この記事では「立つ瀬がない」について解説する。
端的に言えば立つ瀬がないの意味は「立場を失う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「立つ瀬がない」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/Hata
以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。
「立つ瀬がない」には、次のような意味があります。
面目を失う。立場を失い、苦境におちいる。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「立つ瀬がない」
「立つ瀬がない」とは、“面目や立場を失って世間に顔向けできなくなるほど苦しい状況”を表す慣用句です。
自分自身の行動や責任で立場を失うこともあれば、家族や自分に近しい人の行動が原因になることもあるでしょう。羞恥心や居たたまれなさから、周囲に顔向けできなくなるような状況で「立つ瀬がない」は用いられます。
次に「立つ瀬がない」の語源を確認しておきましょう。これはそもそもの「瀬」という言葉に由来します。
「瀬」とは、人が歩いて渡れるほど川の水が浅いところ。「立つ瀬」とはその中でも立てる部分というところから、その人の立場や世間への面目という意味を持つようになった比喩表現です。この「立つ瀬」がなくなってしまう、ということで「立つ瀬がない」は立場を失う、という意味を持つようになりました。
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「立つ瀬がない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.大臣は地域振興のために尽力していたようだが、その地域から反対意見が上がってしまったのでは大臣も立つ瀬がないだろう。
2.みんなで賞を取りたいと率先してリーダーを務めたが、人気取りのためだと言われてしまえば立つ瀬もない。
3.捨て身の覚悟で彼をかばったのに、彼自身が台無しにする発言をしてしまっては僕も立つ瀬がなくなってしまう。
「立つ瀬がない」とは立場がなくなってしまい、周囲に顔向けができなくなることです。そのため例文のように、不適切な行動や言動で面目がなくなってしまう状況で「立つ瀬がない」は用いられます。また例文1~2のような自らの行いだけでなく、例文3のように他者の行動により立場を失う場合でも使用可能です。
自分や他者の行動によって、立場や面目が保てなくなってしまい苦しい状況に陥ったとき、「立つ瀬がない」という言葉でその心境を表すことができます。
「浮かぶ瀬がない」とは、“不運続きで苦しい状況から抜け出せない”という意味の言葉。やりきれない感情を表現した慣用句です。ここでの「瀬」は場所や機会を指し、「浮かぶ瀬」は“苦しい状況を脱する機会”を意味しています。
「立つ瀬がない」と同様に「瀬」を使った表現であること、それが追い込まれて苦しい状況を抜け出せないでいる様子から、「立つ瀬がない」の類語表現として挙げられる言葉です。
ただし、苦しい状況に追い込まれた様子は似ていますが、「立つ瀬がない」のように“面目を失って”という意味は含まれていません。同じ「瀬」を使った言葉ですが、それぞれの言葉のニュアンスの違いは抑えておきましょう。
なお「浮かぶ瀬」を使った言葉には他にも、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」や「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」といったことわざがあります。「立つ瀬」と「浮かぶ瀬」が混同しないよう、それぞれの「瀬」の意味にも注意してください。
\次のページで「「針の筵」」を解説!/
「針の筵(はりのむしろ)」とは、“周囲の非難にさらされて苦しい状況”を指します。「筵(むしろ)」とは敷物のことで、「針」は“周囲からの批判”、「筵(むしろ)」は“場所”を意味し、他者の目に対する居心地の悪さを表すときに使う慣用句です。
「立つ瀬がない」同様に、“周囲に顔向けができず苦しい様子”を表している点で、類義語のひとつと言えます。ただし、「針の筵」は周囲の目が気になる意味合いが強く、「立つ瀬がない」ほど自責の念は強く含まれていません。それぞれの言葉の持つニュアンスの違いで使い分けるといいでしょう。
「立つ瀬がない」とは、立場を失い周囲に顔向けできなくなること。これと反対の意味を持つ対義語について見ていきましょう。
「面目を施す(めんぼくをほどこす)」とは、“評価を高め、世間体や名誉をたもつ”こと。立派な行いをして名誉を得たときなどに用いる慣用句です。
「立つ瀬がない」で世間体を失うことに対し、立場を得て世間から評価を得る「面目を施す」はまさしく正反対の意味と言えるでしょう。そのため、「面目を施す」は「立つ瀬がない」の対義語と言えます。
ほかにも「面子を保つ(めんつをたもつ)」などと似た言葉もありますが、状況に応じてしっくり来る言葉を使うようにしましょう。
「lose face」とは、“面目を失う”という意味の英語表現です。ここでの「face」は、世間への顔という意味で“体面”を意味しています。
「立つ瀬がない」は立場や面目を失った苦しい状況を表す言葉のため、英語でその状況を説明するには「lose face」の英語訳で問題なく伝えられるでしょう。
自分や他者の行動で名誉が傷ついてしまうときや、苦しい状況に陥ってしまうときに用いる表現です。
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この記事では「立つ瀬がない」の意味・使い方・類語などを説明しました。
「立つ瀬がない」という状況は、非常に居心地が悪く、つらいものです。言葉の使い方や意味を間違えてそれこそ「立つ瀬がない」状況にならないよう、しっかり言葉の理解も深めておきましょう。