水は地球上で最も得意な性質を持つ物性つの一つです。その性質により、水と氷の関係性は不思議なものが生じている。今回は、その仕組みだけではなく、その他にも水と氷の不思議を紹介してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

水とは

image by iStockphoto

水は地球上に大量に存在している物質です。地球の表面積の70.8%は海でおおわれています。水は人間の体にも大量に含まれており、人間の体積における水の割合は60%です。新生児では80%以上が水分になります。

このように身近な存在である水ですが、実は特異な性質を有しているのです。では、次にその性質について見ていきましょう。

水の特異的な性質とは

水は他の物質にはあまり見られない多くの特徴的な性質をもっています。この水の特異な性質を3点見ていきましょう。

1つ目は、水は氷になると水に浮くことです。氷が浮くのは普通じゃないか、と思う方が多くいるかもしれません。一般的に物質は固体、液体、気体の順番で密度が薄くなります。そのため、同じ物質では固体は液体に沈むのです。つまり、水は一般的な考えとは異なる不思議な物質になります。

2つ目は水は分子量に対して沸点が高いことです。一般的に分子量が高くなるほど、沸点は上昇します。しかし水の分子量は18と相対的に少ないです。また、似たような水素と同じような構造をとる酸素族元素と水素化合物では最も分子量の小さい水は一番高い融点、沸点になっています。

3つ目は、水銀に次いで表面張力が大きいです。水銀は金属結合を有するがゆえに高い値を示します。しかしながら、その結合を持っていない水も相対的に高い値なのです。

このように水は誰もが知っていることから、化学的には真逆な事象まで有する不思議な物質になります。

実は身近にある水の現象は不思議なことだらけなんだ。普通の生活では気づかないことも多々あるだろう。では、身近な現象をいくつか紹介してもらおう。

水と氷の不思議

水は特異的な性質のために、さまざまな不思議な現象が起こっています。それは、科学的なことから身近な現象まで様々です。あなたはどんな現象が思いつきますか?

1.氷は水に浮く

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最初は、氷に水が浮くことです。氷山は海に浮いています。よく考えれば不思議だとは思いませんか?

なぜ、氷は水に浮くのでしょうか。それは氷のほうが水の密度よりも低いからです氷自体の浮力のほうが自重よりも大きくなります。以上のことから、氷は水に浮くのです。

では、なぜ氷は水よりも密度が高いのでしょうか。地球上のほとんどの物質は液体から固体に変わるとき密度が高くなるにも関わらずにです。氷が水に浮くというのは、地球上でも不思議な現象になります。

\次のページで「2.海や川がお湯にならない」を解説!/

2.海や川がお湯にならない

真夏の海に行ったことはありますか?砂の石や海岸線の岩はとても暑いのに海はそれらに比べると冷たい、ぬるいですよね。

これも水の不思議な性質の一つで、真夏であっても海や川が蒸発しないのです。もし川の温度や海の温度が急激に上がってしまうと、そこにすむ生物は温度変化に対応できません。真夏でも水の温度がすぐに変化しないというのは、実は大変不思議な現象なのです。

3.タオルで体がふける

実は、水をタオルでふけることも特異な性質のひとつです

油やごれを清掃する場合、タオルだけでは拭き取れませんよね。例えば、洗剤を混ぜたりティッシュやキッチンペーパーのもので拭き取ります。水は表面張力が高いため、タオルなど繊維の自動的にすきまに吸い込まれていくのです。

水と氷の構造

では、水はこのような性質を持つのかを分子の構造という観点で解説していきます。

1.水の状態図

Phase diagram of water.svg
wp_glee - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

すべての物質は液体、固体、気体と変化しますこの3つの状態は3態といいます。

そして温度、圧力により物質の状態が変化する様子を示した図を状態図といいます。では水の状態図を見てみましょう。水は水、氷、水蒸気や湯気へと変化し、水はセ氏0℃で氷に、セ氏100℃で水から水蒸気への変化し、この変化を相変化(相変態)といいます。スケートを楽しめるのは、この水の性質のおかげです。氷の圧力をかけると、固体から液体へと変化します。そのため、氷の上に薄い水の膜が生成され滑り楽しめるのです。

2.水の構造

では、水の構造を見ていきましょう。水は分子レベルで見ると、1つの水分子の集合体です。1つの水分子は、2つの水素原子(H)と1つの酸素原子(O)からなります。

水分子は一直線ではありません。くの字のように折れ曲がっており、角度は104.5度です。水分子は極性を有しています。酸素原子と水素原子のそれぞれ電位陰性度を比べると酸素原子の方が大きいです。これにより、電位差が生まれ、極性を持ちます。この結合は水素結合です。この水素結合により水は特殊な性質を有しています。

3.水素結合とは

3.水素結合とは

image by Study-Z編集部

水素結合は、分子間力のひとつです。OH基やNH基など電子陰性度の高い原子に水素が共有結合すると、それらの極性により水素結合が発生します。この水素結合が、水の特異性を示す理由です。水素結合の強さは、分子間力より強く共有結合より弱くなります。たとえば,水(分子量18)の沸点が100℃。水素結合がないメタン(分子量16)の沸点は,−162℃と200℃以上異なります。そのため、似たような分子量を有する他の分子に比べても沸点が高いです。海や川の水の温度変化が緩やかなのは、この性質のためになります。相対的に水の比熱が高くなり、温度変化が緩やかなのです。

また、水の表面張力が高いのもの水素結合が影響しています。水素結合により水は極性をもちお互いが集まろうとするのです。その力が表面張力の強さとなり、水はタオルのすき間に毛細管現象により吸収されます。油汚れがおちにくいのは表面張力が低く毛細管現象がおこらないためです

\次のページで「4.氷の構造」を解説!/

4.氷の構造

Cryst struct ice.png
Solid State - own drawing, created with Diamond 3.1, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

氷の結晶構造は、1個の水分子に対して4つの水分子が正四面体のようにかこっています。ひとつの酸素(O)原子に対して、二つの水素原子(H)は共有結合し、その水素は他の酸素原子と水素結合しているのです。この構造が氷が水よりも密度が低くなる原因になります。例えば、金属の結晶構造は密度が高くなるように配置しますが、氷は、正四面体構造をとり、最も密度が高くなるように結晶化できません。結果として、水よりも密度が低くなるのです。

その他の現象

では、この性質をもう少し深堀してみましょう。

1.岩石が風化する理由の一つも氷

水が氷になっても質量は変わりません。しかし、密度は低下します。つまり、体積が増加しなければなりません。この性質が岩石の風化にかかわってきます。岩石の隙間に水が入り込み、こおると岩石内部で水が膨張するのです。その結果、内部でダメージが蓄積されひびなどが発生し、長い年月をかけて風化していきます

2.水は約4℃で密度が最大になる理由

水が約4℃で密度が最大になるものこの構造が理由になります。正四面体構造の一部の水素結合が外れて、立体が崩れ、すきまに、水分分子が入り込むことにより相対的な水分子量が増加し密度が上がるのです。

水と氷は不可思議な物質

一番、身近な物質である水と氷はなぞに包まれています。水と氷の関係性のように、見た目ではふつうであるのにその内側の仕組みは、解明しきれていません。その不思議なものを解き明かすのもエンジニアの魅力の一つになります。

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化学物質の状態・構成・変化理科

水と氷の不思議な関係性をその仕組みから理系大学院卒ライターがわかりやすく解説!

水は地球上で最も得意な性質を持つ物性つの一つです。その性質により、水と氷の関係性は不思議なものが生じている。今回は、その仕組みだけではなく、その他にも水と氷の不思議を紹介してもらおう。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

水とは

image by iStockphoto

水は地球上に大量に存在している物質です。地球の表面積の70.8%は海でおおわれています。水は人間の体にも大量に含まれており、人間の体積における水の割合は60%です。新生児では80%以上が水分になります。

このように身近な存在である水ですが、実は特異な性質を有しているのです。では、次にその性質について見ていきましょう。

水の特異的な性質とは

水は他の物質にはあまり見られない多くの特徴的な性質をもっています。この水の特異な性質を3点見ていきましょう。

1つ目は、水は氷になると水に浮くことです。氷が浮くのは普通じゃないか、と思う方が多くいるかもしれません。一般的に物質は固体、液体、気体の順番で密度が薄くなります。そのため、同じ物質では固体は液体に沈むのです。つまり、水は一般的な考えとは異なる不思議な物質になります。

2つ目は水は分子量に対して沸点が高いことです。一般的に分子量が高くなるほど、沸点は上昇します。しかし水の分子量は18と相対的に少ないです。また、似たような水素と同じような構造をとる酸素族元素と水素化合物では最も分子量の小さい水は一番高い融点、沸点になっています。

3つ目は、水銀に次いで表面張力が大きいです。水銀は金属結合を有するがゆえに高い値を示します。しかしながら、その結合を持っていない水も相対的に高い値なのです。

このように水は誰もが知っていることから、化学的には真逆な事象まで有する不思議な物質になります。

実は身近にある水の現象は不思議なことだらけなんだ。普通の生活では気づかないことも多々あるだろう。では、身近な現象をいくつか紹介してもらおう。

水と氷の不思議

水は特異的な性質のために、さまざまな不思議な現象が起こっています。それは、科学的なことから身近な現象まで様々です。あなたはどんな現象が思いつきますか?

1.氷は水に浮く

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最初は、氷に水が浮くことです。氷山は海に浮いています。よく考えれば不思議だとは思いませんか?

なぜ、氷は水に浮くのでしょうか。それは氷のほうが水の密度よりも低いからです氷自体の浮力のほうが自重よりも大きくなります。以上のことから、氷は水に浮くのです。

では、なぜ氷は水よりも密度が高いのでしょうか。地球上のほとんどの物質は液体から固体に変わるとき密度が高くなるにも関わらずにです。氷が水に浮くというのは、地球上でも不思議な現象になります。

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