この記事では「横槍を入れる」について解説する。

端的に言えば横槍を入れるの意味は「戦国の世では両軍が戦う中、側面から別の一隊が攻めること。現在では横から出しゃばることを意味する言葉」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「横槍を入れる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「横槍を入れる」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「横槍を入れる」の意味や語源・使い方まとめ

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まずは、「横槍を入れる」の辞書の意味から見ていきましょう。

「横槍を入れる」の意味は?

「横槍を入れる」には、次のような意味があります。

1.両軍が入り乱れて戦っている時、別の一隊が側面から槍で突きかかる。横あいから別に攻めかかる。
2.人の談話、仕事などに横あいから、急に第三者が口出しをする。そばから非難めいた言い方をしたり、でしゃばった行ないをしたりする。さしでぐちをする。横矢を入れる。

出典 日本国語大辞典(精選版)「横槍を入れる」

「横槍を入れる」(よこやりをいれる)の槍「やり」とは、3メートル前後の長さの棒状のボディの穂先(ほさき)が刀になっている敵を突き刺す武具のことで、戦国時代を描いた映画やドラマでよく槍で両軍が戦うシーンは登場しますよね。実は槍には決められたサイズがあるわけではなく、時代や地域によって使われていた槍の長さはいろいろとあります。弓(ゆみ)が登場する以前の槍は長さが比較的短く、槍を投げることによって敵と戦った時代もありました。今でもオリンピック競技には「やり投げ」という種目がありますね。

戦闘の基本は、両軍が正面からぶつかり合うことですが、当然どの軍も側面から攻め込んだり、背後からはさみうちにすることを考えますし、また同時に側面や背後から攻め込まれないように布陣(ふじん)を組みます。辞書に説明されている通り、「横槍を入れる」は「両軍が戦闘中に別の一隊が側面から槍で突きかかる」ことを指していましたが、現在では、「当事者でない第三者が、文句を言って口出ししたり、妨害や邪魔をすること」の意味で「横槍を入れる」の慣用句は使われるようになりました。

天下統一に一番近かった戦国武将、織田信長(おだのぶなが)は、長い槍を兵士たちに持たせ、相手の騎馬軍団から容易に攻め込まれないような戦術を取ったとも言われていますし、一説には、織田軍が使用していた長槍は、竹のようにしなりやすい構造になっていて、刺すための道具としてではなく、槍を上から下に振り下ろして、敵を打ち叩く使い方をしていたという説もあります。歴史を振り返ってみると、槍隊の側面からの攻撃によって形成を逆転した戦いも多くあったと言われていますね。

「横槍を入れる」の語源は?

次に「横槍を入れる」の語源を確認しておきましょう。

いつごろから「横槍を入れる」という言葉ができたかを考えるうえで、いつ頃日本において槍が普及したのかを知る必要があります。また「側面からの攻撃の有効性」については、槍が登場する前から人々はよく知っていたことでしょう。

さて、改めて「槍の普及時期」についてですが、日本では縄文の時代においての主力の武器は「弓」だったと考えられています。弥生時代から古墳時代にかけて、中国から伝来した鉾(ほこ)という両刃の剣の登場により、柄の長い刀が普及していきました。この鉾が後の槍や薙刀(なぎなた)のモデルとなり、槍が主力の武器になったのは鎌倉時代の中期だったと言われています。相手を突き刺すことを目的にした槍は弓や刀剣を扱うのに比べて、「訓練や知識がなくても使い方が簡単な武器」のため、普及していったのでしょう。

\次のページで「「横槍を入れる」の使い方・例文」を解説!/

「横槍を入れる」の使い方・例文

「横槍を入れる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.午前の戦いでは、西軍有利に展開していたものの、小早川軍(こばやかわぐん)が西軍を裏切ると西軍本隊の側面から横槍を入れ、乱れた西軍は撤退をよぎなくされたのです。
2.俺がやっとの思いで彼女を誘い出し、デートの約束をとりつけようとしたところ、突然ヤツが「横槍を入れて」話に加わってきて、結局、デートの申し込みができなかったよ。

「横槍を入れる」は、戦国時代の戦術として語られる場合と、横から出しゃばって入って来るという現代的な使い方があるのですね。

「横槍を入れる」の類義語は?違いは?

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それでは、類義語を見ていきましょう。

「脇から口をはさむ」

「横槍を入れる」には「人の話に当事者以外が横から口を出す」という意味がありますが、同じ意味を持つ言葉に「脇から口をはさむ」(わきからくちをはさむ)というのがあります。

でしゃばりな性格の人はどこの世界にもいて、ときにお節介で、うっとうしい人ではありますが、多分もともとの性格は悪くはないのでしょう。「脇から口をはさむ」傾向はどんな人にも語り掛ける習慣のあるファミリー的な村落や、人懐っこい関西人に多いように思うのですが、みなさんはどう思われますか?

\次のページで「「間に割って入る」」を解説!/

「間に割って入る」

「当事者の間に強引に入ってくる」という類語のひとつに「間に割って入ってくる」(あいだにわってはいってくる)があります。ただ、「間に割って入ってくる」場合の目的は、「横槍を入れる」ときと異なりますね。「横槍を入れる」目的が、対立している二つの立場のどちらかを加勢することを目的としているのに対して、「間に割って入ってくる」目的は双方の「ケンカ」や「言い争い」、「いじめ」などをやめさせることを意図して間に入ってくる場合に使われるのです。両者への注意」や「関係修復」、場合によっては、「両者を納得させる交渉人」として善意で入って来る場合にもよく使われる言葉ですね。

「横槍を入れる」の対義語は?

次に「横槍を入れる」の反対語を見ていきましょう。

「手出しは無用」

時代劇などを見ているとひとりで多数のグループと対峙(たいじ)するとき、ひとりで戦いを挑む武者が「一騎討を望む」と要望することがあります。「一騎討」(いっきうち)とは、目的とする相手と「1対1で戦うこと」であり、相手の武者は、「手出し無用」(てだしむよう)とまわりの仲間たちに声を掛けるのです。「手出し無用」とは、1対1の戦いを受けた以上、勝敗は1対1で決するため「手出しはするな」という意味になります。「横槍を入れる」が仲間に勝利をもたらすために側面から共通の敵を攻撃することですが、「手出しは無用」は「相手と自分ふたりで戦う」ことに重点が置かれているのです。「助太刀無用」(すけだちむよう)という言葉も「手出しは無用」と同じ意味で使われますね。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」

「横槍を入れる」が「横から急に第三者が出しゃばった行為をしたり口出ししたりすること」であるのに対して、「つまらない原因でもめているのだろうからと間に入ったり、仲裁したりしないこと」を表すことわざに「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」(ふうふげんかはいぬもくわぬ)があります。なんでも食べようとする犬でさえ、夫婦喧嘩には見向きもしないということです。

「横槍を入れる」の英訳は?

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それでは、「横槍を入れる」の英訳を見ていきましょう。「横槍を入れる」は、「側面から槍を突き刺す」になりますので、「突き刺す」という動詞には、「pierce」を使い、槍は「spear」を使って「Pierce a spear from his/her side」となります。

しかし、この表現では、「口出しや、出しゃばりで邪魔や干渉する」というニュアンスは伝わりません。それでは、「邪魔をする」や「干渉する」を英語にするとどんな表現になるのかをご紹介しましょう。

「Interrupt」

「妨げる」「さえぎる」「邪魔をする」などにピッタリと合う英単語のひとつが「Interrupt」(ìntərʌ́pt)です。さえぎる対象はひとの話や仕事のほか、「流れ」や「交通」、「視野」を妨げるなど、多くのことがらに使える単語ですから覚えておいて使ってみてください。

いくつか「Interrupt」を使った例をご紹介しましょう。

\次のページで「「Interfere」」を解説!/

1.You had better not interrupt when someone is speaking.
(君も誰かが話しているときには、さえぎらない方がいいよ)
2.I am sorry to interrupt you in spite of being busy, but I have an urgent matter, please listen to me a minute.
(お忙しいところお邪魔して申し訳ありませんが、緊急なことがあり、わたしのいうことを聞いてください)

「Interfere」

「Interrupt」も「さえぎる」、「妨げる」という意味ですが、「干渉する」、「口出しをする」などのニュアンスを出せる単語のひとつが「Interfere」(ìnṭɚfíɚ)です。「Interrupt」と同様によく使われる単語のひとつですので、覚えておいたほうがいいですね。

それでは、例文を見ていきましょう。

1.The due date I am working on is tomorrow. Please do not interfere with my job.
(今、取りかかっている仕事の締め切りが明日なんだ。どうか仕事の邪魔をしないでくれるかな)

2.You are certainly mother of him, but he is 16, and high school student.You should not interfere in his private matter.
(確かに君は彼のお母さんではあるが、彼は16歳で高校生だ。個人的なことにかんしょうすべきではないよ。)

「横槍を入れる」を使いこなそう

この記事では「横槍を入れる」の意味や使い方について見てきました。「横槍を入れる」は主に「戦国の世に両軍が戦っているときに別の一隊が側面から槍で攻撃すること」がもともとの意味でしたが、現在では「人が会話しているときなどに第三者が横から入ってきて口出ししたりさしでぐちしてくること」の意で使われています。

基本的に会話は、「あなた」と「わたし」だけで話していても楽しいわけですが、それを見ていた横からなにか言いたいという第三者の気持ちもわからないではありません。現代のようなストレス社会の中で生活していると文句を言いたいときあるでしょうし、討論になってしまうこともありますよね。何よりも、しゃべりたい、自己表現したいという気持ちは誰にでもあるのだと思います。マリア・テレサは言っていますね。「平和の反対は戦争ではなく無関心である」と。横槍を入れて言いたいことを言えるのは、無関心よりもはるかに健全で平和な証拠かもしれませんね。

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【慣用句】「横槍を入れる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「横槍を入れる」について解説する。

端的に言えば横槍を入れるの意味は「戦国の世では両軍が戦う中、側面から別の一隊が攻めること。現在では横から出しゃばることを意味する言葉」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「横槍を入れる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「横槍を入れる」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「横槍を入れる」の意味や語源・使い方まとめ

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まずは、「横槍を入れる」の辞書の意味から見ていきましょう。

「横槍を入れる」の意味は?

「横槍を入れる」には、次のような意味があります。

1.両軍が入り乱れて戦っている時、別の一隊が側面から槍で突きかかる。横あいから別に攻めかかる。
2.人の談話、仕事などに横あいから、急に第三者が口出しをする。そばから非難めいた言い方をしたり、でしゃばった行ないをしたりする。さしでぐちをする。横矢を入れる。

出典 日本国語大辞典(精選版)「横槍を入れる」

「横槍を入れる」(よこやりをいれる)の槍「やり」とは、3メートル前後の長さの棒状のボディの穂先(ほさき)が刀になっている敵を突き刺す武具のことで、戦国時代を描いた映画やドラマでよく槍で両軍が戦うシーンは登場しますよね。実は槍には決められたサイズがあるわけではなく、時代や地域によって使われていた槍の長さはいろいろとあります。弓(ゆみ)が登場する以前の槍は長さが比較的短く、槍を投げることによって敵と戦った時代もありました。今でもオリンピック競技には「やり投げ」という種目がありますね。

戦闘の基本は、両軍が正面からぶつかり合うことですが、当然どの軍も側面から攻め込んだり、背後からはさみうちにすることを考えますし、また同時に側面や背後から攻め込まれないように布陣(ふじん)を組みます。辞書に説明されている通り、「横槍を入れる」は「両軍が戦闘中に別の一隊が側面から槍で突きかかる」ことを指していましたが、現在では、「当事者でない第三者が、文句を言って口出ししたり、妨害や邪魔をすること」の意味で「横槍を入れる」の慣用句は使われるようになりました。

天下統一に一番近かった戦国武将、織田信長(おだのぶなが)は、長い槍を兵士たちに持たせ、相手の騎馬軍団から容易に攻め込まれないような戦術を取ったとも言われていますし、一説には、織田軍が使用していた長槍は、竹のようにしなりやすい構造になっていて、刺すための道具としてではなく、槍を上から下に振り下ろして、敵を打ち叩く使い方をしていたという説もあります。歴史を振り返ってみると、槍隊の側面からの攻撃によって形成を逆転した戦いも多くあったと言われていますね。

「横槍を入れる」の語源は?

次に「横槍を入れる」の語源を確認しておきましょう。

いつごろから「横槍を入れる」という言葉ができたかを考えるうえで、いつ頃日本において槍が普及したのかを知る必要があります。また「側面からの攻撃の有効性」については、槍が登場する前から人々はよく知っていたことでしょう。

さて、改めて「槍の普及時期」についてですが、日本では縄文の時代においての主力の武器は「弓」だったと考えられています。弥生時代から古墳時代にかけて、中国から伝来した鉾(ほこ)という両刃の剣の登場により、柄の長い刀が普及していきました。この鉾が後の槍や薙刀(なぎなた)のモデルとなり、槍が主力の武器になったのは鎌倉時代の中期だったと言われています。相手を突き刺すことを目的にした槍は弓や刀剣を扱うのに比べて、「訓練や知識がなくても使い方が簡単な武器」のため、普及していったのでしょう。

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