今回は「強塩基」と「弱塩基」について解説していきます。

塩基とは、水に溶かした際に、水酸化物イオンを生じる物質のことです。そして、生じさせることのできる水酸化物イオンの量によって、「強塩基」と「弱塩基」に分類される。今回は、両者の違いや特徴に焦点を当てながら、塩基についての解説を進めていく。また、具体例も多数紹介します。ぜひ、この機会に「強塩基」と「弱塩基」について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

塩基について復習しよう!

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強塩基と弱塩基について詳しく学ぶ前に、塩基とはどのようなものであるかということを簡単に復習しておきましょう。ここでは、塩基の定義性質特徴などに焦点を当てて説明していきます。また、塩基の価数についても触れますよ。いずれも重要な内容なので、しっかりと目を通しておいてくださいね

そして、記事の後半では、強塩基および弱塩基の具体的な例を紹介しますよ。具体例を知ることで、難しい用語などを理解する際の助けになるかと思います。それでは早速、塩基についての復習をはじめましょう

塩基とは?

塩基とは?

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塩基についての定義には、3つの種類があります。アニレウスの定義ブレンステッド・ローリーの定義ルイスの定義の3つです。これらの定義は、いずれも「網羅性がない」、「あまりにも広義に解釈している」といった欠点を抱えています。そのため、このような部分の議論は非常に複雑です。

ですから、今回は上記の定義を使用しません。この記事では、水溶液にした際に、水酸化物イオン(OH)が電離によって生じる物質を塩基としましょう。塩基はアルカリと呼ばれることもありますよ。ちなみに、塩基と対極の性質をもつ物質のことを酸といいます酸は水溶液にした際に、水素イオン(H)が電離によって生じる物質です。今回は、塩基に関する話題が記事の中心となりますが、塩基についての話をするときに酸の知識が必要になることもあるので覚えておきましょう。

\次のページで「塩基の性質や特徴は?」を解説!/

塩基の性質や特徴は?

次に、塩基の性質や特徴について考えましょう。塩基は、苦い味がする物質です。例えば、塩基性を示す石けん水が口に入ると、苦みを感じます。ただ、水酸化ナトリムなどの強い塩基を口にすると非常に危険です強い塩基は、人体を構成するタンパク質を分解する性質をもっていますくれぐれも、薬品を意図的に口にするようなことはしないようにしましょう

また、塩基性の水溶液は赤色のリトマス試験紙を青色に変色させる性質をもちます。リトマス試験紙を用いることで、水溶液が塩基性であるかを判断することができますよ。ほかに、BTB溶液フェノールフタレイン溶液などを用いて水溶液が塩基性であるかを判断する方法もあります。そして、塩基は対極の性質をもつ酸と反応して、お互いの性質を打ち消しあうという特徴もありますよ。このような反応のことを中和反応といいます。

塩基の価数とは?

続いて、塩基の価数についての解説をします。価数も、塩基について理解する上で重要な概念です。塩基の価数とは、1つの塩基粒子(分子など)が完全に電離した際に、生じる水酸化物イオン(OH)の数を意味するものですよ。言葉での説明だけでは、理解しづらいかと思うので、いくつか例を挙げてみますね。

水酸化ナトリムは完全に電離すると、1粒子当たり1つの水酸化物イオンを放出します。この場合、価数は1となりますよ。また、1粒子当たり2つの水酸化物イオンを放出する水酸化カルシウムは、2価の塩基です。

価数が大きい塩基ほど、強い塩基であるように思われますが、必ずしもそうであるとは言えません。では、塩基の強弱を決定づける要因は一体何なのでしょうか?この点は、次の章で説明を進めていきますね。

強塩基について学ぼう!

まず、強塩基についての考察を進めていきましょう強塩基の物質は、水に溶かした際に、ほとんどの粒子が電離します。先ほど述べたように、強塩基はタンパク質を分解するのです。人体に深刻な影響をもたらす恐れがあるので、慎重に取り扱う必要がありますよ。例えば、強塩基の物質が目に入ると、失明することがあります。環境中に大量に放出されると、生態系にも大きな影響を及ぼしますよ

このように、危険な側面をもった強塩基の物質ですが、工業や産業を支えるためには必要不可欠な物質でもあります。私たちの身の回りにも、強塩基の物質を用いて製造されたものが多く存在しますよ。今回は、強塩基の物質として、水酸化ナトリウム水酸化カリウムを挙げて、個別にどのようなところで役に立っているのかを説明します。

\次のページで「水酸化ナトリウム」を解説!/

水酸化ナトリウム

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水酸化ナトリウム(NaOH)は、強塩基の中でも、とりわけ有名な物質です。水酸化ナトリウムは、苛性ソーダと呼ばれることもありますよ。水酸化ナトリウムは、アルミニウム石けん合成繊維などの製造に用いられており、私たちの生活を支える重要な物質であることがわかります。

また、弱酸である酢酸との中和反応によって生じる酢酸ナトリウムは、緩衝液の原料です。緩衝液は、化学工学分野や医療分野で活躍しています。そして、弱酸の二酸化炭素(炭酸)との中和反応によって生じる炭酸ナトリウムも、食品製造などに使用する重要な物質です。このように、水酸化ナトリウムは多種多様な分野において、必要不可欠な物質となっているのですね

水酸化カリウム

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水酸化カリウム(KOH)も、非常に有名な強塩基の物質です。水酸化カリウムは、アルカリマンガン乾電池の電解液に利用されています。現在、世に出回っている乾電池の多くが、アルカリマンガン乾電池です。乾電池は、テレビやエアコンといった家電製品のリモコンの電源として使用されます。

アルカリマンガン乾電池が普及する前、マンガン乾電池が広く用いられていました。しかしながら、マンガン乾電池は十分な電圧を保つことができる時間が短いという問題を抱えていたのです。一方、アルカリマンガン乾電池は、長時間十分な電圧を保つことができます。そのため、アルカリマンガン乾電池を用いることで、頻繁な電池の交換が不要になったのです。つまり、電池の交換回数が少なくなるのですね。

弱塩基について学ぼう!

最後に、弱塩基についての解説をします弱塩基の物質は、水に溶かした際に、ごく一部の粒子のみが電離しますよ。電離する粒子の割合は、溶液の濃度や体積によって変動します。弱塩基は、タンパク質を急速に分解するほどの能力は持ちません。ですが、決して安全な物質とは言えないので、強塩基の物質と同じく扱いには注意が必要です

また、弱塩基の物質にも私たちの生活を支えるために、必要不可欠な物質があります。以下では、弱塩基の代表格とも言えるアンモニアアニリンについて紹介しますね。これらの物質が、どのような性質を持っているのかを学んでいきましょう。

アンモニア

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アンモニア(NH3)は、無色で刺激臭をもつ気体です。水によく溶け、溶解後は弱塩基性の水溶液となります。アンモニアは、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混合し、加熱することで発生させることができますよ。

また、強酸の硫酸とアンモニア水を中和することで生じる硫酸アンモニウムは、肥料として使用されています。硫酸アンモニウムは、硫安とも呼ばれていますよ。ただし、硫酸アンモニウムを過剰に土壌に加えると、土壌粒子の状態が悪くなることがあるといった問題点もあります。

\次のページで「アニリン」を解説!/

アニリン

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アニリン(C6H5NH2)は、ベンゼン環構造をもつ芳香族有機化合物の1つです。アニリンは、様々な染料農薬の原料として、使われています。アニリンは、毒性が非常に高いので、扱いには注意が必要です。

また、アニリンは次世代ディスプレイとして期待されている有機ELディスプレイの材料でもあります。現時点では、有機ELディスプレイの価格は安いとは言えず、使用分野は限定的です。しかし、有機ELディスプレイは省エネ性能に優れ、映像をより美しく映せます。そのため、コスト面の問題が解決されると、急速に普及することが予想されていますよ。

強塩基と弱塩基について学ぼう!

今回は、強塩基と弱塩基について、具体例を交えながら解説をしました。この記事で扱った物質は、教科書や参考書に掲載されるような有名な物質ですよ。しかし、教科書や参考書では、それぞれの物質がどのような製品の原料になっているかといった説明がなされていないことが多いです。

せっかく学ぶのであれば、各物質が私たちの生活にどのように結びついているのかを考えてみてください。そのように、身近なものと関連付けて覚えた事柄は記憶に残りやすいのです。ぜひ、この記事を読んで、強塩基と弱塩基について学習してみてくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単強塩基と弱塩基!定義や両者の違いを理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「強塩基」と「弱塩基」について解説していきます。

塩基とは、水に溶かした際に、水酸化物イオンを生じる物質のことです。そして、生じさせることのできる水酸化物イオンの量によって、「強塩基」と「弱塩基」に分類される。今回は、両者の違いや特徴に焦点を当てながら、塩基についての解説を進めていく。また、具体例も多数紹介します。ぜひ、この機会に「強塩基」と「弱塩基」について理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

塩基について復習しよう!

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強塩基と弱塩基について詳しく学ぶ前に、塩基とはどのようなものであるかということを簡単に復習しておきましょう。ここでは、塩基の定義性質特徴などに焦点を当てて説明していきます。また、塩基の価数についても触れますよ。いずれも重要な内容なので、しっかりと目を通しておいてくださいね

そして、記事の後半では、強塩基および弱塩基の具体的な例を紹介しますよ。具体例を知ることで、難しい用語などを理解する際の助けになるかと思います。それでは早速、塩基についての復習をはじめましょう

塩基とは?

塩基とは?

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塩基についての定義には、3つの種類があります。アニレウスの定義ブレンステッド・ローリーの定義ルイスの定義の3つです。これらの定義は、いずれも「網羅性がない」、「あまりにも広義に解釈している」といった欠点を抱えています。そのため、このような部分の議論は非常に複雑です。

ですから、今回は上記の定義を使用しません。この記事では、水溶液にした際に、水酸化物イオン(OH)が電離によって生じる物質を塩基としましょう。塩基はアルカリと呼ばれることもありますよ。ちなみに、塩基と対極の性質をもつ物質のことを酸といいます酸は水溶液にした際に、水素イオン(H)が電離によって生じる物質です。今回は、塩基に関する話題が記事の中心となりますが、塩基についての話をするときに酸の知識が必要になることもあるので覚えておきましょう。

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