
3分で簡単磁歪(磁気ひずみ)原理や具体例について理系大学院卒ライターがわかりやすく解説!
磁歪の原理

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磁歪の原理は、強磁性体に磁場(磁界)が加えられると強磁性体の原子の電子と原子核の位置が動くことです。電子は原子核の周りを自転(スピン)しながら公転しています。この運動により、電子は極微小の磁石のようにふるまうのです。また、強磁性体は磁区ごとに磁気モーメントがそろっています。
そこに磁場が加えられると、磁区内でそろっていた磁気モーメントが物質全体にわたって同じ向きに向くのです。これにより、電子と原子核の位置関係が強制的に変化し、微小な歪みが出ます。原子レベルでは極微小の変形量だとしても、物質全体で起こりれば全長は大きく変化するのです。このように、磁場によって原子の位置関係が変化し、それが物質全体で生じることにより変形する。これが磁歪・磁気ひずみの原理です。
磁区とは

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強磁性は、1区域で磁化の方向である磁気モーメントがそろっている領域があり、その領域を磁区といいます。また、磁区の境目は磁壁です。これらは結晶のように見えることもあります。
例えば、学校の教室が磁区でその壁が磁壁です。教室内にいる子供の向いている方向が磁気モーメントになります。強磁性体は、磁区内の磁気モーメントがそろっているイメージです。このように、磁区とは同じ磁気モーメントを有する強磁性体内の一つの塊になります。この状態で外部から強い磁界が加えられることで、磁区内の磁気モーメントが整列し磁気ひずみは生じるのです。
圧電素子との類似点
実は磁歪は、圧電素子の現象と似ています。その点は、外部から別の因子を与えられるとその物質自体が別の物理現象を生じる点です。
磁歪では、磁場に対して変形という応答になります。圧電素子は、クオーツのように電圧に応答して自身が変形しているのです。実は磁歪は、電圧が磁場に変わったものになります。また、磁歪を生じる物質は変形により磁場を発生させることができるのです。この現象は、ビラリ効果といいます。この効果は変形に対して磁場を発生させる特徴です。
磁歪・磁気ひずみの実用例
磁歪材料の実用例を3点、紹介します。磁歪材料に磁場をかけると変形すること、変形すると磁場を発生することが応用されているのです。
磁歪材料を用いた超音波溶接機
工業分野の利用法のひとつとして超音波溶接機があります。超音波振動により、金属を溶融させて接着させる方法です。磁歪材料にコイルを巻き、高周波を印加します。これにより、材料は高速で伸縮を繰り返すのです。この時の振動で部材に熱摩擦を与え溶着させます。このように、磁場に反応して振動する仕組みを利用した応用例があるのです。
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