界面活性について紹介していきます。界面活性とは液体の表面の性質を変化させることです。なぜ、液体の表面の性質を変えるのか。どのような原理で変えるのか。また、どのようにして生活の役に立っているのかを原理や具体例を交えて、理系大学院卒のこーじに解説してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

界面活性とは

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界面活性とは、液体の表面張力を変化させることをいいます。液体の表面は様々な性質を有しており、その性質を変化させるのです。例えば、水と油を混ざりやすくすること、水とプラスチックを濡れやすくすることがあげられます。このように、液体の表面の性質を変化させ、表面張力や濡れ性を変えることが界面活性です

界面とは

では、界面とは何なのでしょうか。界面とは相の変わる境目になります。例えば、水と気体が触れている面や液体と固体が触れている面です。一般的に液体と気体の触れている面は表面といいます。ただ広義の意味では界面です。このように界面とはある相と相の境目のことをいいます。

界面張力と濡れ性

液体と気体の界面には界面張力が働いています。界面張力は液体が丸まろうとする性質です。液体の界面は内部の分子に引き寄せられています。例えば、無重力空間では水は球形です。これは液体の界面張力によるものになります。このように界面張力とは液体が丸まろうとする力です。

また、濡れ性は液体の固体の対する広がりやすさの指標になります。液体の固体に対する濡れ性は液体と固体の接触点におけるベクトルの釣り合いによるのです。例えば、液体の界面張力が固体のそれよりも大きい場合は濡れにくく、逆の場合は濡れやすいといった具合になります。このように濡れ性とは液体と固体の界面張力の綱引きから決まるのです。

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界面活性の原理

界面活性の原理は、界面活性剤が液体に入ると液中でミセルを形成し界面張力を下げるのです。では詳細に説明していきます。

界面活性剤の分子の構造

界面活性剤は水に溶けやすい親水基と油になじみやすい疎水基を有しています。概略図は下の図です。

image by Study-Z編集部

この分子の親水基は水分子と吸着しやすく疎水基は水に吸着するのを嫌う性質があります。この分子が水中に分散し、ミセルを形成することで界面張力が下がっていくのです。

ミセルとその形成の仕組み

ミセルとは多数の分子の集合体です。主に分子間力により集合します

ミセルの形成は次のステップです。気体と液体の界面に分子の膜を形成します。これは分子の疎水基の成分が水から逃げるためです。そのため、液体から気体側に向けて疎水基が向いている状態になります。

次に、界面に逃げ切れなかった分子は疎水基同士で集まり集合体ミセルを形成するのです。この時の濃度は臨界ミセル濃度といい、界面は疎水基でおおわれています。そのため、親水基成分は水の内部を向き界面張力が減少するのです。

界面活性のメカニズムはわかったな。界面活性剤を液体に溶かすことで、表面は疎水基に覆われ水中ではミセルが形成される。これにより液体の界面における界面張力が下がるからなんだ。では、そもそも界面活性剤とはどのようなものだろうか。その種類や役割について説明してもらおう。

界面活性剤とは

image by iStockphoto

界面の性質を変える物質は界面活性剤と呼ばれます。代表的なのは、洗剤や石鹸(脂肪酸塩)、化粧品や医薬品及び食品などの成分としてです。では、この界面活性剤の原理はどのようなものかをみていきましょう。

界面活性剤は、その分子構造により水と油など本来混ざり合わないものを混ぜるのに役立ちます。その作用を発揮する理由は、1つの分子の中に水になじみやすい「親水基」と油になじみやすい「疎水基」を有しているからです。これらひとつひとつは小さいものですが、集まることで大きな効果を発揮します。一方、表面張力を少しでも上昇させるものを界面不活性物質です。例えば、塩化ナトリウムなどになります。

界面活性剤の種類

成分や配合など化学的な性質の違いにより、界面活性剤の種類は大きく4種類です。イオン性界面活性剤が3タイプ。非イオン性界面活性剤が1つです。イオン性界面活性剤は水に溶けた際に電離してイオンとなります。非イオン性の界面活性剤はイオンとなりません。イオン性の界面活性剤でもその種類によって、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤と分類わけされます。非イオン性の界面活性剤はノニオン界面活性剤です。

界面活性剤の役割

界面活性剤の役割は3つあり、「浸透作用」、「乳化作用」、「分散作用」です。

浸透作用は水の界面張力を下げて繊維に水がなじみやすくし、乳化作用は水と油を均一に混ざりやすくします。分散作用は粉末を水に混ざるように散らばす作用です。

界面活性剤はわかったな。液体の界面張力を変化させることで様々な作用を起こすことができるんだ。その作用は3種類ありそれぞれの役割が違うぞ。では、この作用はどのように生活に役立っているのかを具体例を交えながら見ていこう。

界面活性の具体例

洗剤

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界面活性剤の代表格が洗剤です。衣服の選択や窓の洗浄など多くの場面で使用されます。

例えば、洗剤は水に作用することで水の界面張力を低下させ、浸透作用により衣服の繊維の隙間に水を入りやすくしているのです。また、皮脂などの油汚れも水に乳化させます。界面活性剤の疎水基が油を取り囲みコロイド化し汚れを水に溶け込ませているのです。そして、汚れが溶け込んだ水を捨て、すすぎ洗浄を繰り返し衣服を洗濯しています。

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アイスクリームやマヨネーズ

乳化の作用は洗濯だけではありません。食材にも応用されているのです。

アイスクリームやマヨネーズ、ペペロンチーノも乳化作用を利用し油と水分を混ぜています。乳化の形態は2通りあり水の中に油が粒子になっているもの、油の中に水が粒子になっているものです。前者は、牛乳やアイスクリーム、後者はバターやマーガリンなどあげられます。このように、界面活性は食べ物にも利用されているのです。

塗料やインク

塗料やインクは分散作用を利用しています。水とトナー粒子を混ぜるのに分散剤が使用されているのです。また、ペンキなどにも利用されています。

このように、界面活性は洗浄から食べ物、生活用品まで様々な箇所で使用されている技術です。

界面活性は界面張力を変化させること

少量の添加により、液体の界面張力を変化させる性質が界面活性です。

物質全体ではある性質を有しているのに表面の性質を変えるだけでその特性は大きく変わります。このように、たとえ大きなものでも少しの変化だけで、それ全体が大きく変わるのです。この現象こそが化学であり面白い事象になります。化学に少しでも興味を持ったあなたは、この少しの変化をとらえるように意識を変えるとどんどん化学にはまっていきますよ。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単界面活性!ミセルとは?界面活性剤の種類は何があるの?理系大学院卒ライターがわかりやすく解説

界面活性の原理

界面活性の原理は、界面活性剤が液体に入ると液中でミセルを形成し界面張力を下げるのです。では詳細に説明していきます。

界面活性剤の分子の構造

界面活性剤は水に溶けやすい親水基と油になじみやすい疎水基を有しています。概略図は下の図です。

image by Study-Z編集部

この分子の親水基は水分子と吸着しやすく疎水基は水に吸着するのを嫌う性質があります。この分子が水中に分散し、ミセルを形成することで界面張力が下がっていくのです。

ミセルとその形成の仕組み

ミセルとは多数の分子の集合体です。主に分子間力により集合します

ミセルの形成は次のステップです。気体と液体の界面に分子の膜を形成します。これは分子の疎水基の成分が水から逃げるためです。そのため、液体から気体側に向けて疎水基が向いている状態になります。

次に、界面に逃げ切れなかった分子は疎水基同士で集まり集合体ミセルを形成するのです。この時の濃度は臨界ミセル濃度といい、界面は疎水基でおおわれています。そのため、親水基成分は水の内部を向き界面張力が減少するのです。

界面活性のメカニズムはわかったな。界面活性剤を液体に溶かすことで、表面は疎水基に覆われ水中ではミセルが形成される。これにより液体の界面における界面張力が下がるからなんだ。では、そもそも界面活性剤とはどのようなものだろうか。その種類や役割について説明してもらおう。

界面活性剤とは

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界面の性質を変える物質は界面活性剤と呼ばれます。代表的なのは、洗剤や石鹸(脂肪酸塩)、化粧品や医薬品及び食品などの成分としてです。では、この界面活性剤の原理はどのようなものかをみていきましょう。

界面活性剤は、その分子構造により水と油など本来混ざり合わないものを混ぜるのに役立ちます。その作用を発揮する理由は、1つの分子の中に水になじみやすい「親水基」と油になじみやすい「疎水基」を有しているからです。これらひとつひとつは小さいものですが、集まることで大きな効果を発揮します。一方、表面張力を少しでも上昇させるものを界面不活性物質です。例えば、塩化ナトリウムなどになります。

界面活性剤の種類

成分や配合など化学的な性質の違いにより、界面活性剤の種類は大きく4種類です。イオン性界面活性剤が3タイプ。非イオン性界面活性剤が1つです。イオン性界面活性剤は水に溶けた際に電離してイオンとなります。非イオン性の界面活性剤はイオンとなりません。イオン性の界面活性剤でもその種類によって、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤と分類わけされます。非イオン性の界面活性剤はノニオン界面活性剤です。

界面活性剤の役割

界面活性剤の役割は3つあり、「浸透作用」、「乳化作用」、「分散作用」です。

浸透作用は水の界面張力を下げて繊維に水がなじみやすくし、乳化作用は水と油を均一に混ざりやすくします。分散作用は粉末を水に混ざるように散らばす作用です。

界面活性剤はわかったな。液体の界面張力を変化させることで様々な作用を起こすことができるんだ。その作用は3種類ありそれぞれの役割が違うぞ。では、この作用はどのように生活に役立っているのかを具体例を交えながら見ていこう。

界面活性の具体例

洗剤

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界面活性剤の代表格が洗剤です。衣服の選択や窓の洗浄など多くの場面で使用されます。

例えば、洗剤は水に作用することで水の界面張力を低下させ、浸透作用により衣服の繊維の隙間に水を入りやすくしているのです。また、皮脂などの油汚れも水に乳化させます。界面活性剤の疎水基が油を取り囲みコロイド化し汚れを水に溶け込ませているのです。そして、汚れが溶け込んだ水を捨て、すすぎ洗浄を繰り返し衣服を洗濯しています。

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