この記事では「堂に入る」について解説する。

端的に言えば堂に入るの意味は「物事に習熟していること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「堂に入る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「堂に入る」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「堂に入る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「どうにいる」です。意味を確認したあと、語源など関連する詳しい情報をチェックしていきますよ。

「堂に入る」の意味は?

「堂に入る」には、次のような意味があります。まずは、国語辞典の意味を確認した上で、詳しいニュアンスまで見ていきましょう。

1.学問や技芸がすぐれて、深奥をきわめている。また、技術的に熟練していて、身についている。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「堂に入る」

「堂に入る」とは、一定以上のレベルに達しているという意味です。また、高いレベルであるだけでなく、経験も豊富でありながら熟達しているという意味合いがあります。

その対象となるのは、学問や知識、芸術、芸能などのほか、任務や役割、何らかを製作する技術など、さまざまです。これらが優れていることが、衆目が認めるところであるというニュアンスもありますよ。

「堂に入る」の語源は?

次に「堂に入る」の語源を確認しておきましょう。

「堂に入る」の由来は、孔子(こうし)の言行録である『論語(ろんご)』です。その先進第十一に、孔子と弟子の子路(しろ)との会話があります。

孔子が子路に瑟(しつ、琴のような楽器)の腕前は十分ではないというと、周りの門人たちは子路に敬意を払わなくなりました。そこで孔子は「由(ゆう、子路のこと)や堂に升(のぼ)れり。未だ室に入らず」と言います。「子路はすでに堂に昇っている。室に入っていないだけだ。」という意味です。

高官の居宅に例えた話であり、客間である「堂」には昇ったものの、「室」という主に家族が使う奥の間にはまだ入っていないという意味になっています。一定レベルには達していますが、深奥には達していないということを「堂に升れり。未だ室に入らず」と表していますよ。これがもとになり「堂に入る」となりました。

\次のページで「「堂に入る」の使い方・例文」を解説!/

「堂に入る」の使い方・例文

「堂に入る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.久しぶりに帰省した際、寺院を継いだ友人のお経や挨拶が堂に入っており驚いた。
2.中国からの留学生の日本語は、語彙力も発音も立派なもので堂に入っていた。

二つの例文は、ともに十分な技量を身につけているだけでなく、人前で披露するのにも十分な経験を積んでいるようすがわかります。

例文1.は、お寺を継いだ友人の仕事ぶりが、非常に立派で堂々としたものだったことが書かれた文です。例文の2.のほうは、外国語を学ぶ際には語彙力と発音は簡単に身につかないものですが、その留学生の日本語は十分なレベルに達していたことが書かれています。

「堂に入る」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

それでは、「堂に入る」の類義語についての説明です。技量も経験も十分であるという「堂に入る」について、近い意味の慣用句がたくさんあるのでいくつか見ていきましょう。

「板に付く」

「堂に入る」の類義語には、「板に付く(いたにつく)」があります。意味は、経験を積み、動作や態度が職業や地位に見合うようになってきたということです。「板」は芝居の舞台のことを表しているので、「板に付く」で舞台が定着するといったニュアンスになります。

「堂に入る」と同じく、「板に付く」も芸事の熟練度や経験がもとになっていますが、現在では職業や役割など幅広い場面で使われていますよ。

\次のページで「「様になる」」を解説!/

「様になる」

もう一つの類義語には、「様になる(さまになる)」があります。何かをするようすや出来上がったようすがふさわしい格好になるという意味です。何かをする所作や格好が一定のレベルに達しているということを表しています。

ここでの一定のレベルとは、人並みのレベル、見劣りしないレベルという意味合いです。また、努力や経験を要さずに、ただ服が似合っているという場合に使うこともあります。

「堂に入る」の対義語は?

次に、「堂に入る」の対義語についての説明です。対義語ということなので、技量や経験が十分ではないと意味合いの表現について、一緒に見ていきましょう。

「取るに足りない」

「堂に入る」の対義語には、「取るに足りない(とるにたりない)」があります。意味は、取り上げるだけの価値はないことです。また、ささいなこと、つまらないことといった意味もあります。

「取るに足りない話」などと一般的な名詞とともに使うことも多いのですが、「取るに足りない人物」「取るに足りない出来栄え」など人や技量を表す言葉とともに使うことで、「堂に入る」の対義語として使うことができますよ。

「駆け出し」

もう一つの対義語には、「駆け出し(かけだし)」があります。仕事や物事を始めたばかりで経験が浅いことやその人という意味です。「出し」とは始めの部分という意味なので、「駆け出し」で走り始めたところという意味合いがもとになっています。例えば、「書き出し」というと「書き始めの部分」のことですね。

まだ不慣れであるので、一人前にはなっていない状況を表しています。別の言い方をすると「初学者」「見習い」といった表現になりますよ。

「堂に入る」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に、「堂に入る」の英訳についての説明です。日本語の表現とは少し違ってきますが、似た意味の英語表現について見ていきましょう。

「be a master of the art」

「堂に入る」の英訳には、「be a master of the art」があります。直訳すると「芸術や技術における達人である」で、熟達度のレベルが高いことが伝わる表現です。「art」は芸術、美術のほか、技巧、熟練といった意味もあります。

ほかには、経験による安定感がより伝わる表現であれば、「be quite at home」がありますよ。こちらは、「手慣れている」という意味になりますが、もとは「まったく家にいるかのようだ」というニュアンスです。

\次のページで「「堂に入る」を使いこなそう」を解説!/

「堂に入る」を使いこなそう

今回の記事では「堂に入る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「堂に入る」の基本の意味は、学問や技芸が優れていたり、技術的に熟練していることです。これに、慣れているというニュアンスがあるため、堂々とした振る舞いであったり、自信が感じられるという意味合いも含んでいますよ。もちろん、プラスイメージで使う表現です。

" /> 【慣用句】「堂に入る」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「堂に入る」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「堂に入る」について解説する。

端的に言えば堂に入るの意味は「物事に習熟していること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「堂に入る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「堂に入る」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「堂に入る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「どうにいる」です。意味を確認したあと、語源など関連する詳しい情報をチェックしていきますよ。

「堂に入る」の意味は?

「堂に入る」には、次のような意味があります。まずは、国語辞典の意味を確認した上で、詳しいニュアンスまで見ていきましょう。

1.学問や技芸がすぐれて、深奥をきわめている。また、技術的に熟練していて、身についている。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「堂に入る」

「堂に入る」とは、一定以上のレベルに達しているという意味です。また、高いレベルであるだけでなく、経験も豊富でありながら熟達しているという意味合いがあります。

その対象となるのは、学問や知識、芸術、芸能などのほか、任務や役割、何らかを製作する技術など、さまざまです。これらが優れていることが、衆目が認めるところであるというニュアンスもありますよ。

「堂に入る」の語源は?

次に「堂に入る」の語源を確認しておきましょう。

「堂に入る」の由来は、孔子(こうし)の言行録である『論語(ろんご)』です。その先進第十一に、孔子と弟子の子路(しろ)との会話があります。

孔子が子路に瑟(しつ、琴のような楽器)の腕前は十分ではないというと、周りの門人たちは子路に敬意を払わなくなりました。そこで孔子は「由(ゆう、子路のこと)や堂に升(のぼ)れり。未だ室に入らず」と言います。「子路はすでに堂に昇っている。室に入っていないだけだ。」という意味です。

高官の居宅に例えた話であり、客間である「堂」には昇ったものの、「室」という主に家族が使う奥の間にはまだ入っていないという意味になっています。一定レベルには達していますが、深奥には達していないということを「堂に升れり。未だ室に入らず」と表していますよ。これがもとになり「堂に入る」となりました。

\次のページで「「堂に入る」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: