突然ですが君は宝石が好きでしょうか?
宝石の中でもダイヤモンドは宝石界では最も美しく高価ですね。そんなダイヤモンドは装飾の世界だけにとどまらず、物理面でもかなり優秀なんです。特にダイヤモンドの傷つきにくさは地球で一番なんです。この傷のつき辛さのことをモース硬度と言う。

今回はこのモース硬度について、地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

地球科学専攻で博士前期課程を修了した岩石大好き人間。趣味も岩石・鉱物採集なので集められた岩石が家中に転がっている。

モース硬度とは

image by iStockphoto

アクセサリーを身につけるときに、アクセサリーについているジュエリー(宝石)にどれくらいの耐久性があるかご存知でしょうか?アクセサリーを付ける人は様々な職業や生活環境であるため、アクセサリーに付いているジュエリーの耐久性も重要になります。化学工場で働いている人であれば薬品に強いジュエリー、土木の現場で働く人であれば石などで傷のつきにくいジュエリーが必要とされますよね。宝石や鉱物の耐久性を示すものの一つがモース硬度です。

モース硬度とは、宝石や鉱物への傷の付けづらさのことでモース硬度10のダイヤモンドが最も傷つきにくく、モース硬度1の滑石が最も傷が付きやすい鉱物になります。モース硬度のモースとは、この傷つきにくさの尺度を定義したドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが由来です。

以下にモース硬度の代表例を挙げてみました。これらの宝石や鉱物は標準鉱物とも呼ばれます。

モース硬度10:ダイヤモンド、地球上で最も硬い

モース硬度9:コランダム、石英やトパーズに傷をつけられる

モース硬度8:トパーズ、石英に傷をつけられる

モース硬度7:石英、ガラスや鋼鉄に傷をつけられる

モース硬度6:正長石、ナイフでは傷つかず、刃が痛む

モース硬度5:燐灰石、頑張ればナイフで傷をつけられる

モース硬度4:蛍石、簡単にナイフで傷がつく

モース硬度3:方解石、頑張れば硬貨で傷がつく

モース硬度2:石膏、頑張れば指の爪で傷がつく

モース硬度1:滑石、最も柔らかい鉱物

身近なもののモース硬度

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では、それぞれのモース硬度別に身近なものを例に挙げて説明していきましょう。

硬いもの編

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ここまでそれぞれのモース硬度と鉱物(宝石)の名前を対応させながら解説してきましたが、知らない名前の鉱物も多くピンとこない人も多いと思うので、身近なものにモース硬度を当てはめた場合について説明します。

まず、モース硬度10はダイヤモンドしか当てはまるものがないためこのままです。続いてモース硬度9はルビーやサファイアが該当します。先程モース硬度9はコランダムと記載しましたが、赤いコランダムをルビー、青いコランダムをサファイアと呼ぶんですよ。モース硬度8はエメラルド、アクアマリンが該当します。正確にはモース硬度7.5ですが、7より硬いということでモース硬度8に含めました。モース硬度7は人間の歯です。人間の歯と言っても、歯をコーティングしているエナメル質の部分が該当します。歯のエナメル質は人体の中で最もモース硬度の高い物質なんです。モース硬度6はオパールです。オパールはとても人気の高い宝石のため、割と身近に付けている人がいるかも知れません。

\次のページで「柔らかいもの編」を解説!/

柔らかいもの編

続いてモース硬度5以下の比較的柔らかいものについて説明します。モース硬度5に該当するのはガラスです。ガラスと石英を混同する人がかなり多いですが、全く別ものなので併せて覚えておきましょう。モース硬度4には鉄や真珠が該当します。鉄はクロムやニッケルなどを混ぜて鋼鉄にするととても硬いのですが、純粋な鉄だと柔らかいのです。モース硬度3には珊瑚が該当します。アクセサリーとしても人気の高い珊瑚ですが、意外と柔らかいので取り扱いには注意しましょう。モース硬度2は岩塩や純金が該当します。モース硬度1はチョークです。モース硬度1の柔らかさはイメージできましたか?

一緒に覚えておきたい「ビッカース硬度」「ガラスコーティング」

ビッカース硬度とモース硬度

ビッカース硬度とモース硬度

image by Study-Z編集部

鉱物に傷がどれくらい付きやすいかの尺度がモース硬度でしたが、これだけでは鉱物がどれくらい頑丈なのかイマイチわかりませんよね。例えば衝撃や圧力に対してどれくらい耐えることができるか示すものはあるのでしょうか?

工業の世界ではモース硬度の他にビッカース硬度(ビッカース硬さ)というものを使っています。ビッカース硬度とは、工業に使用する材料について押し込む力に対してどれくらい強いのかを表した尺度です。ビッカース硬度の試験方法は、ダイヤモンド製のピラミッドのような形の突起を荷重をかけて押し付け、できたくぼみの表面積で産します。

ビッカース硬度の特徴は、なんといっても試験機の構造と原理がシンプルなので算出された値の信頼性が高いことです。また、柔らかい材料から硬い材料まで同一尺度で硬さの測定ができます。

ガラスコーティングとモース硬度

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スマホやタブレット端末を使用している人であれば、画面に傷がつかないように保護フィルムを貼っているのではないでしょうか?しかし、最近では画面にガラスコーティングを施す人も多くなってきました。インターネットでガラスコーティングと検索すると、モース硬度7と出てきます。

先程、身近なもののモース硬度の項でガラスはモース硬度5と説明しました。しかし、一部ではガラスと石英が同じものであると勘違いされているため、ガラスコーティングは石英のモース硬度である7と同等だと言われてしまっているのです。石英は結晶なので、非結晶であるガラスよりは硬くできています。ガラスコーティングの正しい硬度はモース硬度ではなく、鉛筆硬度が用いられているようです。鉛筆硬度はコーティングや塗装業界で使用されている尺度で、3Hの鉛筆の芯で引っかいたときに傷がつくかどうかをテストします。ガラスコーティングは鉛筆硬度で高くても7H~9Hなので、7Hをモース硬度7と勘違いしたのかもしれませんね。

モース硬度や鉛筆硬度が高ければ高いほどいいのかと言えばそんなことはありません。硬ければ硬いほどクラックや多層化による剥がれが起こりやすくなるのです。モース硬度が高いと謳っている商品でも、その商品の利用方法などと併せて検討し、購入したいですよね。

身近にあるもので最も硬いものと最も柔らかいものはなんだろう

モース硬度とは強度ではなく、傷の付きやすさの指標でした。モース硬度が高いからと言って衝撃に強いとは限らず、その例としてダイヤモンドはハンマーで叩くと割れてしまいます。モース硬度の低い純金や珊瑚が使用されているアクセサリーは傷が付きやすいため、保管や身に付ける場所などを考えなければなりませんね。

人間の歯はモース硬度7というガラスよりも硬い硬度でした。身近なものの中で最もモース硬度が高いものは何でしょうか。また、ビッカース硬度や鉛筆硬度に置き換えるとどの様になるでしょうか。ぜひ身の回りのもので考えてみましょう。

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地学岩石・鉱物理科

「モース硬度」とは?身近なものの例を挙げて地球科学専攻卒が5分でわかりやすく解説

突然ですが君は宝石が好きでしょうか?
宝石の中でもダイヤモンドは宝石界では最も美しく高価ですね。そんなダイヤモンドは装飾の世界だけにとどまらず、物理面でもかなり優秀なんです。特にダイヤモンドの傷つきにくさは地球で一番なんです。この傷のつき辛さのことをモース硬度と言う。

今回はこのモース硬度について、地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

地球科学専攻で博士前期課程を修了した岩石大好き人間。趣味も岩石・鉱物採集なので集められた岩石が家中に転がっている。

モース硬度とは

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アクセサリーを身につけるときに、アクセサリーについているジュエリー(宝石)にどれくらいの耐久性があるかご存知でしょうか?アクセサリーを付ける人は様々な職業や生活環境であるため、アクセサリーに付いているジュエリーの耐久性も重要になります。化学工場で働いている人であれば薬品に強いジュエリー、土木の現場で働く人であれば石などで傷のつきにくいジュエリーが必要とされますよね。宝石や鉱物の耐久性を示すものの一つがモース硬度です。

モース硬度とは、宝石や鉱物への傷の付けづらさのことでモース硬度10のダイヤモンドが最も傷つきにくく、モース硬度1の滑石が最も傷が付きやすい鉱物になります。モース硬度のモースとは、この傷つきにくさの尺度を定義したドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが由来です。

以下にモース硬度の代表例を挙げてみました。これらの宝石や鉱物は標準鉱物とも呼ばれます。

モース硬度10:ダイヤモンド、地球上で最も硬い

モース硬度9:コランダム、石英やトパーズに傷をつけられる

モース硬度8:トパーズ、石英に傷をつけられる

モース硬度7:石英、ガラスや鋼鉄に傷をつけられる

モース硬度6:正長石、ナイフでは傷つかず、刃が痛む

モース硬度5:燐灰石、頑張ればナイフで傷をつけられる

モース硬度4:蛍石、簡単にナイフで傷がつく

モース硬度3:方解石、頑張れば硬貨で傷がつく

モース硬度2:石膏、頑張れば指の爪で傷がつく

モース硬度1:滑石、最も柔らかい鉱物

身近なもののモース硬度

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では、それぞれのモース硬度別に身近なものを例に挙げて説明していきましょう。

硬いもの編

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ここまでそれぞれのモース硬度と鉱物(宝石)の名前を対応させながら解説してきましたが、知らない名前の鉱物も多くピンとこない人も多いと思うので、身近なものにモース硬度を当てはめた場合について説明します。

まず、モース硬度10はダイヤモンドしか当てはまるものがないためこのままです。続いてモース硬度9はルビーやサファイアが該当します。先程モース硬度9はコランダムと記載しましたが、赤いコランダムをルビー、青いコランダムをサファイアと呼ぶんですよ。モース硬度8はエメラルド、アクアマリンが該当します。正確にはモース硬度7.5ですが、7より硬いということでモース硬度8に含めました。モース硬度7は人間の歯です。人間の歯と言っても、歯をコーティングしているエナメル質の部分が該当します。歯のエナメル質は人体の中で最もモース硬度の高い物質なんです。モース硬度6はオパールです。オパールはとても人気の高い宝石のため、割と身近に付けている人がいるかも知れません。

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