毎日太陽が昇り沈んでいることはみんな知っているな。これは太陽の周りを地球が自転しながら回っているからです。この地球が回っているという考え方を「地動説」という。

今では常識の地動説。しかし人々に信じられてきた期間でいえば地球の周りを太陽やほかの天体が回っているという「天動説」の方がずっと長い。そんな天動説をまとめたのがプトレマイオスと言う人物です。プトレマイオスが天動説をまとめて惑星運動のモデルを作り、それが世間に広まっていった。

今回は天動説をまとめたプトレマイオスについて学んでいく。解説は科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

天文学について勉強中の科学館職員。子供の頃はよくギリシア神話を読んで星座の物語を学んでいた。毎日星占いを確認しつつ、都合のいいことしか信じていない楽天家。

プトレマイオスとは

今回のテーマは「プトレマイオス」です。あまり聞いたことのない名前ですがどんな人物なのでしょうか。

プトレマイオスは天動説をまとめた人物で、古代ローマで活躍した学者です。天文学だけでなく、数学や占星学など幅広い分野で業績を残しました。プトレマイオスが残したものとして「アルマゲスト」が有名です。

プトレマイオスの業績については後程詳しく解説しますね。

ここでおさらい!地動説と天動説

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太陽が昇ったり、星が動くのは地球が動くからなのか天体が動くからなのか…ということを考えるのが「地動説」と「天動説」です。

天動説をまとめたプトレマイオスについて学ぶ前に、地動説と天動説について確認していきましょう。

昔の常識、今の非常識!?天動説

昔の常識、今の非常識!?天動説

image by Study-Z編集部

プトレマイオスが体系化した天動説。コトバンクによると「地球が宇宙の中央に位置して静止し、太陽、月などが地球のまわりを回るという説」とされています。地球が宇宙の中心とされていることで地球中心説と呼ばれることもある理論です。

天動説の元となる考えが生まれたのは紀元前4世紀頃のことで、エウドクソスという人物によって考えられました。エウドクソスは古代ギリシアの数学・天文学者でエジプトやアテナで暮らしていたそうです。エウドクソスは天動説を唱えた他、円錐の体積の求め方を証明しました。

その後、アリストテレス(紀元前384年~322年)が世界の中心に地球があり、その外側を月や水星が同心円状に存在しているという宇宙論を論じています。

アリストテレスについて知りたい人はこちらの記事も読んでみてくださいね。

天動説についてはこちらの記事をどうぞ。

\次のページで「昔の非常識、今の常識!?地動説」を解説!/

昔の非常識、今の常識!?地動説

昔の非常識、今の常識!?地動説

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地動説が生まれたのは紀元前3世紀頃のことです。サモスのアリスタルコス(紀元前310年~紀元前230年)によって考えられました。宇宙の中心は太陽という太陽中心説を唱えるも天動説の方が受け入れられていたため、ニコラス・コペルニクス(1473年2月19日~1543年5月24日)が登場するまでこの考えが広まることはほとんどなかったのです。コペルニクスは今から520年ほど前に著書「コメンタリオス」で地動説を主張しました。

地動説についてはこちらの記事をどうぞ。

地動説を発展させたコペルニクスについてはこちらの記事でどうぞ。

クラウディオス・プトレマイオス

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ラファエロ・サンティ - The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, リンクによる

地動説をまとめたクラウディオス・プトレマイオス( 83年頃 ~ 168年頃)。プトレマイオスは天文学だけでなく、占星学や音楽、数学、地理学など様々な分野で活躍した古代ローマの学者で、エジプトのアレクサンドリアで活躍していたそうです。正確な出生時期や場所は不明でエジプト人という説もギリシア人という説もあります。なおプトレマイオスは英語名でトレミーというそうです。

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ラファエロ・サンティ - Web Gallery of Art:   静止画  Info about artwork, パブリック・ドメイン, リンクによる

なお画像はルネサンスを代表するイタリア出身の画家、ラファエロ・サンティ( 1483年4月6日~1520年4月6日)が描いたがいたバチカン市国所有の「アテナイの学堂」という作品です。この絵画の右端に王冠をかぶり地球儀を持っている人物がいますね。それがプトレマイオスです。

ちなみにプトレマイオスとはギリシアの男性名で、プトレマイオス朝という王朝もあります。紀元前323年から紀元前30年、アレクサンドロス3世(通称、アレクサンドロス大王)の将軍プトレマイオス1世ソテルからクレオパトラ7世までが支配したエジプトのマケドニア人による王朝です。このプトレマイオス朝最後の女王、聞き覚えがある人もいるでしょう。クレオパトラ7世とは絶世の美女と知られるあのクレオパトラのことです。

著書「アルマゲスト」

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Jan van Loon - http://nla.gov.au/nla.map-nk10241, パブリック・ドメイン, リンクによる

プトレマイオスの著書といえば「アルマゲスト」。現代では古代ギリシアの天文学についての貴重な情報源となっている書物です。13巻からなる「アルマゲスト」は天文学や幾何学について書かれた専門書で、太陽やその他の惑星が地球の周りを回っているという「天動説」が書かれています。この天動説が惑星の運動を説明するモデルとして長い間使われていました。

13巻それぞれのおおまかな内容については次のようになっています。

1巻 アリストテレスの宇宙論他

2巻 天体の入集運動などについて

3巻 太陽の運動について

4・5巻 月について

6巻 日食・月食

7・8巻 恒星について

9巻 肉眼で見える惑星について、水星の運動

10巻 金星、火星の運動

11巻 木星、土星の運動

12巻 逆行について

13巻 惑星の黄道からのずれについて

「アルマゲスト」の1巻にはプトレマイオスが考えた宇宙観がまとめられています。これを簡単にまとめると地球は「宇宙の中心に位置し、球状で動かない」とされているのです。

またプトレマイオスは宇宙には地球を中心とした球体が層となって存在し(天球)、惑星はそこに張り付くように存在していると考えていました。この惑星モデルは時代とともに多少順番が変わったそうですが、長く天文学の分野で使われていったのです。プトレマイオスは天球の順を地球から近い方から以下のように順序をつけていました。

・月

・水星

・金星

・太陽

・火星

・木星

・土星

・恒星の天球

プトレマイオスによるその他の業績

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クラウディオス・プトレマイオス - photograph of 1451 book, パブリック・ドメイン, リンクによる

プトレマイオスの著書は他に「テトラビブロス」「光学」があります。

「テトラビブロス」は占星術について書かれている本です。この本は星の位置は常に変化しそれが世界にもたらす影響について記していて、西洋占星術の古典として知られています。また「光学」という書物では光の性質として反射、屈折、色彩について述べているそうです。

プトレマイオスの功績

クラウディオス・プトレマイオスは83年から168年頃に活躍した人物です。この頃の日本は弥生時代で、卑弥呼が登場するよりも前になります。そんな頃から宇宙の中心が地球なのか太陽なのかが考えられていたのですね。

プトレマイオスは天動説を唱えた他、いろいろな分野で成果を出した人物です。その後、結果として天動説は否定されてしまいました。しかし、コンピューターどころか望遠鏡もない時代にこれだけの観測を行い結果をまとめたのはすごいことです。いろいろな研究者の努力によって今の科学があるのですね。

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地学地球理科

プトレマイオスとはどんな人物?その人生を科学館職員がわかりやすく解説

毎日太陽が昇り沈んでいることはみんな知っているな。これは太陽の周りを地球が自転しながら回っているからです。この地球が回っているという考え方を「地動説」という。

今では常識の地動説。しかし人々に信じられてきた期間でいえば地球の周りを太陽やほかの天体が回っているという「天動説」の方がずっと長い。そんな天動説をまとめたのがプトレマイオスと言う人物です。プトレマイオスが天動説をまとめて惑星運動のモデルを作り、それが世間に広まっていった。

今回は天動説をまとめたプトレマイオスについて学んでいく。解説は科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

天文学について勉強中の科学館職員。子供の頃はよくギリシア神話を読んで星座の物語を学んでいた。毎日星占いを確認しつつ、都合のいいことしか信じていない楽天家。

プトレマイオスとは

今回のテーマは「プトレマイオス」です。あまり聞いたことのない名前ですがどんな人物なのでしょうか。

プトレマイオスは天動説をまとめた人物で、古代ローマで活躍した学者です。天文学だけでなく、数学や占星学など幅広い分野で業績を残しました。プトレマイオスが残したものとして「アルマゲスト」が有名です。

プトレマイオスの業績については後程詳しく解説しますね。

ここでおさらい!地動説と天動説

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太陽が昇ったり、星が動くのは地球が動くからなのか天体が動くからなのか…ということを考えるのが「地動説」と「天動説」です。

天動説をまとめたプトレマイオスについて学ぶ前に、地動説と天動説について確認していきましょう。

昔の常識、今の非常識!?天動説

昔の常識、今の非常識!?天動説

image by Study-Z編集部

プトレマイオスが体系化した天動説。コトバンクによると「地球が宇宙の中央に位置して静止し、太陽、月などが地球のまわりを回るという説」とされています。地球が宇宙の中心とされていることで地球中心説と呼ばれることもある理論です。

天動説の元となる考えが生まれたのは紀元前4世紀頃のことで、エウドクソスという人物によって考えられました。エウドクソスは古代ギリシアの数学・天文学者でエジプトやアテナで暮らしていたそうです。エウドクソスは天動説を唱えた他、円錐の体積の求め方を証明しました。

その後、アリストテレス(紀元前384年~322年)が世界の中心に地球があり、その外側を月や水星が同心円状に存在しているという宇宙論を論じています。

アリストテレスについて知りたい人はこちらの記事も読んでみてくださいね。

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