
端的に言えば「屋上屋を架す」の意味は「無駄なことをすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「屋上屋を架す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「屋上屋を架す」の意味は?
「屋上屋を架す」には、次のような意味があります。
屋根の上にさらに屋根を架ける。むだなことをするたとえ。屋下に屋を架す。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「屋上屋を架す」
この言葉は「無駄なこと、必要のないことをする。そのたとえ」を意味する慣用表現です。
「屋上屋(おくじょうおく)」は一つの単語ではなく、「屋上」と「屋(おく)」に分かれています。「屋上」はご存じの通り、屋根の上のこと。特に、平らで人が出入りできるようになっている場所のことですね。「屋」は「住処」や「屋根」を意味します。
つまり「屋上屋を架す」とは「屋根の上に、屋根を作ること」。同じものを重ねるわけですから「無駄なものを作る、する」という意味になるのですね。またこのことから、無駄なことを「重ねてする」というニュアンスも持っています。例文で使い方を確認してみてください。
引用にもあるように「屋下(おくか)に屋を架す」という表現で同じ意味の言葉もあります。違いは「屋根」の「上」か「下」ということ。こちらの意味は、次の語源の項でご紹介します。
「屋上屋を架す」の語源は?
次に「屋上屋を架す」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、先に引用した「屋下に屋を架す」という表現が変化したものと考えられています。
「屋下に屋を架す」は、中国の思想書『世説新語(せせつしんご)』や『顔氏家訓(がんしかくん)』の中で使われ、詩の作り方や思想の立て方について「以前あったのものと同じことを繰り返していて、無駄だ」と、批判する際のたとえとして使われているのです。
これが後世に日本に伝わり「屋上屋を架す」と変化したようですが、「屋上の下に屋根を作る」のは物理的に難しいので「屋上の上に」と考えられたのでしょうか。外国の思想を学ぶほどの高官は建築技術にも詳しかったのかも、と想像もできる面白いポイントです。
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