今回は、今回は磁歪や磁気ひずみについて紹介していきます。磁歪やじきひずみは、電磁気の磁場に関する現象です。字のように物質に磁場を印加すると歪みが起こると考えてくれ。今回は、この磁歪、磁気ひずみについて原理や具体例を交えて、理系大学院卒のこーじに解説してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

磁歪・磁気ひずみとは

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磁歪(磁気ひずみ)とは、強磁性体など磁性を持つ物質に外から磁場を与えるとわずかに体積形状が変形する現象です。磁気ひずみや、磁気ジュール効果ともいいます。変化量は1〜10ppmのオーダー。磁歪は、物質の磁性により大きく影響が異なるのです。また、磁歪の代表的な材料は磁歪の代表的な材料はパーマロイ(鉄-ニッケル合金系)やフェライトになります。

磁性とは

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磁性は,磁場の中に置かれたときに物質が他の物質に引力や斥力を及ぼす現象の一つです。原子やそれより小さいサイズで反応する性質を持ち、磁気とも呼ばれています。磁性に影響を与えるものは大きく二つです。電子の自転と電子の原子核に対する軌道運動になります。

実は電子も地球と同じように原子核の周りを公転しながら自転しているのです。この時、磁気モーメントが生じ極微小の磁石のようにふるまうことで磁性が発生します。つまり、原子においても、磁気モーメントによる偏りが発生すれば、それは極微小の磁石といえるのです

磁性の種類

磁性には4種類に磁性があります。それらは、強磁性、反強磁性、フェリ磁性、常磁性です。

強磁性は、自発的な磁化を持っています。それは、原子の磁気モーメントがあるひとつの方向にそろっているためです。実は、磁性材料として使用されている物質の多くはこの強磁性物質になります。

反強磁性は、自発的な磁化が消失する物質です。原子レベルでの磁気モーメントを打ち消しあい磁性がなくなります。例えば、左右の物質でお互いに逆の磁気モーメントを発生させ打ち消しあうというイメージです。

フェリ磁性は、反強磁性に似ています。反強磁性と異なり、左右の物資における磁気モーメントの打ち消しあいの数が合致していません。そのため、系全体では磁気の偏りが生じ、自発磁化が発生する物質です。

最後は常磁性になります。常磁性は磁気モーメントがランダムに向いている物質です。多くの物質はこの常磁性になります。

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磁歪の原理

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磁歪の原理は、強磁性体に磁場(磁界)が加えられると強磁性体の原子の電子と原子核の位置が動くことです。電子は原子核の周りを自転(スピン)しながら公転しています。この運動により、電子は極微小の磁石のようにふるまうのです。また、強磁性体は磁区ごとに磁気モーメントがそろっています。

そこに磁場が加えられると、磁区内でそろっていた磁気モーメントが物質全体にわたって同じ向きに向くのです。これにより、電子と原子核の位置関係が強制的に変化し、微小な歪みが出ます。原子レベルでは極微小の変形量だとしても、物質全体で起こりれば全長は大きく変化するのです。このように、磁場によって原子の位置関係が変化し、それが物質全体で生じることにより変形する。これが磁歪・磁気ひずみの原理です

磁区とは

磁区とは

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強磁性は、1区域で磁化の方向である磁気モーメントがそろっている領域があり、その領域を磁区といいます。また、磁区の境目は磁壁です。これらは結晶のように見えることもあります。

例えば、学校の教室が磁区でその壁が磁壁です。教室内にいる子供の向いている方向が磁気モーメントになります。強磁性体は、磁区内の磁気モーメントがそろっているイメージです。このように、磁区とは同じ磁気モーメントを有する強磁性体内の一つの塊になります。この状態で外部から強い磁界が加えられることで、磁区内の磁気モーメントが整列し磁気ひずみは生じるのです。

圧電素子との類似点

実は磁歪は、圧電素子の現象と似ています。その点は、外部から別の因子を与えられるとその物質自体が別の物理現象を生じる点です。

磁歪では、磁場に対して変形という応答になります。圧電素子は、クオーツのように電圧に応答して自身が変形しているのです。実は磁歪は、電圧が磁場に変わったものになります。また、磁歪を生じる物質は変形により磁場を発生させることができるのです。この現象は、ビラリ効果といいます。この効果は変形に対して磁場を発生させる特徴です。

磁歪・磁気ひずみの実用例

磁歪材料の実用例を3点、紹介します。磁歪材料に磁場をかけると変形すること、変形すると磁場を発生することが応用されているのです。

磁歪材料を用いた超音波溶接機

工業分野の利用法のひとつとして超音波溶接機があります。超音波振動により、金属を溶融させて接着させる方法です。磁歪材料にコイルを巻き、高周波を印加します。これにより、材料は高速で伸縮を繰り返すのです。この時の振動で部材に熱摩擦を与え溶着させます。このように、磁場に反応して振動する仕組みを利用した応用例があるのです。

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磁歪材料を用いた発電

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磁歪材料を用いた研究の1つに金沢大学の振動発電研究室が取り組んでいる磁歪式振動発電があります。磁歪材料の変形させると磁場する点を利用するのです。例えば、磁歪材料にコイルを巻いたものを2組用意し、それを梁のように組付けます。この梁を振動させることにより、磁歪材料は変形し磁場を発生。その磁場がコイルを通ると電磁誘導の法則で起電力が発生する仕組みです。このように、磁歪材料を用いた発電の研究も取り組まれています。

磁歪材料を用いたセンサ

磁歪材料を用いたセンサです。例えば、力を感知するセンサに用いられています。これも、発電と原理は似ているのです。ある個所に、磁歪材料のセンサを設置。そこに力が加わると物質が変形し、それと一緒にセンサも変形します。この時発生する磁場を利用して力へと変換するのです。その他に、変位センサなどにも利用されています。

まとめ

磁歪や、磁気ひずみは、原子レベルでの現象です。原子レベルにおいて原子核と電子の位置関係の変化により物理現象を発生させています。このように技術は、進歩しナノメートル、オングストロームを制御しなければいけない時代です。目に見える事象のメカニズムは、原子レベルでの現象が由来となることも多々あります。これから、科学を学んでいくあなたは、原子レベルにおける現象解明の楽しさを着目してください。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単磁歪(磁気ひずみ)原理や具体例について理系大学院卒ライターがわかりやすく解説!

今回は、今回は磁歪や磁気ひずみについて紹介していきます。磁歪やじきひずみは、電磁気の磁場に関する現象です。字のように物質に磁場を印加すると歪みが起こると考えてくれ。今回は、この磁歪、磁気ひずみについて原理や具体例を交えて、理系大学院卒のこーじに解説してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

磁歪・磁気ひずみとは

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磁歪(磁気ひずみ)とは、強磁性体など磁性を持つ物質に外から磁場を与えるとわずかに体積形状が変形する現象です。磁気ひずみや、磁気ジュール効果ともいいます。変化量は1〜10ppmのオーダー。磁歪は、物質の磁性により大きく影響が異なるのです。また、磁歪の代表的な材料は磁歪の代表的な材料はパーマロイ(鉄-ニッケル合金系)やフェライトになります。

磁性とは

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磁性は,磁場の中に置かれたときに物質が他の物質に引力や斥力を及ぼす現象の一つです。原子やそれより小さいサイズで反応する性質を持ち、磁気とも呼ばれています。磁性に影響を与えるものは大きく二つです。電子の自転と電子の原子核に対する軌道運動になります。

実は電子も地球と同じように原子核の周りを公転しながら自転しているのです。この時、磁気モーメントが生じ極微小の磁石のようにふるまうことで磁性が発生します。つまり、原子においても、磁気モーメントによる偏りが発生すれば、それは極微小の磁石といえるのです

磁性の種類

磁性には4種類に磁性があります。それらは、強磁性、反強磁性、フェリ磁性、常磁性です。

強磁性は、自発的な磁化を持っています。それは、原子の磁気モーメントがあるひとつの方向にそろっているためです。実は、磁性材料として使用されている物質の多くはこの強磁性物質になります。

反強磁性は、自発的な磁化が消失する物質です。原子レベルでの磁気モーメントを打ち消しあい磁性がなくなります。例えば、左右の物質でお互いに逆の磁気モーメントを発生させ打ち消しあうというイメージです。

フェリ磁性は、反強磁性に似ています。反強磁性と異なり、左右の物資における磁気モーメントの打ち消しあいの数が合致していません。そのため、系全体では磁気の偏りが生じ、自発磁化が発生する物質です。

最後は常磁性になります。常磁性は磁気モーメントがランダムに向いている物質です。多くの物質はこの常磁性になります。

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