この記事では「抜け目がない」について解説する。
端的に言えば抜け目がないの意味は「注意深く準備が整っていることやずるがしこいこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「抜け目がない」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ヤマトススム
10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。
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それでは早速「抜け目がない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「ぬけめがない」です。意味を確認したあとに、語源などの詳しい情報までチェックしていきますよ。
「抜け目がない」には、次のような意味があります。まずは、国語辞典から正確な意味合いを確認してから、詳しいニュアンスまで見ていきましょう。
1.注意深く、やることに抜けたところがない。また、自分の利益になりそうだと見れば、その機会を逃さない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「抜け目がない」
意味合いは大きく二つあります。一つは、細かく正確に現状を認識していることから、万が一の場合のための物的または精神的な準備ができているということです。そこから、最悪の場合を想定したり、将来起こることを予測できているといったニュアンスにつながっています。
もう一つは、自分の利益になりそうなことに関して、よく気が配られていて利益を確実に得るための準備ができているということです。造反したり容赦ない行動をするというほど悪い意味ではありませんが、人に先んじて自分が有利になるよう立ち回るなど、ずるがしこいニュアンスがあります。
次に「抜け目がない」の語源を確認しておきましょう。
「抜け目がない」は、「目」を接頭語ととらえて「抜けているところがない」と意味することからきています。
「目」は一般的な名詞の意味だけでなく、「接尾語」としても使える表現です。そのうち、ここでは動詞の連用形について「その状態である、その状態にあるところ」という意味を表す用法があてはまりますよ。例えば、「落ち目」なら「落ち加減な状態」、「結び目」なら「結んでいるところ」という意味です。
「抜け目がない」の「抜け」も動詞の連用形なので、同様に「抜けているところがない」いう意味を表します。
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「抜け目がない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.彼女はリーダーとして、トラブルの原因とならないように、常に抜け目なく書類の文章をチェックしている。
2.情報産業においては、マネをしやすい上に抜け目がない者が多いので本当にスキを見せられない。
例文1.では、見落としや準備不足がないという意味で使われており、リーダーがトラブルに発展しないよう細かく書類をチェックしていることが書かれています。
例文の2.のほうは、ずるがしこいという意味合いになっており、どこの業界でもそうかも知れませんが、アイデアやしくみをマネされないように十分すぎるほどの警戒が必要であるということが書かれた文です。
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それでは、「抜け目がない」の類義語について、説明していきます。大きく二つの意味があるので、それぞれの類義語となる慣用句について見ていきましょう。
「抜け目がない」の類義語には、「細心の注意を払う(さいしんのちゅういをはらう)」があります。意味は、見逃すことがないよう細かいところまで念入りに調べたりすることです。「心」には「気をつけること」という意味もあるので、「細心」で細かいところまで気を配ることという意味合いになります。
「抜け目がない」とは近い意味ですが、「抜け目がない」は人の性質を表すことができるのに対し、「細心の注意を払う」のほうは人の性質ではなく行為や様子を表すという部分では違いがありますよ。
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もう一つの類義語には、「臆面がない(おくめんがない)」があります。遠慮したようすもなくずうずうしいという意味です。「臆」は気おくれすること、「面」は顔や顔つきのことから、「臆面」気おくれした顔やようすのことを表します。
「抜け目がない」は自分の利益になるものを見逃さないということから、人目よりも自分の利益を優先するところは遠慮がないことにつながり、「臆面がない」と近い意味合いとなりますよ。
次に、「抜け目がない」の対義語についての説明です。こちらでも、二つの意味があることにあわせて、二種類の対義語について見ていきましょう。
「抜け目がない」の対義語には、「行き当たりばったり(いきあたりばったり)」があります。意味は、一貫した予定や計画なしに、その場しのぎの行動をとることです。「行き当たる」は行動していたり場面が進行している中で何かに出くわしたということ、「ばったり」は思いがけなく出会ったりすることを表しています。
予定や計画、調査、想定などが不足しているために「ばったり」出くわすことになってしまうということです。悪気はなくとも「行き当たりばったり」では、実際のところなかなかいい結果には結びつきません。物ごとの前後のことを考えて、上手く準備をすすめたいですね。
もう一つの対義語には、「迂闊(うかつ)」があります。うっかりしていて心が行き届いていないことという意味です。「迂」は曲がりくねっていたり遠回りであること、「闊」は広いという意味の他にうといやまわり遠いということ、「迂闊」で物ごとの事情に疎いという意味になっています。
「迂闊」は主にうっかりしていたことによって何らかの悪影響があったときに使われる表現であるため、マイナスのイメージを含む表現です。
「抜け目がない」の英訳には、「alert」があります。形容詞として人の性質を表し、意味は「油断のない、注意を払っている、警戒して、機敏な、てきぱきして」などです。名詞や動詞として使うときは、警告や警戒など注意喚起の意味合いになります。
その他、「shrewd」はややずる賢い意味合いを含む単語です。職業や商売に関連する表現をする場合は、「shrewd」のほうがよく使われます。
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今回の記事では「抜け目がない」の意味・使い方・類語などを説明しました。
「抜け目がない」の基本の意味は大きく二つあり、注意深く準備ができていること、自分の利益のための機会の見逃さないことです。いずれも、先を予想したり人に先んじての言動を表しています。ただし、場合によっては、マイナスイメージを持つケースがあるので要注意です。