国語言葉の意味

「一矢を報いる」は元寇に語源アリ?意味・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「一矢を報いる」について解説する。
端的に言えば、一矢を報いるの意味は「反撃する」ことです。スポーツの報道などでよく耳にする言葉ですが、どのようなシチュエーションで使われているかきちんと理解しておこう。また、由来とされている出来事についても見ていきます。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「一矢を報いる」の意味をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「一矢を報いる」の意味・語源・例文

image by iStockphoto

「一矢を報いる」は、新聞報道などでときどき見かける表現ですね。まず辞書で意味をチェックし、語源について解説します。また、例文を使って使い方も見ていきましょう。

「一矢を報いる」の意味

複数の辞書を使って「一矢を報いる」の意味を確認してましょう。

・敵の攻撃に対して、矢を射返す。転じて、自分に向けられた攻撃・非難などに対して、大勢は変えられないまでも、反撃・反論する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「一矢を報いる」

・敵に対して、矢を一本効果的に射返す。反撃する。転じて、相手の攻撃、論難に対して、少しでも反撃や反論する。やり返す。
出典:日本国語大辞典精選版「一矢を報いる」

・「一矢を報いる」に同じ。僅かでも相手に仕返しを食らわすこと。
出典:実用日本語表現辞典「一矢報いる」

「一矢」は一本の矢、「報いる」は「他人からされたことや、もらったものに対して、それに見合うものを返す」という意味。「恩に報いる」というように自分にとってよいことをしてもらったことを感謝し、それにふさわしいことを返すという意味があります。しかし「一矢を報いる」は、「自分に向けられた攻撃や避難に対してやり返す」という意味あいで「報いる」が使われていますよ。

どの辞書を見ても、ただ仕返しをするのではなく「相手から攻撃され、劣勢ではあるが、わずかでも相手に対してやり返す」というニュアンスが含まれていることがわかります。

「一矢を報いる」は元寇に語源アリ?

「一矢を報いる」は、1度目の元寇である文永の役での出来事に由来するという説があります。

鎌倉時代中期、アジアだけでなくヨーロッパにも勢力範囲を広げていたモンゴル帝国は、日本にも2度攻めてきました。これを「元寇(げんこう)」と呼びます。1274年、元は900隻の大艦隊で襲来し、対馬・壱岐はすぐに制圧され、九州の博多にも上陸しました。文永の役ですね。

2度の蒙古襲来に際して、指揮官として九州の御家人たちを率いていた小弐景資(しょうに かげすけ)は、弓の名手でもありました。蒙古の軍事力は圧倒的でしたが、景資は、蒙古の副司令官のひとり劉復亨(りゅうふくこう)を弓で射て深手を負わせたのです。これが「一矢を報いる」の由来と言われています。

「一矢を報いる」の例文

つぎは、例文で「一矢を報いる」の使い方を見ていきましょう。

1.甲子園予選の県大会で初戦から強豪校と対戦し、5回で9対0となった。チーム内にあきらめムードが漂っていたが、監督は「まだチャンスはある。何とか1点だけでもとって一矢を報いるんだ!」と部員を鼓舞した。
2.新製品を発売したが、業界大手のA社の新商品と商品コンセプトが類似しており、売上で大差をつけられていた。しかし、商品比較サイトで、A社より自社の製品のほうが優れているという記事が掲載されたのを見て、一矢を報いたと思った。

1番目の例文は、野球の試合で強豪校に大差をつけられている状況で、せめて一点だけでも返そうということです。部員が「一矢を報いる」の意味を理解できれば、奮起するかもしれませんが…。スポーツの中継や試合結果の報道で、「一矢を報いる」というフレーズは頻繁に使われていますね。

2番目の例文は業界大手の会社に売上では圧倒的に負けているけれど、製品が評価されて少しやり返すことができたという意味です。「一矢を報いる」は劣勢ではあるけれど、少しでも反撃できたことを肯定的にとらえている言葉ですよ。

\次のページで「「一矢を報いる」の類義語」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: