生態系という言葉を聞いたことがあるか。俺達が住んでいる地球にはたくさんの生き物が生息しており、互いに密接に関わり合いながら生きている。しかし、全ての生き物が人間にとって有益なわけではない。害虫や害獣と分類されるような生きのことです。このような生き物でも生態系を維持する上では非常に重要な役割を果たしている。
今回の記事では、生態系の詳細に関して国立大学院で修士号(農学)を取得ているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

生態系の概念

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生態系とはどういった意味の言葉でしょうか。一般的に、生物同士のやりとりが網の目のように密接につながるさまを『生態系』と言います生態系という概念は非常に広く、広大な海や熱帯雨林だけでなく、より小さい沼や池など様々なものが生態系です。 ここでは、その生物が持つ役割が重要となります。生態系という概念では、生き物は大きく分けて生産者、消費者、分解者のいずれかです。 それでは、各区分について詳しく解説していきましょう。

その1.生産者

無機物から有機物をつくることのできる生物を生産者と言います。具体的には、地上に生えている植物や海藻、水中にいる植物プランクトンなどですね。これらの生物の特徴は何と言っても『葉緑体を用いた光合成』です。

光合成とは、太陽光を活用し水と二酸化炭素を原料としてグルコースを作る反応のことを言います。グルコースは生物の体を動かす原動力であり、車でいうガソリンのような働きです。このグルコースは植物の体内ででんぷんとして保存され、有事の際の貯蔵庫としての役割果たします。でんぷんを貯蔵する植物として代表的なのはじゃがいもなどです。中学校の時に『ヨウ素デンプン反応』も習った人も多いと思います。このように、地球上のすべての生物が計測できる土台をつくる大切な役割を果たすのが生産者です。

その2.消費者

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光合成をすることができるのは植物だけであり、私たち人間をはじめとした全ての動物は『捕食』することによってエネルギーを得ます。このように、 体内に有機物を取り入れている生き物が消費者です。具体例としては、人間をはじめとしたすべての動物や昆虫、魚や動物プランクトンなどですね。

動物は植物の葉っぱや小動物も食べることによって有機物を吸収していますよね。この時、吸収した有機物はアミノ酸や糖(グルコース)、脂質と呼ばれる最小単位に分解され、その後肝臓や皮下脂肪という形で貯蔵されます。これらの貯蔵物質は獲物が取れなくなった時に分解することで飢えをしのぐのですね。

その3.分解者

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どんな植物や動物であっても、ある時必ず寿命が来るものです。また、消費者は吸収しきれなかった有機物を『排泄物』という形で環境に放出します。その時に出てくる死骸や落ち葉、動物のフンやた食べ残しなどを餌にする生き物が分解者です。具体的には菌類や細菌類などのことを言います。

しかし、分解者というグループは他の二つと違って少し複雑です。例えば、落ち葉や土の中にいるミミズやダンゴムシなどを例にとって考えましょう。 これらの生き物は植物の落ち葉を食べて生きているため、消費者に分類されます。しかし、落ち葉とは生物の死骸でもあるため分解者として扱うことも可能です。つまり、一部の動物は分解者でもあり消費者でもあるという掛け持ち状態が発生します。これはよく覚えておきましょう。

\次のページで「生態系と食物連鎖の違い」を解説!/

生態系と食物連鎖の違い

生態系とよく似た単語が食物連鎖です。生態系と食物連鎖はよく似た概念ですが、明確に違う単語でもあります。 より正確な理解をするために、これら二つの単語の違いを解説していきましょう。

被食者と捕食者

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食物連鎖という単語を理解するためには、被食者と捕食者という概念が大切です。被食者とは食べる側であり、捕食者とは食べられる側の生き物を指します。食虫植物などといった特殊な例を除き、植物は昆虫や動物に食べられる被食者です。では、植物を食べる昆虫は捕食者なのでしょうか。

実はそうでもありません。植物を食べるバッタなどの昆虫は、カマキリやクモなどの餌から見ると食べられる側の生き物である被食者に分類されます。また、バッタを食べるカマキリやクモなども鳥などから見れば被食者であり、鳥も蛇などの被食者になりえるのですね。つまり、被食者や捕食者という概念は見方によって変わってしまうのです。ここが生態系との大きな違う点になります。

生態系を維持する意味とは?

先ほどまでの章で生態系がどういったものか理解することができたでしょうか。近年では、 人間の急速な自然開発によって生態系が崩れており、それを問題視する専門家の指摘がされています。しかし、生態系が少し崩れたからといって私たちの暮らしに何か影響があるのでしょうか。この章では、生態系を維持することによるメリットについて解説していきます。

その1.生態系バランスを崩すリスクを回避する

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ある1種類のの生物種が生態系にどのような影響を及ぼしているのか、まだ人間は正確に把握することができていません。人間にとって有害な蚊でさえ、 短期間で絶滅させると蚊を餌にする様々な動物をはじめとした生き物が絶滅するという研究結果があります。 実際に起こった例として、ニホンオオカミと鹿の関係を説明しましょう。

昔の日本では、ニホンオオカミと言う鹿を食べる固有種が存在していました。しかし、近代化した日本では家畜を食べる害獣として駆除された過去があります。その結果、被食者である鹿が大量発生し森のを草花を食べ荒らしてしまいました。その中には過度な捕食によって絶滅したものも存在します。このように、日本オオカミの駆除がある植物種の絶滅につながることがあるのです。これを防ぐためにも、生態系バランスを崩さない必要があるということですね。

\次のページで「その2.人間の役に立つ未知の動植物の絶滅を回避する」を解説!/

その2.人間の役に立つ未知の動植物の絶滅を回避する

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生態系のバランスを人工的に崩すと、予期せぬ生き物の絶滅につながることを紹介しました。しかし、人間に直接関わりのない動植物が絶滅したところで生活に関係がないのでは?と思う人がいるかもしれません。この考えは『未知の生物が人類に与える将来的な価値』を無視した考えです。

例えば、鹿が大量発生した結果食べられて絶滅した植物があるとしましょう。この植物が、実はあるウイルスの特効薬の成分をもつ可能性があったかもしれません。 このような概念を遺伝的多様性と呼び、生態系の損なうことはこの多様性を失うことに他なりません。遺伝的多様性そのものが人類にとって重要な資源であり、これを保全することは人類にとって有益であるというのが生態系保存の考え方です。

生態系って複雑で大切

今回の記事では生態系について詳しく解説しました。地球上に存在する生物は互いに大いに影響し合って生きています。決して単独で生きているのではありません。地球にはこれだけたくさんの種類の生き物がいるのだから一種類くらい絶滅しても大したことないと思うかもしれませんがその影響ははかり知れず、遺伝資源としての未来の可能性を失ってしまうことになるのです。人間にとって有益な生き物も、そうでない生き物もそれぞれが複雑に関係し合って生きています。人間の生活を優先して生態系を壊してしまうことで、かえって人間が不利益を被ることが起こりうるのです。人類が発展を考える時に生態系への影響を忘れてはいけません。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 5分で分かる「生態系」食物連鎖や生態系における生物の役割を理系院卒ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
理科生態系生物

5分で分かる「生態系」食物連鎖や生態系における生物の役割を理系院卒ライターがわかりやすく解説!

生態系という言葉を聞いたことがあるか。俺達が住んでいる地球にはたくさんの生き物が生息しており、互いに密接に関わり合いながら生きている。しかし、全ての生き物が人間にとって有益なわけではない。害虫や害獣と分類されるような生きのことです。このような生き物でも生態系を維持する上では非常に重要な役割を果たしている。
今回の記事では、生態系の詳細に関して国立大学院で修士号(農学)を取得ているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

生態系の概念

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生態系とはどういった意味の言葉でしょうか。一般的に、生物同士のやりとりが網の目のように密接につながるさまを『生態系』と言います生態系という概念は非常に広く、広大な海や熱帯雨林だけでなく、より小さい沼や池など様々なものが生態系です。 ここでは、その生物が持つ役割が重要となります。生態系という概念では、生き物は大きく分けて生産者、消費者、分解者のいずれかです。 それでは、各区分について詳しく解説していきましょう。

その1.生産者

無機物から有機物をつくることのできる生物を生産者と言います。具体的には、地上に生えている植物や海藻、水中にいる植物プランクトンなどですね。これらの生物の特徴は何と言っても『葉緑体を用いた光合成』です。

光合成とは、太陽光を活用し水と二酸化炭素を原料としてグルコースを作る反応のことを言います。グルコースは生物の体を動かす原動力であり、車でいうガソリンのような働きです。このグルコースは植物の体内ででんぷんとして保存され、有事の際の貯蔵庫としての役割果たします。でんぷんを貯蔵する植物として代表的なのはじゃがいもなどです。中学校の時に『ヨウ素デンプン反応』も習った人も多いと思います。このように、地球上のすべての生物が計測できる土台をつくる大切な役割を果たすのが生産者です。

その2.消費者

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光合成をすることができるのは植物だけであり、私たち人間をはじめとした全ての動物は『捕食』することによってエネルギーを得ます。このように、 体内に有機物を取り入れている生き物が消費者です。具体例としては、人間をはじめとしたすべての動物や昆虫、魚や動物プランクトンなどですね。

動物は植物の葉っぱや小動物も食べることによって有機物を吸収していますよね。この時、吸収した有機物はアミノ酸や糖(グルコース)、脂質と呼ばれる最小単位に分解され、その後肝臓や皮下脂肪という形で貯蔵されます。これらの貯蔵物質は獲物が取れなくなった時に分解することで飢えをしのぐのですね。

その3.分解者

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どんな植物や動物であっても、ある時必ず寿命が来るものです。また、消費者は吸収しきれなかった有機物を『排泄物』という形で環境に放出します。その時に出てくる死骸や落ち葉、動物のフンやた食べ残しなどを餌にする生き物が分解者です。具体的には菌類や細菌類などのことを言います。

しかし、分解者というグループは他の二つと違って少し複雑です。例えば、落ち葉や土の中にいるミミズやダンゴムシなどを例にとって考えましょう。 これらの生き物は植物の落ち葉を食べて生きているため、消費者に分類されます。しかし、落ち葉とは生物の死骸でもあるため分解者として扱うことも可能です。つまり、一部の動物は分解者でもあり消費者でもあるという掛け持ち状態が発生します。これはよく覚えておきましょう。

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