この記事では「屋上屋を架す」について解説する。

端的に言えば「屋上屋を架す」の意味は「無駄なことをすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「屋上屋を架す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「屋上屋を架す」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「屋上屋を架す(おくじょうおくをかす)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「屋上屋を架す」の意味は?

「屋上屋を架す」には、次のような意味があります。

屋根の上にさらに屋根を架ける。むだなことをするたとえ。屋下に屋を架す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「屋上屋を架す」

この言葉は「無駄なこと、必要のないことをする。そのたとえ」を意味する慣用表現です。

「屋上屋(おくじょうおく)」は一つの単語ではなく、「屋上」と「屋(おく)」に分かれています。「屋上」はご存じの通り、屋根の上のこと。特に、平らで人が出入りできるようになっている場所のことですね。「屋」は「住処」や「屋根」を意味します。

つまり「屋上屋を架す」とは「屋根の上に、屋根を作ること」。同じものを重ねるわけですから「無駄なものを作る、する」という意味になるのですね。またこのことから、無駄なことを「重ねてする」というニュアンスも持っています。例文で使い方を確認してみてください。

引用にもあるように「屋下(おくか)に屋を架す」という表現で同じ意味の言葉もあります。違いは「屋根」の「上」か「下」ということ。こちらの意味は、次の語源の項でご紹介します。

「屋上屋を架す」の語源は?

次に「屋上屋を架す」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、先に引用した「屋下に屋を架す」という表現が変化したものと考えられています。

「屋下に屋を架す」は、中国の思想書『世説新語(せせつしんご)』や『顔氏家訓(がんしかくん)』の中で使われ、詩の作り方や思想の立て方について「以前あったのものと同じことを繰り返していて、無駄だ」と、批判する際のたとえとして使われているのです。

これが後世に日本に伝わり「屋上屋を架す」と変化したようですが、「屋上の下に屋根を作る」のは物理的に難しいので「屋上の上に」と考えられたのでしょうか。外国の思想を学ぶほどの高官は建築技術にも詳しかったのかも、と想像もできる面白いポイントです。

\次のページで「「屋上屋を架す」の使い方・例文」を解説!/

「屋上屋を架す」の使い方・例文

「屋上屋を架す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・スタッフが会場設営を完成させていたというのに、当日やってきたオーナーがデザインを再配置しだして大騒ぎに。屋上屋を架すようなことは本当に辞めて欲しい。

・本来、古代からの厳選された良書を紹介する企画だったのに、途中でシェイクスピア作品特集をしたいと言い出した奴がいて、屋上屋を架すような議論に時間が使われている。

・明日大事な初デートなんだと言ったら、友達が行き先からランチメニューまで考えてくれてありがたいのだが、既に決めていた僕としては屋上屋を架すとしか言いようがなかった。

無駄なことを重ねる」というニュアンスが伝わりますでしょうか。

既にある屋根の上にまた屋根を重ねるため、「既に完了・決定しているのに」「もう試しているのに」、また無駄なことをしたという意味合いがあると適切でしょう。

無駄は無駄でも、「最初から無理なことに挑戦して、無駄になった」はややニュアンスが違いますね。「徹夜明けでフルマラソンなんて、屋上屋を架すようなものだ」とは言わないでしょう。

辞書によっては詳しい区別をしていないものもありましたが、そこまで押さえておくと、この言葉の持つ意味合いがしっかりと表現できるでしょう。

「屋上屋を架す」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「屋上屋を架す」の類義語は「泥裡(でいり)に土塊(どかい)を洗う」がいいでしょう。

「泥裡に土塊を洗う」

「泥裡に土塊を洗う」は、「泥水の中で土の塊を洗うように、意味のない大変なことをする。そのたとえ」を意味する慣用表現です。泥の中で土を洗うのですから、とても無駄な行為と言えますね。「裡」は「裏側、内側」という意味で「胸裡(きょうり)」という熟語もあります。

「屋上屋を架す」との違いは、こちらには「無駄を重ねる」という意味はなく「無駄な苦労・骨折りをする」というニュアンスに寄っている点。「汚れや醜さがひどい」という意味合いもあります。違いを理解して、より適切な文脈で使えるようにしましょう。

\次のページで「「屋上屋を架す」の対義語は?」を解説!/

世界で偉人と言われている人たちは、周囲から、泥裡に土塊を洗うようなものだと笑われながらも、その行いを最後まで貫いた人物であることが多い。

「屋上屋を架す」の対義語は?

「屋上屋を架す」の対義語は「そつがない」などがいいでしょう。

「そつがない」

「そつがない」は「無駄や無益ではない」という慣用表現。「そつ」は「無駄・無益・手抜かり」と言った意味を持っていますが、語源ははっきりしていない言葉です。

「そつがない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。そのような人は、同じことを何度も繰り返したり無駄なことをしたりせず、「屋上屋を架す」ようなトラブルとは無縁にスムーズに物事を進める人でしょう。

どんな物事もそつなくこなしてしまう先輩だが、本人曰く、自分の部屋の片づけだけはどうしても苦手らしい。

「屋上屋を架す」の英訳は?

image by PIXTA / 67621850

「屋上屋を架す」の英語訳は「paint the lily」が考えられます。

「paint the lily」

これは直訳すれば「百合の花を塗る」ということ。自然の植物はそのままの姿で完成されており、それに後から色を付けようとするのはまさに「屋上屋を架す」行為といえるでしょう。

この「paint」は「gilt=金メッキをする、虚飾する」という単語に置き換えることもでき、こちらのほうがより「見せかける、うわべだけである」というニュアンスが強くなります。

いずれにしても、花に色を塗るという言い回しから「無駄なことをする」という意味合いになるのは、英語圏の人々の意識も見えてくるようで面白い言い回しですね。

\次のページで「「屋上屋を架す」を使いこなそう」を解説!/

Why did you do that? That's painting the lily!
どうしてそんなことをしたの?それは屋上屋を架すようなものだよ!

「屋上屋を架す」を使いこなそう

この記事では「屋上屋を架す」の意味・使い方・類語などを説明しました。

屋根の上に屋根、などと意味がわかると納得の慣用表現でしたね。

語源では屋上の下に、という表現だったのも面白いところ。本当に作るとしたらどんな風になるのかと想像してみても、工事が大変だろうし、やっぱり無駄だなと思ってしまいますね。

" /> 【慣用句】「屋上屋を架す」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「屋上屋を架す」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「屋上屋を架す」について解説する。

端的に言えば「屋上屋を架す」の意味は「無駄なことをすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「屋上屋を架す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「屋上屋を架す」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「屋上屋を架す(おくじょうおくをかす)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「屋上屋を架す」の意味は?

「屋上屋を架す」には、次のような意味があります。

屋根の上にさらに屋根を架ける。むだなことをするたとえ。屋下に屋を架す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「屋上屋を架す」

この言葉は「無駄なこと、必要のないことをする。そのたとえ」を意味する慣用表現です。

「屋上屋(おくじょうおく)」は一つの単語ではなく、「屋上」と「屋(おく)」に分かれています。「屋上」はご存じの通り、屋根の上のこと。特に、平らで人が出入りできるようになっている場所のことですね。「屋」は「住処」や「屋根」を意味します。

つまり「屋上屋を架す」とは「屋根の上に、屋根を作ること」。同じものを重ねるわけですから「無駄なものを作る、する」という意味になるのですね。またこのことから、無駄なことを「重ねてする」というニュアンスも持っています。例文で使い方を確認してみてください。

引用にもあるように「屋下(おくか)に屋を架す」という表現で同じ意味の言葉もあります。違いは「屋根」の「上」か「下」ということ。こちらの意味は、次の語源の項でご紹介します。

「屋上屋を架す」の語源は?

次に「屋上屋を架す」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、先に引用した「屋下に屋を架す」という表現が変化したものと考えられています。

「屋下に屋を架す」は、中国の思想書『世説新語(せせつしんご)』や『顔氏家訓(がんしかくん)』の中で使われ、詩の作り方や思想の立て方について「以前あったのものと同じことを繰り返していて、無駄だ」と、批判する際のたとえとして使われているのです。

これが後世に日本に伝わり「屋上屋を架す」と変化したようですが、「屋上の下に屋根を作る」のは物理的に難しいので「屋上の上に」と考えられたのでしょうか。外国の思想を学ぶほどの高官は建築技術にも詳しかったのかも、と想像もできる面白いポイントです。

\次のページで「「屋上屋を架す」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: