少しでも自分に勢いがあると、調子に乗って余計なことを言ったりやらかしたりして失敗する人間がいますね。そういった行動を表す言葉、日本語にはいろいろあると思うんですが、あなたはどれだけ知っていますか?

今回扱う「味噌をつける」もその内の1つです。「しくじる」「面目を失う」といった意味を持ちます。その「味噌をつける」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働いている日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「味噌をつける」の意味や語源は?

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「味噌をつける」という言葉、聞いたことがないという人や、なじみがないという人も多いかもしれません。ただ、意味を覚えると身近な場面でも使用しやすい言葉ですよ。まずは、その「味噌をつける」の意味と語源を確認していきましょう。

「味噌をつける」の意味は「しくじる」「面目を失う」

最初に、辞書での「味噌をつける」の意味を確認していきましょう。「味噌をつける」は、国語辞典には次のような意味が掲載されています。

しくじる。しくじって面目を失う。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆味噌を付・ける」

「味噌をつける」は「しくじる」「しくじって面目を失う」という2つの意味を持った言葉です。「しくじる」というのは簡単に言えば「失敗する」、「面目を失う」は簡単に言えば「名誉が傷つけられる」という意味の言葉ですね。よって、単に何か失敗しただけのような場合にももちろん用いられますが、失敗をしたことで世間に顔向けができなくなってしまった場合を含めて表現することも可能です。

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「味噌をつける」の語源は…火傷の治療?

では、この「味噌を付ける」の語源は何でしょうか?一説には、かつて火傷(やけど)の治療の際に、患部に味噌を塗っていたことから来ているのではないかと言われています。火傷をしてしまった場合は、たいてい何らかの失敗が原因です。そのことから、やけどをした場合に限らず、失敗全般について「味噌をつける」という言葉を使って表すようになったのでは…と考えられています。

「味噌をつける」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「味噌をつける」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「経歴に味噌をつける」「業績に味噌をつける」といったように、「○○に味噌をつける」という形で使用されることが多いです。

1.これまで順調に政権運営を進めてきた首相だが、女性問題が発覚し、ついに味噌をつけてしまった。
2.A自動車会社は国内でも海外でも素晴らしい業績を誇っているが、安全テストでの不祥事が発覚し、その業績に味噌をつけてしまった。
3.B旅館は創業500年を誇る老舗だが、給付金の不正受給が発覚し、その歴史に味噌をつけてしまった。

例文1では、「順調に政権運営を進めていた首相が、女性問題が発覚し、ついにしくじってしまった」という文脈で「味噌をつける」が使用されています。この場合は単に「しくじる」という意味だけでなく、「面目を失う」というニュアンスも含まれていると言えるでしょう

例文2では、「安全テストでの不正が発覚し、業績に傷がつくような失敗をした」という文脈で「味噌をつける」が使用されています。「○○に味噌をつける」という場合、「その○○を傷つけてしまった」というニュアンスも加わりますね。

例文3では、「給付金の不正が発覚し、歴史に傷をつけるようなしくじりをした」という文脈で「味噌をつける」が使用されています。この場合も例文2と同様、「○○を傷つけてしまった」というニュアンスが加わっていますね。

「味噌をつける」の類義語は?

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つづいて、「味噌をつける」の類義語を確認していきましょう。「味噌をつける」の類義語は「ポカをする」「やらかす」「赤恥をかく」です。それぞれ意味を確認し、「味噌をつける」と比較してみてください。

\次のページで「「ポカをする」:思いがけない失策を犯す」を解説!/

「ポカをする」:思いがけない失策を犯す

「ポカをする」は「不注意が引き起こした、思いがけない失策を犯す」という意味の表現です。「失敗する」という意味を表す点で「味噌をつける」と共通していますね。ただ、「面目を失う」というニュアンスは、「ポカをする」にはありません。

「やらかす」:(良くないことを)やってしまう

「やらかす」は「(良くないことを)やってしまう」という意味の表現です。失敗をしてしまった場合に「やらかした」という形で使用されることが多いですね。公的な文章では用いられない俗語でもあります。こちらも「面目を失う」というニュアンスはありません。

「赤恥をかく」:失敗して恥ずかしい思いをする

「赤恥をかく(あかはじをかく)」は「失敗して恥ずかしい思いをする」という意味の表現です。「あかはじをかく」という本来の読み方ではなく、「あかっぱじをかく」という言い方をされることが多いですね。こちらは「恥ずかしい思いをする」という、「面目を失う」に近いニュアンスが含まれているといえます。

「味噌をつける」の英語表現は?

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最後に、「味噌をつける」の英語表現を確認していきましょう。「味噌をつける」の英語表現は「make a mess of」です。意味や例文を確認していきましょう。

「make a mess of 」:台無しにする

「make a mess of 」は「台無しにする」という意味の表現です。「mess」は「滅茶苦茶な状態」「ヘマ」「収拾のつかない状態」といった意味を表す単語ですね。「台無しにする」という意味以外にも、「やらかす」や「味噌をつける」の訳語としても使用されている表現です。例文を見てみましょう。

\次のページで「油断大敵!最後の最後に「味噌をつけ」ないように!」を解説!/

1.Oh my god! I made a mess of being late for an important meeting.
大変だ!大事な会合に遅刻し味噌をつけてしまった。

2.The prime minister was running his administration smoothly, but then he made a mess of committing adultery.
首相は順調に政権運営を進めていたが、不倫をし味噌をつけてしまった。

油断大敵!最後の最後に「味噌をつけ」ないように!

今回は「味噌をつける」について説明しました。「味噌をつける」は「しくじる」「しくじって面目を失う」という2つの意味を持った言葉です。単に何か失敗しただけのような場合以外に、失敗をしたことで世間に顔向けができなくなってしまった場合を含めて表現することもあります。

物事が順調に進んでいる時、人は油断をしがちです。最後の最後に油断をして「味噌をつけて」しまったら嫌ですよね。最後まで集中を切らさず頑張りましょう!

" /> 味噌は悪い意味なのか…「味噌をつける」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

味噌は悪い意味なのか…「味噌をつける」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

少しでも自分に勢いがあると、調子に乗って余計なことを言ったりやらかしたりして失敗する人間がいますね。そういった行動を表す言葉、日本語にはいろいろあると思うんですが、あなたはどれだけ知っていますか?

今回扱う「味噌をつける」もその内の1つです。「しくじる」「面目を失う」といった意味を持ちます。その「味噌をつける」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働いている日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「味噌をつける」の意味や語源は?

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「味噌をつける」という言葉、聞いたことがないという人や、なじみがないという人も多いかもしれません。ただ、意味を覚えると身近な場面でも使用しやすい言葉ですよ。まずは、その「味噌をつける」の意味と語源を確認していきましょう。

「味噌をつける」の意味は「しくじる」「面目を失う」

最初に、辞書での「味噌をつける」の意味を確認していきましょう。「味噌をつける」は、国語辞典には次のような意味が掲載されています。

しくじる。しくじって面目を失う。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆味噌を付・ける」

「味噌をつける」は「しくじる」「しくじって面目を失う」という2つの意味を持った言葉です。「しくじる」というのは簡単に言えば「失敗する」、「面目を失う」は簡単に言えば「名誉が傷つけられる」という意味の言葉ですね。よって、単に何か失敗しただけのような場合にももちろん用いられますが、失敗をしたことで世間に顔向けができなくなってしまった場合を含めて表現することも可能です。

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