開拓農民の息子からアメリカ大統領に
リンカーンの両親はは開拓民として広大な土地を取得することに成功。地元の名士として信頼を獲得していきます。しかしリンカーンが生まれた頃には、土地の権利証が偽物だったことが発覚。一気に生活は困窮しました。
そのようなときリンカーンはケンタッキー州の農園のなかにある丸太小屋のなかで生まれたと言われています。真意は定かではありませんが、貧しい状況から努力と勤勉により大統領となった彼のアメリカン・ドリームの逸話のひとつとして長らく語り継がれてきました。
努力と勤勉を体現したリンカーン大統領
リンカーンの一家は厳格な道徳規範を持っていました。そのため、飲酒やダンスは風紀を乱すもの、奴隷制度についても反対する立場。しかし、貧しく不安定な生活を脱出することはできず、リンカーンはより良い生活を求めて自立の道を選びます。
リンカーンは船に乗って荷物を運搬する、住み込みの仕事をするなど、地道に働きながら読書に励むことに。地に足のついた生活を望んだリンカーンは、郵便局長や郡の測量技師としての経験を積み、基礎教育をほとんど受けていないものの、勉学に励んで弁護士として働くまでになりました。
アメリカ文学に登場する「アメリカン・ドリーム」
アメリカン・ドリームは実在する人物だけではなく小説のなかでも表現されてきました。純粋な立身出世の物語であったり、アメリカン・ドリームの先にある儚さを表現したりと、その意味づけはさまざまでした。
ホレイショ・アルジャーの『ぼろ着のディック』
アメリカ文学の古典的な立身出世の物語の代表格であるのが19世紀末に流行したホレイショ・アルジャーの『ぼろ着のディック』。ホームレスの靴磨き出会ったディックが、貧しくとも正直に生きることで信頼を獲得。安定した収入を得て自立した生活を獲得するまでの話です。
ホレイショ・アルジャーは『ぼろ着のディック』を通じて、誠実さと勤勉さを忘れずに生きていれば必ず誰かが評価してくれることを伝えました。ディックの物語は、都市部に貧困層が集まり経済格差が浮かび上がってきたアメリカの夢物語として広く受け入れられます。
F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』
F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』は、アメリカン・ドリームを手にした男の輝かしい姿と、その先にある儚さを描いた小説。アメリカの異常なまでの好景気とそれに翻弄される人々の姿も描き出されました。この小説は1920年代のアメリカでベストセラーとなります。
フィッツジェラルド自身も華やかな社交界のなかできらびやかな生活を享受。だからこそ、膨大な富、贅沢な食事、巨大な宮殿を手に入れても、本当に欲しいものは手に入らないことを、富豪の青年の死を通じて言い表したのです。
\次のページで「「アメリカン・ドリーム」に対する反動もあらわれる」を解説!/