世界史に詳しいライター万嶋せらと一緒に解説していきます。
- 南北問題とは何か
- 先進国は北半球に、発展途上国は南半球に多い
- 「南北問題」という言葉は今ではあまり使われなくなっている
- 南北問題の歴史的な背景とは
- 歴史をさかのぼると見えてくる、国家間格差の理由
- 大航海時代に確立した国際分業体制
- 周縁国は発展を阻害された
- 南北問題が注目されるようになった背景にあるもの
- 南南問題とは何か
- 資源保有国が経済発展を進めたことで、南南問題が発生
- 発展できた国とできなかった国の経済格差が顕著に
- 開発における現代のトレンドは?
- 貧困問題が世界共通の課題として認識されるようになった
- 経済成長至上主義から持続可能な開発へ
- 国際社会は南北問題、そしてより広範囲な社会課題の解決の道を探っている!
この記事の目次
ライター/万嶋せら
会社員を経て、イギリスに渡り大学院の修士号を取得したライター。歴史が好きで関連書籍をよく読み、中でも近代以降の歴史と古典文学系が得意。今回の記事では、専門分野にも近い「南北問題」について解説する。
先進国は北半球に、発展途上国は南半球に多い
地球上には数多くの国や地域があり、それぞれ歴史や文化、言語などが違うだけでなく、発展の段階も異なっています。地球儀を見てみると、北半球にはアメリカや日本、ヨーロッパ諸国など、経済的に豊かと言われることの多い国々が集まっていることに気が付くかもしれません。一方で、赤道周辺などの低緯度地域や南半球には、アフリカや南アジア、中南米など、比較的貧しい国が多く見られますね。
このように、いわゆる「先進国」と「発展途上国」が大まかに北と南に分かれていることから、各国間の経済格差やそれに付随する様々な問題を差して「南北問題」と呼ぶことがあります。もちろん、世界を単純に二分割することができるわけではありません。しかし、「豊かな北と貧しい南」という構造が国際社会から注目を集めていた時代もあったのです。
「南北問題」という言葉は今ではあまり使われなくなっている
南北問題の概念はもともと、イギリスの元外交官オリヴァー・フランクス氏が1959年にアメリカで行った講演で触れたことがきっかけで広まったと言われています。当時の国際政治の舞台では、各国間の所得格差や低開発地域への開発支援などが大きな関心事の1つになっていました。
それから半世紀以上たった現在でも、地域間の経済格差はまだ解消しておらず、貧困などの問題も根強く残っています。しかし、今では「南北問題」という言葉は以前ほど頻繁には使われていません。それは、時代の流れと共に国際秩序や社会の在り方が変化し、開発に対する捉え方も変わってきたからです。
南北問題にはどのような背景があるのでしょう。そして、開発に関する国際社会の考え方は半世紀以上のときを経てどのように変化してきたのでしょうか。
歴史をさかのぼると見えてくる、国家間格差の理由
なぜ経済的に豊かな国と貧しい国があるのか、という問いに答えるのは簡単ではありません。その地域の気候や土地の条件、周囲の環境、歴史的な経緯など、様々な事情が複雑に絡み合っているからです。また、国際経済の中における構造的な問題もあります。国と国との間の経済格差というのは、根深い問題なのです。
「南北問題」という言葉が注目されるようになったのは、1960年代以降のことでした。しかしもちろん、貧困や所得格差などの問題が20世紀の後半になってから突如出現したわけではありません。国家間格差はどのような背景でいつから生じていたのか、数百年間さかのぼってみましょう。
\次のページで「大航海時代に確立した国際分業体制」を解説!/