染色体はそれぞれ父親と母親から1本ずつ受け継がれてきたものです。

染色体の数と性染色体

染色体の数と性染色体

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染色体の数は生き物によって違うことをご存知でしょうか?人の場合は1956年にチオとレヴァンによって染色体の数が23対46本であることが明らかにされました。他の動物では豚と猫が38本、犬では78本、アヒルでは80本の染色体があります。全ての染色体は対で存在しますが、研究が進むにつれて例外があることが発見されたのです。その例外とは、片方の性別では全ての染色体が対になっているのに、もう片方の性別では1組だけ対にならない染色体があることでした。

哺乳類ではオスで、鳥類ではメスに対にならない染色体があります。つまり、性別の遺伝は染色体によって決まるということです。このような染色体を性染色体と呼びます。

性染色体にはX染色体とY染色体があり、哺乳類の場合はY染色体を持っているものが男性で、X染色体のみが女性となるのです。

体細胞分裂と減数分裂のときの染色体の数

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私達ヒトを例に、体細胞分裂のときと減数分裂のときの染色体の動きについて説明していきます。

体細胞分裂とは、その名の通り体細胞が分裂して2個になることです。この分裂を有糸分裂とも呼びます。体細胞分裂では1つの細胞にある46本の染色体を複製し、2個の細胞へ分けられるのです。

一方、減数分裂は生殖細胞のみで行われる分裂なので体細胞では起こりません。また、2本で1対だった染色体は1本ずつに分けられます。これは後に精子と卵が受精した際、2つの生殖細胞が1つに合わさるためです。減数分裂の際に染色体に乗り換えが起こるため、遺伝情報の新しい組み合わせができます。生物は遺伝的に多様性である必要があるため、減数分裂により様々な遺伝子の組み合わせができるようになっているのです。

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